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第5話 決起、魔将軍

「メリーナ、魔王様の容態は如何だ?」


 現在、魔王城では召集を掛けられた魔将軍達が続々と登城していた。そんな中にあって第一将軍である赤神鬼オーガ・ウルトラがピンクのドレスを着た女性に優しく尋ねた。


 声を掛けられた彼女の肌はピンク色であり身に着ける物全てにピンク色である。彼女は極端にピンクを好んだ。


 メリーナ・マリーナは第六将軍にして魔王の恋人でもあった。その魔王はというと勇者との戦いで封印の魔法を食らったっきり未だ目を覚まさない。

 

 それ以来、戦闘ではオーガ・ウルトラが、戦略では第三将軍であるピクタスが、そして調整に於いてメリーナが中心となって勢力拡大を支えて続けて来た。


 そんなメリーナが必死に調べて掴んだ情報によると若い聖使徒を生贄にする事で魔王復活の儀式が可能だという。


 聖使徒と言うのは聖女が指名する者で言わば聖女候補であると考えて貰って差し支え無い。


 そして聖使徒には既に何年も前から白羽の矢が立っている事が周知の事実であった。つまりそれは王女エフの事であった。賢者である国王と共に異次元に飛ばされ行方不明になっていた王女であったが、最近新しい賢者を携え帰還したのは戦った彼らが一番良く知っていた。


 「魔王様は未だ意識が戻らない。このまま眠りが長くなるとお体に良くない。早く儀式を行わなければ...。」


 メリーナの言葉はまるで自分に言い聞かせる様でもあった。


 「では今回の召集は王女襲撃の相談という訳だな?あの厄介な新賢者は俺に任せろ。」


 そういってオーガ・ウルトラは自信の胸板をドンと力強く叩くとメリーナを励ました。


◇ ◇ ◇


 「皆さん、よく集まってくれました。病床の魔王に代わって礼を言います。」


 メリーナの挨拶で会議が始まる。陣容は以下の如くである。


 職位    種族      名前        得意技

 第一将軍  赤神鬼     オーガ・ウルトラ  ウルトラパワー

 第二将軍  水龍族     ディープ・ブルー  懸濁拳骨{メガ・ウオーターキャノン}

 第三将軍  魔道天爬    ピクタス・グレイ  黒沼{ブラックインフェル}

              {茶ローブがトレードマーク}

 第四将軍  欠員      -

 第五将軍  欠員      -

 第六将軍  サキュバス   メリーナ・マリーナ 転送・魅惑

              {ピンク色がトレードマーク}  

 第七将軍  極魔人     グラン・グランデ  狂気{バーサーク}

 第八将軍 カメレオンキング アエレ・グロース  乱鱗{ミル・スライス}


 魔王軍は様々な種族から成り立って居た。


 「本日の議題は一つに将軍職の欠員補充と序列変更。二つ目にエフ王女捕獲作戦。三つ目はグラン将軍から領地を荒らす勢力の討伐報告です。

 では一つ目ですが第七将軍のグラン将軍が敵対勢力壊滅の功績により第四将軍に昇格。第八将軍のアエレ将軍が第七将軍に、新しく第五将軍には夢魔族のチャンスー・リリを任命しようと思います。第八将軍は欠員のままとする予定です。」


 メリーナの言葉にアエレが意義を唱える。


 「リリは睡眠攻撃や催眠攻撃を得意にしてたギャ。いざ戦いになったら直ぐに殺られてしまうギャ?」


 「アエレ将軍のおっしゃる通りです。ですが領土が増え内政的要素も考えると総合的に良いかと考えました。なので前線は引き続きアエレ将軍にお願いする積りです。」

 

 メリーナの回答にアエレは出っ張った両眼を器用に別々に動かしながら周りの反応を伺っていたが、他に反対する者が居なかったので大人しく引き下がった。


「では次にエフ王女捕獲作戦ですが第一将軍の作戦を伺います。」


「おうっ!まず俺とブルーの軍で王都を囲む。そこにこの間の新賢者が出てきたらブルーのウオーターキャノンで奴の周囲をびしょ濡れにしてメガ・サンダーを封る。俺とブルーがスイッチして俺が近距離で仕留めるという段取りだ。相手の魔法がサンダー系で無ければ大概躱せる自信はある。そして往々にして魔法使い共は懐に入ってしまえば防御は脆く容易い物だ。」


