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第11話 水着の村

 「えーっと、やっぱりパス出来ないんですよね?」


いいぞ、サク。もっと言ってやれ。


 といってもお話しの相手は紛争地帯入口の村にある小さな協会。そこの神父さんである。


 「いやあ、王女様ご一行にこんな事を申し上げるのは恐縮ですが、基本的に彼女らは女性には何もしないので。それを理由に巡礼をパスできるのは男性のみとなっていまして」


 彼女ら?


 サクやジュゴスは何か知って居る様で敢えて疑問を口にしようとしない。


 そっとサクに近づいて聞きたいがジュゴスが邪魔。うーむ。


 『プリーチャー、俺の振りをしてこっそりサクに事情を聞いて見てくれないか?』


 『承知です。』


 帽子を深々被ったサクの口元が驚いたのが分かった。すこし上目加減に俺の方を見ている。そして...なんだか涙目?

 えっ?ちょっと


 『おいー!プリチャーーー!』


 『はい、主殿。情報は頂けましたぞ?』


 『何でサクが涙目なのかと...』


 『それは我が偉大なる主殿と秘話が出来ると分かり感激至極のあまりポロっと?』


 んな訳ないだろー!


 サクはそっぽを向いている。背筋がやや寒くなってきた。


 しかし今この場で如何のこうの言っても仕方あるまい。


 『その件はまた後で。所で事情は?』


 『もともとその地にはアマゾネスという女部族が納めていまして、聖人が訪れた頃は王国の支配下だったのですが最近勢力を盛り返されたそうで。』


 まあ、魔族にも押されているしな。そんな事もあらん。


 ◇


「男性の方はこっちでお札を発行ですー。女性の方は向こうで入山の申請を~」


 アマゾネス側の検問で男が混じっていないかチェックされると言うのでデビは同行できなかった。

 男では無いが下半身が蛇で先っぽが蛸では大騒ぎになる事必死だから。


 聖騎士のジュゴスも勿論待機。体力の無い女神組もステイである。


「トウ、お前だけが頼りだ。無事帰って来てくれよな?」


「任せなさい!」


 差し出された小さな手に普段より多めに銀貨2枚を握らせるとトウは小踊りしながら去って行った。


 『プリーチャー、二人を頼むぞ。でももし何か有ったら俺を侵入させろ、いいな!』


 『はははは、我が主よお任せあれ。サク殿の風呂場にネズミが現れた時にお呼びすれば良いのであるな。はははは。』


 …いや、お前は優秀で気を利かせてくれたのは分かるがそれだけは止めてくれ...。


 「それでは、行って参ります。」


 帽子を深々と被るとエフそっくりだ。なんて事を思いながらサクを見送った。


 ◇


 「トウさんってマコト様と仲が良いんですね?」


 「んっ?なあに?マコトは私の...えっとごにょごにょ(金づる)だよ。」


 「私の?!」


(私の何かしら?若しかして私の物っていう意味?!)


 帽子の下に隠れて見えないがサクの表情が強張った。


 「あの、私はマコト様の事を良く知らないんですが...あの人って色んな女の人に声を掛ける様なタイプなのでしょうか?」


 問われたトウは少し上を向いた。そして考えた結果、宿に来て直ぐデビを連れ込んで居た事を思い出すとこう言った。


 「声かけるどころか直ぐにベッドに連れ込んじゃう感じかな?」


 それを聞いたサクの顔は帽子の下で真っ赤に変化する。純真な彼女には刺激が強すぎたのだ。


 「そっそれでは、トウさんも..?」


 「んー、私は裸を見られたくらいかなあ~、あっバスタオルしてけど。」


 「…!」


 サクの中で晩夏の入道雲が如くマコトに対する怒りが沸き起こって来た。先ほどはあれ程素敵な麗句で心地よく口説き褒めたたえた癖に誰彼構わず手を出す人だったなんて!


