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第24話 最終話

 「ご主人様、紅茶でございます。」

 あれから1年。俺は小さいながらも家を借りて暮らしている。


 傍には相変わらずデミが居て、夜になるとプリーチャーも訪ねて来る。勿論トウも一緒に暮らしている。と言うか街に戻って直ぐに教会で式を挙げた。クリストファーとリチャード、デミにプリーチャーと参列者は少なかったが俺に取っては忘れらない式になった。式後クリストファー達とは別れたが二人で布教の旅に出ると言っていた。二人共元気で合って欲しいと願う。


 後日神殿を訪ねて聖女になったエフに結婚の報告をしたら式に呼んで欲しかったと随分ご機嫌斜めになられて困った。


 其のころ王国は勇者ルーガスと元聖女エルの婚姻の報とリチャード王が魔王と締結した休戦協定の話題で持ちきりだった。門を出た時に俺が禁呪を打てば城毎大打撃を与えれる今正面切って戦争には成らないと思う、と王様に言ったらその通りになった。その代わり王様からは暗殺にだけはくれぐれも気を付ける様に言われた。何せ敵の赤鬼将軍も健在だ、彼は直ぐに回復して調印式に顔を出していた。

 

 今俺は膨大で強大な魔力を行かして普段は街の治療師をしながら時々は国の要請で災害時に山崩れを吹き飛ばしたりハリケーンを吹き飛ばしたりしている。付いたあだ名が”吹き飛ばし屋”だ。うちの治療院は解毒しか出来ないが格安なのとどれだけ患者が押し寄せても決して休院しない事でそこそこ人気がある。人気があると言ってもまだ贅沢は出来ないので紅茶のランクは最低より一つ上に抑えている。


 トウがまだ首の座らない息子を抱いて傍に来た。危ないから紅茶は平らげてしまおう。息子は何故かデビの蛸の部分が大好きで見るとケラケラと良く笑う。


 「シン坊ちゃま、今乳母さんを呼んで来ますからね。」


 乳の出が悪いトウに代わって近所の乳母さんに日に1回来て貰っている。気の良いおばさんでデビが異形の魔族である事を知ってからも嫌がらず来てくれる。有難いものだ。


 先日エフから手紙を貰った。


 いよいよジェイが女王として即位する事が決まったらしい。


 あんなので大丈夫か?と思ったが、王も心配だったらしくこれを機会に国政を貴族の合議制に変えるらしい。マルクス君はというと国王の命で極寒の地に赴任を命じられたらしいがどうやら修行目的らしい。少しは成長して戻って来て欲しい物だ。


 思い起こせば全てはゲート魔法から始まった激動の日々だった。そう言えば最近ゲートを開けていない。途轍もなく危ない奴らが存在する空間だが基本的に善良な者を願えば外れが無いという事に今更ながら気が付いた。

 ならば空間に残された善良なる人達を助けるのも自分の使命では無いかと思い月明かりの夜更けに庭に出た。


 「善良な者をここへ!ハイゲート‼」


 気配を察したデビが家から出て来た。


 闇の中からプリーチャーの姿が浮かび上がる。


 虹色の空間から黒い靄が滲みだしポトリと此方側で実体化する。美しい青髪の…


 「マコトさん!神界が大変なんです‼イシス様が北の果てに門を出現させました、一緒に来て下さい!」


 「ハンテ様!何で?もう二度と異空間には戻りたく無いって言っていたのに?!」


 「事情は後でゆっくり説明します。とにかく急いで...」


 俺はデビとプリーチャーの顔を代わる代わる見た。そして彼らの視線が俺では無く後ろの人物に注がれている事に気が付いて振り向く。


 「神界の大事って言うなれば放っておけば何れ地上も危ないって事よね?じゃあ子供の為にも行って頑張って来て。」


 母親になったトウは逞しく、本音では反対している癖に気おくれした俺の背中を優しく後押ししてくれた。


 「じゃあ、行って来る。」


 手を差し伸べたトウの手を握ると反対の手でぺチンと叩かれた。


 「違うわよ、帰って来るまでの生活費を頂戴!」


 「いや、お前今までも散々そうやって溜め込んでいるだろう?治療院を休みにする訳には行かないから明日の朝一番で王様に相談して誰か派遣して貰ってくれ。多分それくらいは快く引き受けて貰える筈だから。」


 そう言いながら俺は肌着に縫い付けた緊急用の小金貨を1枚引き剥がすとトウの小さな手に置いた。


 「早く帰って来てねマコト。デビさん、プリーチャーさん、マコトの事をお願い。」


 プリーチャーが何処からか借りて来た馬車に良くこんな夜更けに貸してくれた物だと感心しながら4人で乗り込んだ。


 冒険が又始まる。

 

(end)

お目通し頂きどうも有難うございました。

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