14 初めての果実還し
物質化した日本刀を握り直し、果実と対峙する。
ころころと転がる果実は止まることなくこちらへ転がり、ちょうど、刀の間合いのわずかに外で、ぽおんと跳ねた。
頭上から、オレへ向けて落ちてくる果実。
汗ばむ両手で必死に刀を握り、タイミングを見計らって、果実めがけて斬りつける。
ザクリ。
という感触が手に伝わった。
と同時に、薄紫色の破片が周囲に散った。
キラキラと光りながら、消えてゆく欠片。
オレの手の内からは、既に刀も消滅している。
やった……のか?
飛び散った欠片は、やがて全てが消滅した。
それを確認して、オレは息を吐いた。
やった。やれた。
オレは小さくガッツポーズをした。――してしまってから、はっと我に返る。
さっき投げかけられた声。あれは――。
「よぉ、できたじゃねえか」
恐るおそる振り返ると、赤縁眼鏡が腕を組んで立っていた。
やっぱり、こいつだったか。
「いつからいたんだ」
ガッツポーズをしてしまったところを見られていたかと思うと、気まずい。
「ついさっきだよ。果実を見かけたって情報が入ったからかけつけたら、おまえが素手でやりあおうとしてっからさ。さすがに素手は無理だろ、素手は」
「そのくらいわかってる」
わかってるから、なんとか武器を出せないかとがんばってたんじゃないか。
「ま、よくやったよ。おつかれさん。せっかくだから、ちょっとつきあわねぇ?」
「ちょっとって……?」
「おまえだって、少しは知っといたほうがいいって思っただろ。教えてやるから、来いって」
「どこへ?」
「俺の部屋」
オレは、既に空になった手の平と、果実と対峙する際、路上に置いたっきりのエコバッグを眺めた。
積極的に関わりたくなんかなかった。
けれど、知らなければなにもできない。
ついさっき、身に染みたはずだ。
「……冷蔵庫を貸してくれるなら」
オレは渋々了承した。