 それを聞いたメリッサは大きくため息をついた。


「それで万が一貴方達が返り討ちに会ったら此方はトップ2の将軍を失う結果になります。もう少しリスクを減らした提言をお願いします。」


「新賢者はHPが低い。毒か遠距離からの弓などで攻撃するのは如何でしょうか?」ピクタス将軍が言った。


「誰か、毒の使い手は?」


「夢魔のチャンスー・リリの配下にポイズンパンサーが居ましたよね?アレを集めて投入しましょう。」


グレイの提案に末席に控えていたリリも頷く。


「毒矢は?」


「私の配下のケンタウルス達に射させましょう。」


とグランが言うと、メリーナがテキパキと纏め上げて行く。


「では、今度の作戦は第一・二・四・五軍共同で行うという事で、各軍の出軍比率は3・3・2・2とします。」


「最後に、最近森の中に築城を確認した竜族の討伐に関してグラン将軍より簡単に報告して貰います」


「あー昨日、我が領土に築城を進めていた礼儀知らずの竜族を打ち滅ぼした。城を落とした時に竜族の王は既に逃亡した後だったが、3,000近い敵兵達をほぼ壊滅させる事ができた。こちらの損害は一般兵が約500人に加え王の部屋に突入した精鋭部隊が全滅。この事から逃げた王は可成りの力を持っていると思われ現在城の北側から捜索中であり…」


◇ ◇ ◇


「ぜったい、狙ってやってるだろ?」


 分かっていて無視し続けて居たのだが、誰かが踏んだ小枝が折れる音が響き渡り思わず愚痴が出てしまった。


「もうそろそろ目的の広場だから出てくれば?」


 俺は後を付けて来た3人の人物に振り向きざまに言った。


 彼らからすると何故見つかったのか不思議だろうがサラウンド・サーチの魔法で俺の脳内には背後を付けて来る黄色い点が3つはっきりと浮かび上がっている。


 白を切って返事もせずに尚も隠れている奴らにいらっとしたので軽くファイヤーボールを1発お見舞いしてやった。


「あちちっ」


 慌てて出てきた3人の男達は軽装で武器も短剣くらいしか身に帯びていないが立ち振る舞いから剣士または騎士系と思われた。おっ奴ら怒ったのかな?色がオレンジに変わったぞ。


「それで?こんな所まで付けて来て何の用?」


 俺はわざとつっけんどんな聞き方をした。


 すると、真ん中の男が文句を言って来た。


「あちちちち、人が居るのに火を放つとは危ないでは無いか!」


「返事をしない方が悪い。放水ウオーターフォール


 天から水が湧き先ほど放った炎を消火した。ついでに男達も水浸しにしてやった。



「おっ俺たちに手を出したら、王女様にお前は危険人物だと報告するぞ!」


 右側の少しずんぐりした男が甲高い声で叫んだ。


「王女?エフじゃないな?ジェイか?」


 そう言えば午後から城に呼び出されているのだった。


「おっ王女様を呼び捨てとは!許さん、お前は死刑だ!」

 

「そのくらいで人を死刑にする国なら滅びてしまえ」


 イラっとしたのでメガサンダーの百万分の一の威力しかないエレキトリック・イールでしびれさせてやった。


 「ぎぎぎっ」「ぐぐぐっ」「いいいっ」


 三人はスタコラ逃げて行ったので見送ると、レーダー上で彼らは何時しか白色に代わっていた。

 しかし威を借るキツネは見ていてイラっとする。本当に何がしたかったのやら。


 さて、わざわざこんな遠くの森の中にある広場まで来たのは目立たずにハイゲートの練習をする為である。いつも何かとんでもない物が出て来て大きめのキャンプファイヤーをする羽目に陥るので人気の無い所まで態々足を運んだら先ほどの顛末であった。


