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とりぷるじー(GgG)  作者: さく
第4章
54/66

12 因縁

 あの時、オレは一緒にいた誰かを見失い、名を呼ぼうと口を開いていた。


 その口に花びらが次々と舞い込んで喉に詰まった。

 息ができなくなったオレは確か、気を失ったんだ……。


 そう、あれはオレがまだ小さな子どものころだ。


 喉が痛かったのは、煙で痛めたから……そうじゃないか? 

 火事の現場から一人助け出されたオレは、何日も生死の境目を彷徨ったのだと聞いた。

 その時か――。


「孝太っ」


 見えない背中に向かって呼びかける。

 花吹雪は一向にやむ気配を感じさせない。


 それでも、脳内に浮かんだ情景のように、息ができなくなるほどではなかった。


「孝太っ!」

「なんだよ」


 二度目に呼んだ時、すぐ傍から返事が聞こえた。


「よかった。近くにいたのか」 

「おまえを放っておくわけにはいかないだろ。迷子になって帰れなくなったら困る」

「孝太、昔、おまえはオレに会ったことがあるのか?」


 孝太が目をほんの少しだけ丸くした。


「ああ、あるな」

「その時も、オレは死にかけてた?」

「ああ、死にかけてたな」


「なんで……なんでオレを死なせなかったんだよ。助けるなら、オレ以外の誰かを助けてくれればよかったんだ」

「でも、彼らが――君の家族が救おうとしたのはおまえだった」

「それでもっ!」


「間に合わなかったんだよ。あとの三人は既に死んでたんだ。そんなもん、おれにはどうにもできない。せめておまえだけでもと思った。果者が火をつけるのを未然に防げなかった。おれにも責任はある」 

「か……しゃ?」


 今、孝太は果者って言ったか? 

 そんな、まさか……。


「そうだよ。おまえの家に火をつけたのは果者だった。おれたちは間に合わなかった。わかるか? つまり、そういうことなんだよ。果者を放置しておけば、犠牲者が増える。果ノ底に沈むには、それなりの理由があるんだよ」


 オレから家族を奪い去ったのが、果者だった!?

 

 そんなこと、これまでに考えたこともなかった。

 果者の存在を知ったのが最近だったとはいえ、その存在を知ったあとも、果者がこれまでのオレの人生と深く関わっているだなんて、微塵も考えが及ばなかった。


 孝太は続ける。


「穢れすぎて浄化しきれない場合、自ら堕ちることを望んだ場合、その理由は様々だけどな。それが花ノ界に入り込む。それはとても危険なことなんだ。それがおまえにはわかっていなかった。おれたちの仕事は、花ノ界から果実を全て排除すること。そして穴を塞ぐ事だ。果実はおまえの家族の仇でもある。それでも、おまえはあの果者を守りたいと思うのか?」


 脳裏に白い腕が甦る。

 耳に両親の声がこだまする。

 鼻に焼け焦げる臭いが届く。

 肌を灼く熱を感じる。


 火事の記憶が呼び起こされる。


「オレ……、オレは……」

「マコト、しっかりしろ」


 孝太の声が聞こえた。

 聞こえたけれど、オレには自分で自分を制御することができなかった。


「あああぁぁぁぁ」


 オレは絶叫した。

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