11 対峙
やはり、そうなのか。
「いつから……?」
小原さんが果者だとしたら、一体いつからなんだ?
オレが花守人になった時既に小原さんの花はピンク色をしていた。
今の小原さんと同じだ。
だから、果者になったのはそれよりも前ということになる。
「あなたと初めて会った時、あたしはもうあたしだったよ。この子の意識は眠ってる。彼女はあたしに気づいてない。全て上手くいってる。問題ないよ」
やっぱり――。
「問題はあるだろ?」
「気になさらないことです。須賀さまは積極的に果実狩りに協力されるおつもりはないのだとか。ならば、どうぞお見逃し下さい。この子は、私の大事な仲間です。もし貴方がこの子を狩るおつもりならば、私は貴方を倒すか、果者にするしかありません」
「オレは……でもオレは、オレたちに害をなす者は倒さないといけない。自分の身を守るためにも」
オレは自分に言い聞かせるように言う。
「貴方の身柄の安全は保証しましょう。果実に徹底させます。それなら貴方は私たちを狩る必要がなくなります。そうですね?」
「それは……」
今の理屈では、そうなってしまう。
「でも、そんなのは信用できない。それにオレが無事でもオレ以外の誰かが犠牲になるんだろ?」
「果実には肉体が必要なのです」
「もともと肉体はその人自身の物だ」
「果ノ底に囚われる果実の哀れを察していただきたい」
「それでも……オレは納得できない」
藤は哀しそうな色をその瞳に浮かべる。
ふっと笑ったようだ。
「そうですね。ええ、わかっているのです。私は無理なことを言っている。お詫び申し上げます。正々堂々、お手合わせ願いましょう。覚悟の程はいかがですか?」
オレはごくりと唾を呑み込んで、首を縦に振った。
本当は、覚悟なんてまだできてない。
もしこいつを倒したら、彼女が哀しむだろう。
でも、こいつが穴を開けなければ、悟郎さんの恋人が果者になることはなかった。
そして……オレが知っている小原さんに会えることもなかったんだ。
それでもオレは、そっと数珠に触れた。
戦わなければ、自分がやられる。
オレにやれるのか? 相手は何百年も生きてきた果者だぞ。つい数日前に花守人になったオレが敵う相手じゃないんじゃないか?
不安がよぎるけれど、こうなった以上やるしかない。
藤が小原さんを下がらせる。
あいつの武器はやっぱりあの杖か?
数珠に触れた箇所が熱くなる。チャンスは一回。
オレは足を肩幅に開いた。
いつでも刀を物質化できる状態になっている。
対する藤は特に気負う様子もなく、杖を手に佇んでいる。
どうするつもりだ?
じり、とほんの僅かに足を動かす。藤は動かない。
こちらからかかるか? いや、それは危険だ。相手の出方が見たい。
時間だけが過ぎる。
藤は動かない。オレは動けない。
静まり返った空間で、まるで時が止まったように、俺たちは見合っていた。