 「私!マコトさんみたいな人とだけはお付き合いしたくありません!」


 怒ったサクはプリプリしながら行列の先へと行ってしまった。


 

 ◇


 アマゾネスの山に入って行ったトウとサク達を待って居る間、俺はハッキリって暇だった。


 ジュゴスは外で剣を振っている。彼は何時も鍛錬に余念がない。弱っちいがその姿勢は尊敬に値した。


 ふと脇を見ると女神ハンテが小さな巾着を抱えて幸せそうに寝ていた。顔色も随分良さ気に感じたので声を掛けて見た。


 「ハンテ様、具合は良いのか?」


 すると普段口を利かないぺロスが答えた。


 「聖石の欠片。トウが拾い集めた。」


 ぬぬっ。その所為で俺が随分怒られた石の欠片をこっそりくすねるとは..しかしハンテ様の幸せそうな寝顔を見ているとそんな怒りも何処かに吹き飛んでしまった。


 「まあそれでハンテ様が少しでも元気為るのならいっか。」


 悪い女神であるぺロスもコクコクと頷いている。こうして見ていると全然悪そうに見えないんだけどなあ。でも首の封印が無ければ大暴れするし此奴だけはマジ手におえない。


 小さくため息をつくと俺は宿屋の玄関を通り外にでる。


 この宿は小さいが切り盛りしている若い夫婦は中々良くできて親切であった。今も出かける時に若女将に声を掛けられた。何でも山には近づかない様という事だった。

 モンスターが出そうな人気の無い所ってありますか?と聞くと不思議そうな顔をしながら北の草原を教えてくれた。何でもラニコビットという一角の兎型魔物が生息するらしい。


 「もし捕って来てくれたら料理に出しますよ。」


 そういって見送って貰った手前少なくとも2-3匹は捕って来なくては示しがつかないかもしれない。


 俺は一人で歩いて行く。デビには女神達を見て於く様に言ってある。


 村を出て1時間もあるくとそこは草原の真っただ中で膝丈の緑が風に波立つ平和な世界だった。


 まずレーダーで敵意を確認する。


 そこかしこに小さな赤い点があるのは穴に隠れる兎であろう。


 「炎天怒武ファイヤーバズーカ


 辺り一面が沸き上がる炎に包まれる。


 「静ゝ水柱ウオーターイクスティング


 直ぐに水で消火。


 巣穴の出口で痙攣する兎共に腰のナイフで止めをさすと血抜きをする。


 5匹仕留めた。さてこれで今回の目的の半分は達成である。


 もちろん兎だけが目的でこんな所までは来ない。


 実は俺は気が付いたのだ。

 今まで物凄い勘違いをしていた事に。


 そしてそれを確かめるためにここに来た。


 『オーナ君。ハイゲートを召喚するぞ。』


 『またですか?』


 自動知識の癖に何かと主人に反抗するオーナ君の非難をするりと無視して俺は高らかに宣言する。


 「オーナ君。俺は今までずうっと勘違いをしていた。何をかというと王様の事をだ。俺にこんなすごい力をくれた王様は凄く強い!そう思ってハイゲートで呼びかけて来たのだが、その結果出て来たのは魔王や魔神や堕落した女神、もちろんデビやプリーチャーの様なのも居たがとにかく俺は気づいた。」


 オーナ君は無言で有る。


 つまり傍目から見ると俺は草原のど真ん中で派手な焚火を起し消火をした後盛大に独り言を叫んでいた。


 「王様は俺に力を与えたから弱っているに違いない!だから強いオッサンを呼んでも出てこないんだ!」


 『じゃあ如何するんです?』


 「弱いオッサンを呼びだす!」


 ◇


 

 「弱ったオッサン、弱ったオッサン、おおおーハイゲートオオ!」


 弱いんだからミサイルもハンマーも必要なし。


 目の前に開いたサッカーボールくらいのゲートから黒い靄が染み出すが、なかなか何時もの様におおきく成らない。


 仕方が無いのでゲートに手足を掛けて引っ張ってやる。


 ズルズルズル


 そんな音がしそうな程ユックリと影がゲートから滑り落ち此方の世界で実体化した。


 「ちっ!」


 俺は目の前で横たわる見知らぬオッサンに思わず舌打ちをしてしまった。


 ライフサーチにHP1/171と表示される衰弱したオッサンは弱々しく口を開いた。


 「お前が助けてくれたのか?」


 「恩人をお前呼ばわりするならもう一回放り込んでもいいんだぞ?」


 そいつはブルっと体を震わすと俺の前にひれ伏す。


 「すまん。助けてくれた事を感謝する。ここはアガス帝国であろうか?」


 俺は目の前のオッサンを観察する。肩まで伸びたウエーブのある金髪は白髪交じりでごわごわしていた。

 日焼けした肌から部屋に閉じこもっている職業で無い事は明らか。

 がっしりした骨格であるが痩せ衰えあばらが浮き出た脇腹は可哀そうに腹が減っているに違いない。二重の目や高い鼻腔の顔はハンサムと言ってもお世辞にならない程度ではある。服装はサンダルに白い腰巻、其れだけである。


 可成り昔の人物だろうか?


