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女神キャンペーン〜異世界への招待〜  作者: 燁。
第1章 異世界への招待
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第9話




「いらっしゃいませ……あっ、おかえりなさい。すごい魔物の量ですね…。初心者とは思えません。」


「ただいま!一応依頼は成功したと思うから帰ってきたんだけど…。」


「はい、一度冒険者カードをお預かりしてもよろしいですか?討伐した魔物の数を確認させていただきます。それによって報酬も変わってきますので。素材はその後に1つずつ確認します。」





冒険者ギルドに戻って俺を出迎えてくれたのは色々と説明してもらったアメリアだった。にこりと微笑みながら対応する彼女に言われた通りカードを手渡す。



確か初級魔物一体につき討伐報酬銀貨1枚だったはずだ。つまり日本円で1万円である。これだから冒険者は人気だな。初級で1万なのだから。




アメリアは何かの魔道具にカードを置いて情報を得ているらしい。そして、ふと彼女の動きがぴたりと止まった。





「……え?」





何やら驚愕を顔に浮かべた彼女は、ゆっくり顔をこちらに向けた。



何事かと思わず身構えた俺に言われたのは。





「…ファードルボアを討伐したのですか?」


「ん?ふぁ、ふぁーど…?」


「ファードルボアです。」





ファードルボア…魔物の名前はわからないからなー。でもちょっと待てよ?ボアって猪って意味があった気がする。それを考えると……。





ハリシシ(・・・・)か!」


「え?ハリ…?」


「あぁ、ごめんな。魔物に詳しくなくてさ、猪に似ててハリネズミみたいな毛皮だったから…って分かんないか。一応素材分かんなくてまるまる運んできたんだよ。」





そう言って俺は担いできた魔物の中から下の方に埋もれていたハリシシもといファードルボアの死体をカウンターにどかっと置く。



その音に周りの冒険者達も視線をこちらに向けてきたのが分かった。集まる視線に若干居心地悪く感じる。



一方周りからカウンターのアメリアへと目をやると、彼女は声なくただただ静かに目を見開いていた。





「……確かに、ファードルボア、です。」


「これ、ファードルボアって名前なんだな。」


「でも…どうやって討伐したんです?あっ、すみません、もちろん黙秘も可能です。これはただ私個人が気になっただけですので…。」





仕事中の丁寧な敬語が剥がれ、所々彼女の素が垣間見える気がした。



特に知られて困る立場でもないため、大雑把であるが簡単に説明をした。




薬草を探していたら偶然300mほど先にいるのを発見したこと。遠いし失敗したら逃げればいいやと高を括っていたこと。氷魔法で首元をぶっ刺して絶命させたこと。



ここだ、と横たわっているファードルボアの首元に残る複数の刺し傷を指してアメリアに見せる。





「……今日冒険者登録をした方とは思えません。この魔物はBランク級(・・・・・)とされているものです。例え遠くから不意をついたとはいえこの傷からするに一瞬で絶命…。しかもそれを成したのが経験皆無なFランク冒険者…信じられませんわ。」


「んー、弱ったなぁ。あんま詳しくないからとにかく金になりそうな奴がいたから狩ったただけだし。まあとりあえず俺今無一文なんだよ。宿も取りたいし金が欲しいんだけど…。」





苦笑しながらそう言うと、自分の世界に飛んでいた彼女はハッと我に返ったように失礼しましたと頭を何度かへこへこと下げた。



そんな謝られなくてもいいんだけどさ、まさかこんなことになるなんてなぁ。





結局初級魔物の討伐は全部で銀貨17枚になった。金貨にするかと聞かれたのだが、宿や食事を取るのに金貨だと些か大きいため銀貨にしてもらった。



そして問題のファードルボアだが、こいつはなんと一体で銀貨10枚にもなった。いい儲けもんである。



また素材の状態がいいから魔物たちの素材を売ると金貨3枚と。そして薬草は1つ銅貨2枚。俺は例の探索魔法でたんまり運んだため銅貨80枚、つまり銀貨40枚である。





「初日でこれだけ稼ぐ冒険者様も中々いません…。」





少々呆れ気味にアメリアに言われてしまう始末である。それもそのはずか…。合計でこの日俺は銀貨97枚、日本円に直すとおよそ97万円である。



こちらの生活が怖くなってくるよそろそろ。




受け取った金の入った袋を持ってギルドを出ようとすると、お約束というか何というか、強面のガタイのいい兄ちゃんに前を塞がれた。





「よお、坊主。」


「はぁ、どうも…?俺さっさと宿取りに行きたいんですけど…退いてもらえたりします?」





ダメ元で、ため息混じりに男へと聞いてみるが、ギロリと一睨みされてしまった。つまり、退けてもらえないと。



いよいよ面倒くさくなってきたぞ。





「退かないとして、俺に何か用ですか?」


「オメェさんよ、冒険者っつうのなめてねえか?」


「……は?何のことだ。」





彼の話が全くもって見えない。あまりにも唐突であったため、思わず敬語が剥がれてしまった。



何でも、彼は先ほどの魔物の討伐諸々が俺自身の手柄であると認めていないようだ。陰に誰か別の奴がいて、実際の討伐はそいつがやっていると。



……呆れちまうわ。





「熱心に推理してるとこ悪いんだけど、俺はこの辺に知り合い1人いないし、ましてやそんな陰にいる人物なんて存在しないですよ。」


「しらばっくれんじゃねえ!そうでもねえとぺらっぺらの新入りがこんな大量にしかもBランクまで狩っちまえた説明がつかねえんだよ!」





知らねえよ!!!なんて、思わず突っ込みたくなるのを必死に抑える。



そんな説明つかねえって言われても、誰にも迷惑かけてないし。むしろ人間困らせてる魔物退治してんだからいいと思うんだけど。




どう言ってこの場から逃れるかあれこれと考えを巡らせる俺に男はこう言ったんだ。





「俺と勝負しやがれ!」






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