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とりぷるじー(GgG)  作者: さく
第3章
42/66

13 桜様

「やれやれ。ちょっとは自分の能力を弁えろよ」


 孝太がため息を吐いてから、オレに手を差し伸べた。


「……どういうことだよ?」


 その手を払いのけて自力で立ち上がる。


「え? どこにもいないから探しに来てやったんだよ」

「違う。今の藤との会話だ。おまえ、藤と知り合いなのか? それに監視者っていうのは……」 


 孝太がにやりと笑う。

 ずっと疑問だった。


 何故孝太には花がないのか。


 オレは孝太が青薔薇なんじゃないかと疑っていた。

 人ではないとはどうしても思えなかったからだ。


 だとすれば、いまだに見つからないという青薔薇の可能性を疑うのも仕方のないこと

だろう。


 でも、人間ではありえないと悟郎さんは言っていた。 


 それが真実だったのだ。

 つまり孝太は……。


「桜様……?」

「御明察」


 人ならざる者――確かにそう聞いた。

 花守人の守護者にして、花ノ界、散花界の監視者。


「まさか」

「本当」


「だって咲先輩たちは何も……」

「口止めしといたんだよ」

「なんでだよ」 

「だっておまえ、花守人に選ばれたのが嫌だったんだろ? バレたら絶対恨まれるってわかってるのに、みすみす教えるわけないだろうが」 


 そうだ、こいつがオレを選んだんだ。

 つまりオレをこんな目に合わせている張本人だ。


「色々と言いたいことがある」

「オレはおまえを助けてやったんだぞ」


 オレはぐっと押し黙る。

 そこを突かれると、痛い。


「まだまだ正体をバラすつもりはなかったんだ。それなのにおまえが危なかったから助けに来てやったんだ。いわば命の恩人だ」 


 いや、騙されるなよ、オレ。

 そもそも危険な目にあったのも、花守人としてごたごたに巻き込まれたからじゃないか?


「まあまあ、お互い様だって」 


 孝太が宥めるように言う。

 なんだか腑に落ちないけれど、助けてもらったのは事実だし、ここは穏便に話を進めるほうを選ぶか。


「……わかったよ」


 オレは渋々頷く。


「オレに関しては白木蓮から聞いてるだろ?」

「まあ、一応は」


 オレは近くの木に背を預けた。孝太も手近な木にもたれかかる。


「あいつはしっかりやってるほうだと思うけどな。性格上少々難ありだが、花は立派なもんだ。花を見れば、そいつがどんな奴かはだいたいわかる」


 少々難ありで済ませられるレベルかどうかは、あえて突っ込まないことにする。


「そんなことより、なんでオレがここにいるってわかったんだよ」

「だからおれはおまえたちを見張ってるんだって言ってるだろ。監視者なんだから」


「いつから見張ってた?」

「おまえが便所に行く時から。でも白木蓮たちに連絡とってたら少し時間をくっちまった。間に合ってよかったぜ」


 そんなに前からかよ! 


「もしかしてこの間街で会った時も?」

「あれは藤のあとを追ってたんだよ。そしたらその先に彼女がいた。おれは果実を前にしたおまえがどうするのかを観察してたわけだ」


「見てたのかよ」

「まあ、職務上」


 一体いつどこから見られているかわからないということだ。

 プライバシーの侵害じゃないのか? 

 でもそのおかげで助かったとも言える。


 オレの立場って微妙だな。

 長いため息を一つ吐く。


「で、咲先輩たちは?」


 オレは気を取り直して孝太に訊いた。


「蘭が出没したからそれを追って行った」

「蘭も? じゃあ、三人とも動いてたってことか?」

「そうだろうな。帽子団は今のところ三人だからな」


 そういえば、咲先輩が帽子団とか呼んでたな。


「なんのために……?」

「さあな。ずっと目立った行動をしていなかったのに、ここのところやたらと目に付く動きをしてる。なんかあるのかもな」


「なんかって?」

「あのな、おれだってなんでもかんでも知ってるわけじゃないんだからな。あまりあてにすんなよ。さ、そろそろ帰ろうぜ。あっちがどうなったかも気になるし」


 孝太が歩き始める。


「あ、おい。待てよ」


 オレは慌てて孝太のあとを追った。

 もう、ここにいる必要はない。


「そろそろ三限目も終わりだ。次はなんだっけ?」

「現国」

「ああ、そっか。おれ現国結構得意なんだよな」


 他愛のない話をしながら雑木林の中を歩く。

 前を歩く孝太の背を見て、オレはふと懐かしさを覚えた。


 なんだ? この感じ……。

 どこかで、同じようなことがあったような気がする。でもどこで?


 歩きながら考えるけれど、どうしても思い出せない。

 前にも、この背中を見ながら歩いたことがなかったか?


 考えても、思い出せない。

 体育の時か? それとも遠足? 入学式とか?


 どれもいまいちぴんとこない。


 そのうち勘違いだったんじゃないかという気がしてきた。


 考えながら歩いていたからか、いつしか孝太との距離がひらいてしまっている。

 オレは慌てて、孝太に追いつくために駆け出した。

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