表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とりぷるじー(GgG)  作者: さく
第3章
37/66

8 プールサイド

 既に手の平に熱を掴んでいる。だいぶんコツが掴めてきた。


 着地と同時に、真上から果実を刀で突き刺した。果実を斬った時特有の手ごたえを感じる。


 果実は音も立てず、弾けて消える。


 あっけない。この間も思った。

 果実はこんなにもあっけなく壊れてしまう。

 粉々になった果実の欠片は、輝きながら果ノ底に引き戻される。


 果実はとても儚い存在なのだ。

 もちろん、本来こちらの世界にあってはならない存在なのだから、それは当然なのかもしれないけれど。


 オレは息を吐いて立ち上がった。

 まだ刀の維持は難しい。短い時間で物質化させられるようになっただけでも、随分ましになったとは思うけれど。


 この土日にこっそり練習した成果だ。


 なんにせよ、無事果実を還せてよかった。


 周囲を見渡す。人影はない。

 プールと体育館の間の細いスペースだった。

 三人並んで歩くのがぎりぎりくらいの幅しかない。


 ズボンのポケットから携帯を取り出して、時間を確認する。授業が始まって、まだ十分も経っていない。


 戻ろうか、それともサボってしまおうか。

 考えていると、目の前を半透明の球体が横切って行った。


 プールサイドだ。


 プールを囲むフェンスの向こう。

 ちょうどオレの目線にあるプールサイドの上を、果実が通り過ぎたのだ。


 果実を一つ還してすっかり油断していたオレは、慌ててその果実を目で追う。


 なんでプールに?


 オレはフェンスに手をかけて登ると、勢いをつけて跳び越えた。


 プールには濁った水が溜まっている。

 プール開き前の掃除が大変そうだな、なんて考えながらも、果実を追ってプールサイドを走る。


 そして果実の転がる先に人の姿があるのに気づき、オレは叫んだ。


「逃げろっ!」


 オレの声に振り返ったのは、小原さんだった。

 オレの姿に気づいた彼女が、オレを凝視している。

 けれど逃げる気配はない。


 なんでこんな場所にいるんだ!?


「早くっ!」 


 小原さんは答えない。動かない。

 果実が小原さんのすぐ近くまで迫っている。


 オレと果実の距離は、まだ十メートル近くある。


「小原さん――っ!!」


 オレは拳を握り締めた。

 熱は既に掴んでる。けれどまだ届かない。 


 果実が跳ねる。


 小原さんの頭上にゆっくりと……ゆっくりと落下する。


 間に合わないっ!!


 果実が小原さんの体に入った直後に斬るしかない。

 この間悟郎さんがやったように。


 大丈夫、この武器で斬られても、痛くも痒くもないんだから。

 オレは拳を開くタイミングを計る。 


 落下する果実。


 小原さんはそれをじっと見上げている。

 その胸には相変わらずピンク色の花が咲いている。


 そして小原さんは果実に向かって腕を伸ばした。


「……え?」


 オレは思わず開きかけた拳を握り直していた。


 果実は小原さんの手の平に乗った状態で、ぴたりと動きを止めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