11 消えた彼女と現れた友人
どこ行った?
「知り合い? もしかしておれ、邪魔した?」
更に角を曲がったのか。
それともどこかの建物に入ったのか。
車一台がやっと通れるくらいの細いその道から、彼女の姿が掻き消えていた。
「いや。そんなことは……」
あるような気がしないでもないけれど、何も知らない孝太を責めるわけにもいかない。
まあ、学校で渡せばいいだけのことだ。
今のが小原さんだったのかどうかも、その時本人に確認してみればいい。
オレはそう判断して、孝太に向き直った。
「それにしてもめずらしくないか? 孝太とこんなところで出会うなんてさ」
「ああ。ちょっと用があってさ。もう終わったんだけど、この辺にはめったに来ないから、少し散歩してたんだ」
「へえ。そっか。で、これからどうすんだ?」
「うろうろして帰るさ。じゃな」
あっさりと孝太が手を上げてオレの横を通り過ぎようとする。
オレはその時になって初めて、孝太の胸に花が咲いてないことに気づいた。
そういえば、ここのところ教室であまり話をしていなかった。
普段からベタベタくっついてるわけじゃないし、特にめずらしいことじゃないけど。
孝太の席はオレよりも後ろなので、授業中にその姿が目に入ることもない。
そのせいでこれまで気づかなかったのかもしれない。
「あ、ちょっと待て……」
「なんだ?」
孝太は何気ない風に立ち止まる。オレはその胸をまじまじと見つめた。
ない。本当にない。何もない。
枝も、草すらもない。
眼鏡をかけていない時に見える状態と全く一緒だ。
どういうことだ?
生きている人間は全員花を持ってるんじゃなかったか?
果者だって、花は咲いている。
じゃあ、こいつはどうして――。
「なんだ? 制服になんかついて……」
孝太の問いが途絶えた。
オレは胸から視線を上げる。
孝太は横の道に視線を向けていた。
オレもつられてその先を見る。
と、半透明の薄紫色の球体が転がっていた。
「果実!?」
思わず声に出してしまう。
孝太の目がそれを追っているように見える。
孝太は眼鏡なんかかけてないし、見えるはずはないけれど。
次の瞬間には、何ごともなかったかのような顔で、オレのほうを見ていた。
果実に気づいたんじゃないのか?
そんなわけはないけれど、今の視線の動きが気になった。
それとも、オレの気のせいなのか?
花が咲いていないことと相まって、なにか訊かないとと思うけれど、なにをどう訊けばいいのかがわからない。
それよりも、まずはあの果実か――。
オレにはなにもできないけれど、もしもあの先に小原さんがいて、果実に近づかれたら大変だ。
万が一のとき、逃げろと、忠告くらいはできる。
「悪い、オレ、急用ができた」
孝太に短く告げる。
「ああ。じゃ、また来週、学校で」
孝太のほうも、あっさりと片手を上げると、今度こそオレの横を通り過ぎて去ってゆく。
オレはそれを見送りもせず、足早に細い通りへと踏み込んだ。




