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掌編小説集9 (401話~450話)

真夜中のプレゼント

作者: 蹴沢缶九郎

クリスマスイブの深夜、静まる寝室の物音に玲子はベッドから身を起こした。

明かりの消された暗い室内に誰かが立っている。何故か、真夜中の侵入者に不思議と恐怖を感じる事はなかった。


玲子は侵入者に尋ねた。


「あなたは誰?」


暗がりに見えるふくよかなシルエットは、安心感を与える優しい声で答えた。


「メリークリスマス。私はサンタクロースだよ。良い子の君にプレゼントを届けに来たんだ」


「そうだったの。物を盗んでいってしまう悪い人だったらどうしようかと思ったわ。でも、あなたからは優しい雰囲気が伝わってくるから、悪い人じゃないのはわかるわ」


玲子の言葉に、サンタクロースと名乗る人物は静かに微笑んだ。


「さあ、何か欲しいものを言ってごらん」


サンタクロースは玲子に聞くが、玲子は首を横に振り言った。


「せっかくだけど、何もいらないわ」


「遠慮する事はないんだよ。可愛いぬいぐるみでも、最新のゲーム機でも良いんだ」


サンタクロースは、玲子が自分に気を使っているのだと思ったが、しかし、それはどうやら違うようであった。


「ううん、本当に何もいらないの。優しいお父さんにお母さん、一緒に遊んでいて楽しいたくさんの友達。今が幸せで、それだけで満足だわ」


誰にも等しく存在する物欲だが、それ以上に、既に大切なものはあると言う。今時には珍しいとも言える玲子にサンタクロースは心から感動した。


「そういう事だったのか…。偉い!! 私は君のような子の為にプレゼントを配っているんだよ。今回は特別に…」


と、サンタクロースは白い布袋に手を入れると、中からクマのぬいぐるみ、魔女っ子プリティランラン変身セット、子供用スマートフォンを取り出し、その他にも、お父さんに高級ゴルフクラブセット、お母さんには高級ブランド品のバッグ、高額旅行券に最新家電の一式、果ては札束までを取り出した。


「私も長くサンタをやっているが、こんなに気分が良いのは初めてだ。本当にどうもありがとう。また、来年会おうね。メリークリスマス」


そう言うと、サンタクロースは窓辺に止めたソリに乗り、ソリを引くトナカイと共に冬の夜空に消えていった。


サンタの去った後、玲子は部屋に乱雑に置かれたプレゼントを避けながら本棚の前に移動すると、表紙に『月刊少女ルンルン12月号付録 特集!! 確実にサンタからプレゼントをゲットする方法!!』と書かれた一冊の冊子を手に取り、独り言を口にした。


「ええ、また来年も必ず会いましょうね、サンタさん。メリークリスマス」

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんとなくオチは想像できましたが、純真な少女のままでいると、メルヘンになりますねw [一言] メリークリスマス。セント・ニコラウス(サンタの原型)の祝福がありますように(^o^)
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