5 (GgG)?
室内を見渡して、ここにはオレを含め四人しかいないことを確認した。
そしてオレ以外の三人はかなり親しいようだ。つまりオレに用があるのはこの三人なんだろう。
……で?
団子の話を聞かせるためにオレを呼んだのか?
まあいい。用がないのなら失礼させてもらおう。
オレが一歩下がったその時、美少女の鋭い視線がこちらに向けられた。思わず背筋を伸ばす。
「よく来てくれたわね! わたしたちはあなたを歓迎するわ」
ふいに表情を緩ませて、美少女がオレに笑いかけた。
団子の件はともかく、この人やっぱり綺麗だな――なんて見惚れている場合じゃない。
「オレ、歓迎されるような覚えないけど?」
「クリサンセマム・ムルチコーレよ!」
「は?」
突然飛び出した意味不明の言葉に、オレは思わず訊き返した。
今、なんて言った?
栗さんがどうしたって?
この人、実はやっぱり外国の人なのか!?
「クリサンセマム・ムルチコーレ。そういう黄色い菊があるんだよ。僕なんかは普通に黄菊でいいと思うんだけど、咲さんはただ響きが恰好いいってだけで英名を愛しているんだ」
オレが困惑しているのに気付いたのか、黒眼鏡が説明を付け加える。
そうか、菊のことか。なるほどね。
……で?
「その菊が、オレとどう関係があるんだよ」
「あなたの花よ。クリサンセマム・ムルチコーレ」
「オレの花、って?」
「昨日咲いたのよ。クリサンセマム・ムルチコーレが」
「だから菊が咲いたのとオレとどういう関係が?」
「関係大有りよ。だからこうして歓迎してるんじゃないの」
「だからまずその関係とやらを説明してくれって」
この会話の噛みあわなさは一体なんなんだ。
なんだかどっと疲れが増す。
「仕方がないわね。わたしはリリー・マグノリア。そっちの赤いのがカメリア。黒いのがブラックサレナよ」
「……もしかして今のは全部花の名前なのか?」
リリーは百合だろう。いくら英語が苦手でも、そのくらいならわかる。
「その通りよ。わたしは白木蓮、赤いのが椿、黒いのが黒百合ね」
あれ?
百合はリリーじゃなくてサレナなのか?
……まあいいか。どうせ英語は苦手だよ。
ってかこのごつくてでかい赤眼鏡に椿の花って、似合わないな。
「それで? その花がどうしたって?」
「わたしたちみんな、その花をもっているのよ」
「……??? どこに?」
「ここに」
美少女がその豊満な胸に手を当てる。
おお、これはかなり――。
いやいやいや、今はそんなことに気を取られている場合じゃない。
「な、なにももってないじゃないか」
ちっちっちっ、と言いながら、美少女が人差し指を左右に動かす。
「そこでこれ。ジャジャーン」
なんだそのとってつけたような効果音は、と少し引きつつも、美少女が背後から取り出した物を見る。
黄色い縁の眼鏡と、同じく黄色っぽい色の数珠だ。
オレはなんとなく嫌な予感がした。
白眼鏡黒眼鏡赤眼鏡に囲まれるようにして立っているオレ。
その黄色い眼鏡は、それはもしかして……。
「お誕生日プレゼントよ。大事に使ってね!」
美少女が極上の笑顔を添えてその二点を差し出した。
「残念ながら、辞退させてもらう」
「残念ながら、あなたに拒否権はないわよ」
「なんでだよ!」
初対面の相手からの誕生日祝いを受け取るか否か、その選択権はオレにあっていいはずだ。
「今日からあなたも大庭高校眼鏡集団略してとりぷるG(GgG)の一員だからよ」
オレの抗議を意にも介さず、美少女が携帯を取り出した。
画面をこちらに向ける。
そこには『(GgG)』とデカデカと表示されていた。