 気を取り直して行こう。


 前回までの反省を元に一つ魔法を付け加えた。


半魂写鏡マジック・ミラー


 このマッジクミラーを通して実体化前の魂を見る。するとおっさんか他人か見分けれてしまうから出てくる前に対応してしまおうと言う素晴らしいアイデアだ。もしも通様そうな奴だった時は強制的にゲートを閉じてしまえばいいという考えである。


「よおーし、強い奴‥強い奴、どんとこいやあー!ハイ・ゲート!」


 さてマジックミラーに移っている人物はと…


緊急閉止エマージェンジー・クローズ!」


「ぐおおおーー、この...m‥王…§ΓΦ」


 まずい事にヌリュッとゲートから飛び出していた頭部?若しくは前頭部がゲートに挟まれ大変な事になっている。


’きゅゥ。。びゅしゅっっ’


 千切れた前頭部が俺の目の前でノタウチ回っていた。今頃異空間内ではやつの体液がぶちまけられている事かと思うとぞっとした。気持ちが悪いので想像したく無かった。


易魔測定マジカル・イージーパワー


 動きを止めないどころが徐々に細長く伸びて行く元前頭部。


 こんな物にさわりたくは無かった。


 魔法で焼き切る事にするが、その前に少しだけその物体の魔力度を簡易測定してみる事にした。


「判定結果=ランクSS:魔神クラス」


「うわあ~これ放っておいたらここから体が湧いてくるレベルだわ。はあぁ、至天炎塔ギガ・ファイヤストーム

 

 とほほ、キャンプファイヤーでミミズを焼く羽目になるとは…」


 巨大な火柱に焼かれている巨大ミミズの前頭部に手を合わせていると背後から騎馬の群れがやってきて、それは俺を取り囲んだのだった。


「また会ったな新賢者殿。私は北方騎士団長マルクス、ジェイ王女を侮辱した罪で牢に入って貰う!」


 まあ接近には気が付いていたが面と向かって啖呵を切られると正直いらっとした。


「だーかーらー!お前ら暇人かっ! 絶岸彼岸ビック・キャニオン!」


 怪我をさせると面倒なので地面を30m程競り上げて孤立させてやる。すると空高く舞い上がった大地の先端でマルクス達の叫び声が聞こえた。


「きっ貴様!降ろせ!」


’ヒュン・ヒュンッ ’


 背後から弓矢だっ!


「こんどは何だ!?」


 なぜ接近に気が付かなかったのかは明白であった。マルクス達に囲まれてアラームがピーピー煩かったので途中からオフにしてしまったのが悪かった。振り向くと100m程の距離に別の騎馬隊が居て弓矢を撃っていた。騎馬隊の数20、40、ん?サーチで見る赤い点が次々に増えていく。この数はっ?


守護光鎧ハイ・マーシア


 重装備では無いが体を守ってくれる魔法の鎧を纏う。体全体が光を放ちだし軽い攻撃を防ぐ魔法の鎧に守られた。


「いたた..」


 しかし如何やら光鎧の召喚が遅かったようで矢が1本掠ってしまっていた様だ。


「ライフサーチ!」



「種族:人間

 名前:マコト

 HP:81/99 【毒】

 MP:9198/9999

 ・・・


 なんてこった、毒だ!




 それを見ている間にHPが1下がって80に落ちた。


守護光盾ハイ・イージス落天武威メテオ・インバー轟海津波ウオーター・ハザート!」


 焦った俺は固定盾を張ると周囲一面に範囲攻撃を撃ちまくった。森に隕石が降り注ぎ木は弾け濁流に押し流され原野が現れる。


 その間も必死に解毒の魔法を探すが、


「ちくしょー!何で大賢者が解毒魔法如きを持っていないんだ!」


 オーナ君に聞いても、解毒はおろかHP回復も無かった。


 盲点だった...。賢者って何でも知ってると思うじゃ無いですか。


現次元扉リアルワールド・ゲート!」


 突如転移魔法で城の中庭に出ると驚いたジェイが後ろ向きに椅子から転げ落ちた。パンツは見えなかったがざまあみろである。少し早いが登城してやったんだ、有難く思いやがれ。


 そして隣で驚いているエフを見つけるとすぐさま懇願した。


「エフ、解毒してくれっ…死に…そう…だ…」


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