2 赤縁眼鏡との再会
作戦を練る必要がある。
オレにはこれまで地味に日々を送ってきたという自負がある。
目立つことを嫌い、何ごともほどほどの結果にとどめ、誰かに目をつけられるような悪行に手を染めたことはないと断言できる。
間違っても、あんな赤くてでかい男に誕生日を祝ってもらうような、ありがたくない展開に陥る覚えはない。
昨日、赤眼鏡からなんとか逃げ切ったオレは、寄り道を断念して家に帰った。
がっちり鍵をかけて用心していたが、誰も訪問してこなかった。
そりゃあそうだ。家まで知られていたらそれこそたまったもんじゃない。
学校をはじめ諸施設の個人情報保護能力には大いに期待しているとも。だからどうか裏切らないでほしい。
そんなわけで、幸いにもオレは今日も無事学校までたどり着き、たいくつな授業を受けることができた。
あとはこのショートホームルームが終わるのを待つのみ。
放課後はさっさと帰ろう。しばらく寄り道は諦める。
どうしても欲しいものなら、ネットで注文すればすむ話だ。
「起立、礼」
日直の号令。よし、終わったな。
オレはおざなりに礼をして、鞄を手に席を離れようと一歩を踏み出し――信じられないものを見た。
「おっ……!」
おまえは赤眼鏡!
「よ、須賀マコトくん。だろ?」
開け放されたドアの前に立ちふさがっているのは、間違いなくあいつだった。
昨日と同じくシャツを肩までまくり上げ、赤縁眼鏡をかけている。
その首に我が校指定のネクタイがぶら下がっている点だけが昨日とは異なっている。
うちの学校の制服、男子は特に特徴がないグレーのズボンに白いシャツだから、ネクタイがないと正直見分けがつかない。
同じ学校だったのか! ってか高校生だったのか、この人!
でもってこの派手な赤縁眼鏡を学校でも使ってるのか!
この眼鏡、色が目につくというのももちろんあるけれど、フレームが太いのでその存在がかなり強調されてしまっているのだ。
クラスメイトたちがオレと赤眼鏡を交互に見ている。
そりゃあそうだよな、こんな目立つヤツが突然自分の教室に現れたら誰だって驚くよな。
オレだって驚いた。
でもってそんな目立つヤツがオレみたいな目立たないヤツを訪ねてきたら、もっと驚くよな。
誰がどう見たって、仲良しには見えないだろう。
「なんだ田崎。須賀に用か?」
まだ教室を去っていなかった担任教師が赤眼鏡に声をかける。どうやら赤眼鏡は田崎という名前らしい。
「そッスよ。ちょっと用があるんスよ」
「おい、うちのクラスの生徒をパシリに使ったりしないでくれよ」
そうだそうだ。もっと言ってやってくれ、先生。
「ったりまえじゃないスか。んなことしねえッスよ。な、マコちゃん」
マコちゃん!?
それオレのことか!?
ぞぞぞ、と肌が粟立ち、オレは思わず身震いした。




