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とりぷるじー(GgG)  作者: さく
第2章
26/66

11 消えた彼女と現れた友人

 どこ行った?


「知り合い? もしかしておれ、邪魔した?」


 更に角を曲がったのか。

 それともどこかの建物に入ったのか。


 車一台がやっと通れるくらいの細いその道から、彼女の姿が掻き消えていた。


「いや。そんなことは……」


 あるような気がしないでもないけれど、何も知らない孝太を責めるわけにもいかない。

 まあ、学校で渡せばいいだけのことだ。


 今のが小原さんだったのかどうかも、その時本人に確認してみればいい。

 オレはそう判断して、孝太に向き直った。


「それにしてもめずらしくないか? 孝太とこんなところで出会うなんてさ」

「ああ。ちょっと用があってさ。もう終わったんだけど、この辺にはめったに来ないから、少し散歩してたんだ」


「へえ。そっか。で、これからどうすんだ?」

「うろうろして帰るさ。じゃな」


 あっさりと孝太が手を上げてオレの横を通り過ぎようとする。

 オレはその時になって初めて、孝太の胸に花が咲いてないことに気づいた。


 そういえば、ここのところ教室であまり話をしていなかった。


 普段からベタベタくっついてるわけじゃないし、特にめずらしいことじゃないけど。

 孝太の席はオレよりも後ろなので、授業中にその姿が目に入ることもない。

 そのせいでこれまで気づかなかったのかもしれない。


「あ、ちょっと待て……」

「なんだ?」


 孝太は何気ない風に立ち止まる。オレはその胸をまじまじと見つめた。

 ない。本当にない。何もない。

 枝も、草すらもない。


 眼鏡をかけていない時に見える状態と全く一緒だ。


 どういうことだ? 

 生きている人間は全員花を持ってるんじゃなかったか? 


 果者だって、花は咲いている。


 じゃあ、こいつはどうして――。


「なんだ? 制服になんかついて……」


 孝太の問いが途絶えた。

 オレは胸から視線を上げる。


 孝太は横の道に視線を向けていた。

 オレもつられてその先を見る。

 と、半透明の薄紫色の球体が転がっていた。


「果実!?」


 思わず声に出してしまう。

 孝太の目がそれを追っているように見える。

 孝太は眼鏡なんかかけてないし、見えるはずはないけれど。


 次の瞬間には、何ごともなかったかのような顔で、オレのほうを見ていた。


 果実に気づいたんじゃないのか? 

 そんなわけはないけれど、今の視線の動きが気になった。


 それとも、オレの気のせいなのか?


 花が咲いていないことと相まって、なにか訊かないとと思うけれど、なにをどう訊けばいいのかがわからない。


 それよりも、まずはあの果実か――。


 オレにはなにもできないけれど、もしもあの先に小原さんがいて、果実に近づかれたら大変だ。


 万が一のとき、逃げろと、忠告くらいはできる。


「悪い、オレ、急用ができた」


 孝太に短く告げる。


「ああ。じゃ、また来週、学校で」


 孝太のほうも、あっさりと片手を上げると、今度こそオレの横を通り過ぎて去ってゆく。


 オレはそれを見送りもせず、足早に細い通りへと踏み込んだ。

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