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とりぷるじー(GgG)  作者: さく
第2章
19/66

4 3人の花守人

「悟郎ちゃん」

「はい」


 僕は神妙に返事をする。


「マコちゃん、行っちゃったじゃないの」

「そうですね」


 去り際の須賀くんの様子が気になった。

 咲さんにあおられて、もう少しなにか言い返してきてもよさそうなものだったのに。


「薫が地雷踏んだんだろ」


 豪さんが愉快そうに口の端を上げる。


「あら。わたしのせいだっていうの?」


 咲さんがどういうつもりで言ったのかはわからないけれど、須賀くんの変化の一因が咲さんの言葉にあったのは間違いないだろう。


 とはいえ、あれほどの変化だ。

 よほどのなにかがあるに違いない。


「……こんなやり方で、よかったんでしょうか」

「なあに? 悟郎ちゃん、マコちゃんのこと諦めるの?」

「そういうわけじゃ……。ただ、彼に、このやり方は向いていなかったのかもしれないなと」


 少なくとも、勢いだけで押しきるのは無理だろう。

 僕の言葉に、咲さんが目を眇める。


「今更ね。それに、既に昨日、マコちゃんは彼らに遭遇してしまっている。やっぱりやめました、が通用するとは思えないし、そもそもそんなことできないでしょう」


「桜様に、別の候補者を選定してもらうというのは……?」

「こちらの都合で選定が覆ることなんて、ないわよ」

「僕が、須賀くんのことは諦めると言ったら?」


 僕の言葉に、豪さんががははと笑い声をあげた。


「おまえ、そんなこと思ってもないくせによく言うぜ」

「選定は覆らない。彼が仲間にならないのなら、花守人の能力を持った彼の存在はわたしたちにとって、人間にとって、脅威となる。放ってはおけない。どうすべきかは自ずとわかるはずよね」


 花守人の役目からは、その能力を次代に引き継ぐことでしか解放されない。

 次代が選定されていない状態でこの任から解かれようと思ったら、命を絶つことくらいしか方法がない。


 選ばれるときはあんなにもあっけなく、けれど辞めるにはとてつもない代償が必要となる。


 それは僕も知っていた。


「他になにか方法は?」


 それでも、さっきの須賀くんの様子を見てしまっては、確認せずにはいられなかった。


「ないな」


 豪さんがきっぱりと告げる。     

 僕の迷いを断ち切るように。


「悟郎ちゃん、昨日、マコちゃんにどこまで話したって言ってたっけ?」

「果者の見分け方とか、果実の還し方とか、一通り教えましたけど」

「帽子団のことは?」

「普通の果者とは異なる、優れた能力を持つ果者がいるというところまでは」


 僕の話を聞いて、豪が目を丸くする。 


「え、おまえまだ帽子のこと教えてねえのかよ」

「襲われた直後ですよ。そんなに一度にあれもこれも教えられなかったんです。彼も、疲れているようだったので、翌日でもいいかなと」


 正直、蘭のことがあって自分も疲弊していた。

 あの場で詳しい説明をできるほどの余裕は、なかったのだ。


「しょっぱなの、薫の説明がいろいろ足りなさ過ぎたんじゃねえの?」

「僕もできるだけフォローできればとは思ったんですけれど……」

「なあに。二人してわたしが悪いみたいな言い方をしないで頂戴」


 咲さんが眉をひそめて、いやそうな顔をする。


「いや、かなりの確率でおまえのせいだろう」

「残念ながら僕も否定はできないです」


「ぐっ。でもね、帽子団のことを全部伝えきれてないっていうのは悟郎ちゃんの落ち度よね。とにかくあのままほっとくわけにはいかないし、せめてマコちゃんの身の安全だけでも確保して頂戴」


「……確かに、そう言われても仕方がないですね。了解です。すぐに追いかけます」


 今の状態で須賀くんが帽子団に遭遇したら、あっという間に体を乗っ取られてしまうだろう。


「それにしても、マコちゃんってどうしてあんなに頑ななのかしら」

「ま、人にはいろいろあるってことだろ。とりあえずおまえがあいつをマコちゃんって呼ぶのをやめるまで、円満な関係は築けないんじゃないか」


「そこはわたし的に譲れないところなんだけれど」

「それは残念。この先の道は、まだまだ険しそうだぜ」


 豪さんがさして残念そうでもなく言う。


「豪さんは、どう思ってるんですか? 須賀くんのこと」

「あ? ひねくれてるけど案外素直で、面白いやつ」

「いや、そういうことじゃなく……」


 須賀くんの人となりについての感想が聞きたかったわけじゃなく、彼が花守人の一員であることに対しての意見が聞きたかったんだけれど。


 と考えていることが、顔に出ていたのかもしれない。

 豪さんが愉快そうに目を細めた。


「あいつのこと頼んだぜ」


 ばし、と背中を叩かれた。

 ああ、そうだ。と気づく。


 ごちゃごちゃ考えていても、仕方がない。

 今は自分にできることをやろう。


 まずは須賀くんの安全確保を。

 考えるのは、そのあとでもできる。


「はい」


 僕は豪さんに対して大きくうなずくと、須賀くんを追って教室を飛び出した。

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