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とりぷるじー(GgG)  作者: さく
第2章
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10 キリンと曲がり角の先の彼女

 滞在時間はわずか数分だろう。


 チリンチリンチリン――。


 オレは背中でドアベルの音を聞きながら、大きく息を吐き出した。

 入る時はオレをびびらせてくれたドアベルだが、今ではオレの勇姿を褒めてくれているように聞こえる。


 キリンがあってよかった。


 オレの手には小袋が一つ、それと無包装のキリンが一つ。

 袋に入っているものはもちろん小原さんに渡すやつだ。

 裸のキリンは、オレ用。


 ――いや、あれだ。別におそろいだからとかそういうわけではなくて……キリンがちょうど2つあったから。


 そう。だから、つい両方買ってしまっただけなんだ。

 って、オレは誰に言い訳してるんだ?


 ふと我に返って、小袋を制服のポケットにしまう。

 タイミングを見つけて、小原さんに渡せたらいいな。


 お返しができそうなことにほっとする。


 さあ、帰ろう、と顔を上げたオレは、歩く人影に目を止めた。


 あれ? 小原さん?


 中央分離帯を挟んだ反対側の歩道を歩いている人が、すごく小原さんに似ているのだ。

 俺はもっとよく見ようと目を細めた。


 背丈はたぶん小原さんくらい。顔も瓜二つだ。

 でも雰囲気が全然違う。


 まず髪が短い。顎のあたりで切り揃えたボブだ。

 その頭にはヘッドドレス……って言うんだったか? 

 ヒラヒラした飾りをつけていて、服装はあれだ……ゴス? ロリ? ゴスロリ? 


 オレには区別がつかないけれど、身に着けているフリルのついた黒い服の袖は広がっていて、スカートは何重にもなってるのか膨らんでいる。


 そしてニーソックスに厚底の靴。


 小原さん? まじで? それともドッペルゲンガーか!?  

 胸にはピンクの花が見える。


 オレはあっけにとられて彼女を見送り、それからポケットに入れたばかりの小袋の存在を思い出し、慌てて横断歩道を探す。


 すぐ傍の横断歩道の信号は赤に変わったばかりだ。

 次の信号まで走る。


 本当に小原さんか? 


 確信はもてない。

 声をかけて、もし違ったらどうしよう。そう思いながらも、目は彼女の姿を捉えている。  


 相手が目立つ恰好をしているのが幸いした。

 次の横断歩道にたどり着くのとほぼ同時に、信号が青に変わる。ラッキー。


 横断歩道を渡りきると、彼女が少し先の角を曲がるところだった。

 見失わないようにと慌ててそのあとを追う。


「あれ? マコトじゃん」

「――え?」


 正面から、孝太がこちらに向かって歩いてくるところだった。


「どうしたんだよ、急いで」

「ああ、ちょっと知り合いを見かけて……あれ?」


 説明しながら、曲がり角の先をのぞき込む。

 けれどそこには誰の姿もなかった。


 ついさっき曲がったはずの彼女の姿が、まるで最初から誰もいなかったかのようにかき消えていた。

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