12 決断
果実はさして急ぐ風でもなく転がっている。
どこから現れたのか、オレは全く気づかなかった。
そもそも、果実がどういう性質のものなのか、オレにはよくわかっていない。
果実を追って、脇道へ踏み込む。
果実の転がる先に、今のところ人影はない。
相変わらず、小原さんに似たさっきの彼女の姿がないことにほっとする。
けれど、いつどこから人が現れるかはわからないし、このまま転がってゆけば、その先には比較的通行人の多い通りがある。
このままにしておけば、誰かが犠牲になるかもしれない。
けれど果実にオレの存在を気づかれたら、オレが狙われるだろう。
果実からは距離をとって、ゆっくりと歩きながら、考える。
今、トリプルGの面々はこの場にいない。
連絡先なんかは、もちろん訊いていない。
果実を還すのがトリプルGの役割だとかなんとか言ってたくせに、こういう時に現れないんじゃ役に立たないじゃないか。
ころころと転がる果実。
それをただ追うだけのオレ。
いったい、なにやってるんだ。
こんなの時間の無駄でしかない。
オレは手首の数珠を見た。
なんの変哲もない、ただの数珠。
けれどこれが、対果実用の武器を呼び出す道具だと、悟郎さんは言っていた。
これをどう使うのかはわらないけれど、少なくとも悟郎さんは一瞬で拳銃を取り出していたようだった。
オレにも使えるのか?
もし使えるのなら、それで果実に傷をつけることができる。
そうすれば、果実は果ノ底に引き戻されるはずだ。
別に、トリプルGの手伝いをするとか、そういうんじゃない。
奴らの思い通りになってやるわけでもない。
ただ、このままなにもできず、かといって見なかったことにして立ち去ることもできず、無為な時間を過ごすのがイヤなだけだ。
そこまで考えて、言い訳だな、と自嘲する。
このままあの果実を見逃して、背中を向けた瞬間、後ろから襲われたらと思うと、恐ろしい。
それが本音じゃないか。
いいさ、やってやる。
オレはこぶしをぎゅっと握り、足を止めた。




