13 黄花丸
オレが足を止めるのとほぼ同時だった。
ぴたり、と。
果実が動きを止めた。
まるで考えていることがバレているかのようなタイミングに、思わずギクリとする。
果実に目はないけど、まるで互いの様子を窺うように、動かない。
動けない。
こちらが動いたら、一気に飛びかかられそうで。
つう、と汗がこめかみを伝って落ちる。
するり、と果実が動いた。
来る。
思わず奥歯に力が入る。
数珠をはめた手を前に伸ばす。
これからどうすればいい?
わからない。
出ろ!
この数珠が武器に変化するか、武器を出現させるか、どうにかするはずだ。
そうこうしているあいだにも、果実はころころとこちらへ近づいてくる。
早く‼
早くなにか‼
けれど、数珠を振っても叩いても、戦えるような武器は現れない。
悟郎さんは、あんなに一瞬で出現させていたのに。
方法くらい聞いておいてもよかったと後悔しても、後の祭りだ。
どうるする。どうすればいい?
果実はもうすぐそこまで迫っている。
ここまできて、逃げるしかないのか?
ここまできたら、もう逃げられないんじゃないのか。
「くそっ」
ぎり、と奥歯を噛みしめる。
――ここまでか。
「右手を数珠に添えろ!」
諦めかけたとき、背後から馬鹿でかい声が投げかけられた。
咄嗟に体が反応する。
「念じろ! 呼べ、黄花丸を!」
「お、おう……?」
「黄花丸!」
「黄花丸?」
「馬鹿野郎、もっと真剣にやれ!」
くそ、オレはずっと真剣だ。
「おっ、黄花丸―――っ‼」
突然、数珠に触れている右手が熱くなった。
けれどそれはほんのわずかな時間。
ふっと熱さが消えたかと思うと、手の内に形のあるなにかが出現していた。
落とさないようにと、慌てて掴む。
「日本刀――?」
握ったそれは、よく、時代劇なんかで見かけるような日本刀だった。




