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静寂の雨

作者: スフィンクスさん

「雨、降ってきたね」

鳴海はそっとそばで囁く。

ぼくは寒くて震えている。

春になったばかりなのに、季節を先取りしすぎて薄着をしすぎてしまった。

「大丈夫?」

鳴海はそっと上着を羽織ってくれた。


僕らはいま、バス停の小屋の中にいる。

バスを待っているというわけではない。

雨が降ってきたから雨宿りをしているだけだった。

静かな雨音が響く。

バス停の小屋には木々が覆いかぶさっているので、薄暗い。

光がさしてこない分、余計にひんやりとしていた。

それがかえって心地よく感じた。


「帰れないね」

「うん」

二人はじっとしている。口数も少ない。

話す話題も思い浮かばないが、それよりもこの心地よい静寂を崩したくなかったという気持ちがお互いあったのだろう。

道路沿いだというのに、滅多に車の通りもない。

静かだ。


静けさの中に沈んでいく。

二人は深層で溶け合っていく。

そんな感じ。


視界は白くぼんやりと霞んでいく。

おぼろげで、はっきりとしない。

このまま眠り込んでいきそうだ。


二度と目覚めなくていい。

ただこの風景のなかで、眠らせてほしい。



そんな気持ちになった、雨の日の午後。

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