 「アガス帝国?知らないなあ。ここはオルセス王国の山間にあるアマゾネスとの国境と言えばいいんだろうか?」


 「アマゾネス?彼女らはアガス皇帝に攻め滅ばされたのでは?しかしオルセス王国とは初耳だ。」


 「あー、出て来た奴は大体昔のやつだからきっと時代が様変わりしているんだろうよ、俺はマコトだ。アンタは?」


 「おおー命の恩人に申し遅れた、私はクリストファーと申す。虹の谷に迷い込むまでは人々に広く私の考えを広める旅をしていた。得意な事は泉を掘る事だ。」


 そう言ってクリストファーは足元に落ちていた棒きれを拾うとキョロキョロと辺りを見回した後でブスリと地面に突き刺した。


 驚いた事にクリストファーが差した木の周りが黒く湿ってそこからチョロチョロと水が湧き出してきた。


 おおっこいつ奇跡とか起す系か?教えを広める者というと職種的にはプリーチャーみたいな者か。


 それにクリストファーって何処かで聞いた事がある名前。だが何処で聞いたかのか思い出せなかった。


 「おおっ便利だな、おっさん。腹減ってるんだろ?兎を持ってくれないか?宿に戻ったら御馳走するから。」

 

 こうして弱ったオッサン、クリストファーが仲間に加わった。


 その頃アマゾネスの国境では。


 ◇


 聖地参列者の女性達は皆アマゾネス族のシャーマンによる面接を受けて居た。


 「良いか?我等アマゾネス族は大昔に聖者様よりこの泉を授けられ、その後一旦はアガス帝国に滅ばされた。しかし元々の所有者は我ら、故に我らはこの地を占拠したのじゃ。決して訳もなくこのような事をしておるのではない。」


 「それでは巡礼に関しては?」


 帽子を深々と被ったサクが尋ねると皺だらけのシャーマンはサクの白い肌と対照的に色とりどりにペイントした皺だらけの顔を愛想よく崩した。


 「我らは女しか居らん。男は成人したら別の部族に出す。故に女であれば巡礼に立ち寄っても構わん。」

 

