6 白木蓮
「ちょっと待て!」
色々と聞き捨てならない点がある。
「確かにうちの学校は大庭高校。その大庭をガーデンと訳すのは百歩譲って許容するとしても、その眼鏡集団ってのはなんなんだ。あまりにもダサすぎるだろう」
「真っ先にそこに突っ込むんだ……」
黒眼鏡がぼそりと呟く。
「ダサいから略すんじゃない。GgG。これなら誰もダサいなんて言わないわ。それどころか、恰好いいはず!」
ダサいっていう認識はあるんだな。
「じゃあ次。普通トリプルジーならGGGだろう。なんで真ん中だけ小文字なんだ」
「可愛いじゃないの。顔文字みたいで!」
やっぱり顔文字を意識してたのか。
だからカッコまで含めて表示するわけだな。
どうやらこの先輩は恰好いいものや可愛いものが好きらしい。
「次。オレに眼鏡は必要ない」
「視力は関係ありません。豪を見てごらんなさい。あいつの視力は2・0よ」
いや、いくらあいつを見ても、視力まではわからないと思う。
赤眼鏡のフルネームが田崎豪だってことは今わかったけど。
「なんだ、伊達か」
「いいや。伊達じゃねえよ」
「だって今……」
「視力がよくても見えないものを見るために必要なのよ。ちなみにわたしは視力が悪いからコンタクトを着用しています。あなたの視力は?」
コンタクトをして眼鏡をかけるって、どうなんだそれ。
もとから眼鏡を利用してるヤツはどうすればいいんだよ。
「0・6」
僅かな沈黙があった。
「微妙……」
呟く声は、黒眼鏡だ。
微妙とか言うな。0・6あれば免許だって裸眼で取得できるんだぞ。
「それだけ見えれば、まあ充分ね。よかったじゃないの」
「そういう問題じゃないだろ。それより危うく聞き流しそうになったけど、視力がよくても見えないものってなんのことだよ」
まさか幽霊とか亡霊とか言うんじゃないだろうな。
オカルトやホラーには興味はないぞ。
「花よ」
「へ?」
拍子抜けして、間の抜けた声を出してしまった。
「さっき、わたしたちのもってる花が見えない、ってあなた言ったでしょ。だから、これをプレゼントしてあげたわけよ。んー、まあいいわ。とりあえずかけてごらんなさい」
美少女が机から下りて、こちらに歩いてくる。
「いや、だからそれは……」
「いいから、いいから」
折りたたんであったつるを広げて、オレの顔に近づける。
急接近してくる美少女に戸惑っているうちに、黄色い眼鏡をかけられていた。
あっという間の出来事だった。
「ふふっ。もうこれで逃げられないわよ」
目の前で不敵に笑う美少女。
どういうこと――。
そう問おうとして、美少女の胸に目がとまった。
「え? ――花?」
さっきまで、確かにそこにはなにもなかった。
その豊満な胸に目を奪われたとき、しっかり見たから間違いない。
それなのに、今、オレにはそれが見えた。
美少女の胸のあたりに咲く、真っ白な花が。




