2 赤眼鏡の迎え再び
「で、なんで今日もあんたがここにいるんだよ。オレの誕生日は昨日たっぷりと祝ってもらったはずだけど」
放課後。
今日こそさっさと帰ろうと思っていたのに、昨日と同じ場所に同じ様に赤眼鏡が立ちはだかった。
オレは鞄を持ち、今まさに廊下に踏み出そうとしているところだった。
「積もる話が山積みだからな。おまえも色々と言いたいことがあんだろ?」
なくはない。
けれど正直、できるだけ関わりたくないという気持ちが強い。
そもそも、勝手に押し付けられた役割を、律儀に遂行する義務はないはずだった。
オレは了承したわけじゃないし、なにもするつもりはなかった。
なにもしなければ自分の身が危ない。
ということは、昨日たっぷりと理解した。
理解はしたけれど――。
「遠慮しとく」
オレは短く答えた。
理解したとはいえ、こいつらの強引な手口にまんまとはめられて、連中の思い通りに動いてやるのはしゃくだし、なにより、こいつらと一緒にいると目立って仕方がない。
オレは、ひたすたひっそりと過ごしたいんだ。
「うちの姫さんが乗り込んで来るとしても?」
「え?」
赤眼鏡のわきを通り過ぎようとしたところで問いかけられ、オレは思わず足を止めた。
あの美少女が乗り込んでくる?
あの、目立つ美少女が⁉
「おまえが来ないと、あいつはここまで来るぞ。まず間違いなく来る。たとえ今日はうまく逃げおおせたとしても、その場合、明日の迎えはあいつだと思え」
なんだって? それはまずい。
あの美少女に対してどう接すればいいのか、オレはつかみかねていた。
見た目は儚げな美少女なのに、中身が違いすぎるからだ。
詐欺に近い。それに、こちらの話を全く聞かないのも問題だ。
「それは困る」
絶対に困る。
「だったら、オレと行くのが賢明だと思うぜ」
「……脅迫じゃないか」
「忠告だ」
「警告?」
「勧告だな」
オレは天井を仰ぎ見た。
「……わかったよ。直接話をつければいいんだな」
「つけられるもんならな」
オレは大きなため息を吐いた。
あの、人の話を聞かない美少女相手に、話をつける。
自分で口にしたこととはいえ、なんとも気の遠くなるような話だ。
それでも、ここで逃げてもなんの解決にもならないのだろう。
だったら行くしかない。
ついでに、本当にオレはこの花守人とやらをやめることができないのか、そのための手段がないのか、確認してみよう。
悟郎さんがいれば、話がしやすいんだけれど。
「鋭意努力するさ」
待ち構えているだろうあの美少女のことを考えて、オレは憂鬱な気持ちになるのだった。