 「どうやって見分けるているんです?その、男と女を...」


 おずおずとトウが訊いた。


 というのもトウたちの少し前に女装した男性がこの部屋から連行されるのを二人は目撃していたのである。


 「簡単な事じゃ。我等に伝わるこの岩鏡に触れてもらう。この鏡に触れるとその者の魂が映し出される。それを見て儂が判断するのじゃ。」


 「じゃあ、はい。」


 迷わずトウが石を磨いた様な鏡に手を置いた。石の板は垂直に立てられており、シャーマンはその反対側をジッと見つめると手をひらひらさせた。


 「まるで小リスかネズミの様な魂じゃが女で間違いない。行って良いぞ。」


 トテトテとトウは木組みの小屋を横断して村の中へ入っていった。


 次にサクも恐る恐る手を乗せた。


 「むっこれはっ!」


 何時まで経っても出てこないサクを待つトウであったが、サクと違う女性達が二人出て来た所でシャーマンの部屋へ踏み込んだ。


 「ちょっと、姫様を何処にやったの!?」


 途端にトウは警備の戦士達に取り押さえられる。皆女性だが筋骨隆々とした戦士である。


 「先ほどの方には暫く村に居て貰う様に神のお告げがあった。従者のお前も一緒に来い。」


 ◇


 「あら、マコトさん。本当にラニコビットを取ってきたんですね?それもこんなに沢山!さっそく料理させて頂きます。」


 「ええ、軽い物です。」


 「それで、そちらの方は?」


 「狩りをしている途中に行き倒れていたので助けて来ました。この人にも寝る場所と食事をお願いしたいのですが?もちろん料金は私が払いますので。」


 宿の女将はなんだか感動した様に神に祈ると俺に対する褒め言葉を口にしながら奥に引っ込んで行った。


 そして夕食は皆で食卓を囲んで食べる事となった。クリストファーは行儀よくしかし止まる事無く食事をした。


「という訳で、行き倒れていたのを放っておくことも出来ず仲間にする事になった。名前はクリストファーだ、皆仲良くして欲しい。」


 尚、皆食事に夢中で誰も聞いて居ない。


「しかしマコト殿。姫様の近くに何処の馬の骨とも分からぬ者を置く訳には...」


 おっと食事に夢中な様でジュゴスだけはちゃんと聞いていてくれた様だ。こいつ中々出来た人間だよな。


「クリストファー、こちらは聖騎士のジュゴスさんだ、お前も自己紹介しろ。」


「もぐもぐクリス、ごくり、トファーです。」


「…」


 マイペースな奴だ。


「おいクリストファー、お前水堀り以外に特技は?格闘技とかできないのか?」


「むしゃ、いえ、むしゃ、蛇も殺したことが在りません。」


 この瞬間に俺の中でクリストファーと名乗る新入りの立場が決定した。


 因みに我が軍団の序列は現在以下の様になる。


 君 主  俺(大賢者)

 左将軍  プリーチャー(闇将軍とも言う)

 常将軍  デビ(二つ名はタフな蛸)

 軍 曹  トウ(雑魚)

 新 兵  クリストファー(給水係)

 その他  食客 女神ハンテ,捕虜 女神ぺロス 

      同盟 ジュゴス、サク


「おい、クリストファー食ってばかりいないでキチンとしないと追い出すぞ?」


 軽く脅すとクリストファーは食事しながらこちらに向き直ると真っすぐな瞳で口を開いた。


「マコトさんとの出会いは神の思し召しと考えます。いたたた、マコトさん痛いではないか。」


 助けてくれてありがとうの一言から入れば大人しく聞いていてやったのだが何でも神の所為にするのが気に入らなかったので頭を締め付けてやった。


 俺のヘッドロックを食らったクリストファーが両手でパンパンとタップしながら叫び声を上げている。


「クリストファー殿、聖騎士として言わせて頂くと余り神の聖名を口に出す者では在りませんな。」


 そうら、常識人のジュゴスからもお小言を食らってやがる。


 ヘッドロックから解放されたクリストファーは尚もジュゴスからお小言を食らいながら休み事無く食事に手を伸ばしていた。お前は欠食児童か!?


「デビ、俺はそろそろいくぞ?ついて来い。女神様、お先に失礼します。」


 そう言ってデビを連れて部屋に戻るとプリーチャーを呼び出した。


 闇の中から人影がむくりと起き上がる。


「ご苦労、向こうは如何だ?」


「主殿、デビ殿もご機嫌麗しゅう。サク殿とトウ殿は無事巡礼地に入られました。」


「そうか、飯なんかどうしてるんだろう?ちょっと差し入れでもしてみるか?」


 俺がそう言うとプリーチャーは隈の酷い両眼をキョロキョロさせながら慌て出した。


「あっ主殿、村の中は何と言いますか女性達が小さな布切れ1枚で暮らして居ります故。お二人も今その様な状況でしてそこへ主殿をお連れするとなると後後..」


 ちっ、こいつ自分だけ良い物見やがって。


「ふんっトウの貧相な体など別に見たく無いしな。」


 サクちゃんが小さな布切れ1枚でポーズしている姿が脳内で膨らんで行く。


「しかし益々デビを行かせずに良かったという事だ、行かせていたら今頃大騒ぎだな。所で巡礼の証は手に入りそうなのか?」


「はい、通常は2~3日滞在して宿代や食事代として村に或る程度金を落としたら解放されるそうです。しかし今お二人は特別に泉の源泉に拘束されています。」


「おいおい、拘束だって?。それなら助けなきゃだろう。今すぐこの3人で助けに行くぞ。」


 鼻息荒くそう宣言する俺に対してプリーチャーは肩を窮屈そうに狭めてながら気おくれした様に発言した。


「責任は持てませぬぞ?」

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