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とりぷるじー(GgG)  作者: さく
第3章
30/66

1 来客のもてなし方

 赤眼鏡は、オレが普段近寄ることのない高級住宅街にどんどん入ってゆく。


 やがて立ち止まった赤眼鏡のうしろで、オレは唖然として目の前にそびえ立つ門を見上げていた。

 築地塀がずっと続いているから、もしやとは思っていた。

 でもまさか本当にここだったとは。


「おい、こっちだ」


 門を見上げて固まっていると、くぐり戸を開けた赤眼鏡に呼ばれた。

 慌てて、そちらに駆け寄る。 

 軒下に、ちらりと防犯カメラらしきものが見えた。

 金持ちの家は、すごいな。


「おまえんち、金持ちだったのか」

「まさか。俺はただの居候だ。ついて来いよ」


 くぐり戸をかがんで通り抜けると、中は予想通り馬鹿広い庭が続いていた。

 その遥か奥に日本家屋があるのが見える。


「あれは母屋。俺が住んでんのは離れ。離れはこっちだ」


 飛び石の置かれた道からはずれ、左手に生えている木々の間をすりぬけてゆく。

 どうやら近道のようだ。

 奥の母屋に続く庭とは随分と違う。

 そもそも何故ここに林が存在してるのかがわからない。明らかに邪魔だろう。


 しばらく進むと林からぬけた。

 そこには小さな池と庭、それに平屋がちょこんとあった。

 木々に囲まれていて、まるで隔離されているみたいだ。


「ここ?」

「ああ」


 こちらは予想外に普通の家だった。

 玄関に向かうのかと思ったら、どうやら縁側から出入りするらしい。

 池に面した縁側の窓が開けっぱなしになっている。


「なんでこんなとこに住んでるんだよ」

「なんでって……まあ、色々と面倒な決まりがあんだよ。ここは薫んちだからな」

「咲先輩の家⁉ そんなことひと言も……」

「あれ、そうだったか?」


 赤眼鏡が首を捻っている。

 とぼけているわけではなさそうだ。


「ま、オレは次期花守頭……つまり薫付きの花守人だしな。間違って果者になったりしたら本家の体面にも関わるし、素行もまあ一応チェックされてんだ。監視されてるみたいなもんだな。小学生のころからここに住んでる」


 監視とは、いやな響きだ。

 しかも、小学生のころからときた。


「咲先輩もいるのか?」

「いや。なんか来客があるとか言ってたから、来てねえだろ。ま、入れよ」


 赤眼鏡は沓脱石で靴を脱ぐと、縁側から家の中に入ってゆく。

 オレも慌てて靴を脱いで、あとを追った。


「体面って、誰に対する体面だよ。そもそも花守人なんて存在を知ってるヤツは少ないだろ?」

「だからその少ないけれど確かに存在してる誰かに対する体面だっつの」

「わけわかんねえ」

「ともかくそういう世界なんだよ、ここは。本家の人間にとって、おまえや悟郎は薫の家来くらいにしか思われてねえから、その辺は心得ておけよ。ちなみに第一の家来はオレな」

「家来!? ありえないだろそれ」


 家来なんて言葉が日常生活で飛び出すことにまずびっくりだ。

 でもってオレが家来だなんて意味がわからない。

 何度も言うけれど、オレはただ巻き込まれただけだ。


「フリでいいんだって。薫だって別に家来を増やしたいわけじゃねえし」

「だからオレは協力しないって言ってるだろ」

「でも果実は還すだろ?」

「あれは……他の人が巻き添えになったらいけないと思っただけで……」

「ま、理由はともかく、おまえが果実を還してくれればこっちは助かるし、被害も減る。万々歳だ。おまえの意思はともかく、やってることを見れば協力してるっつーことになんだよ」

「それは……」


 そうなのか? 


「そこに座っててくれ。飲みモン取ってくる。コーラでいいか?」

「ああ」

「了解。まあ、くつろいでろや」


 そう言い残して、赤眼鏡が部屋を出てゆく。

 オレはそれを見送ってから、部屋の中を観察する。

 どうやらこの部屋は来客用として使われているらしい。床の間には掛け軸がかけられているし、部屋の中には余計な物が一切置かれていない。きれいに片付いている。


 その時、どたばたという足音が赤眼鏡の消えた方角から聞こえてきた。

 それとほぼ同時に、庭に数人の男たちが現れる。

 着物に袴姿という服装。手にはきらりと光る物を持っている。

 もしオレの見間違いでなければ、あれは刀だ。


 オレは驚いて、腰を浮かせた。一体なんなんだ!?


「あなたが須賀マコトとやらですね。御同行願いましょう」


 突然現れた男が、オレに刀を突きつけながら言った。

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