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女神キャンペーン〜異世界への招待〜  作者: 燁。
第1章 異世界への招待
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第5話





正午を数刻ほど過ぎた頃、アノルーダのある林の中に突如青白い光の柱が空から伸びた。



光の中に薄らと影がうごめいた。






「いって!ナリーシャの奴もっと優しく送還できねえのかよ…。」






俺だ。



とうとう異世界とやらに到着したらしい。周りを見る限りではあの女神の言っていた通りどこか林の中だった。




とにかく街に向かおうと足を運びかけ__ふと、止める。周りに誰もいない今のうちに、いろいろと確認するのもいいかもしれないな。魔法の発動もできるようにしたいし、身体能力の確認もしたいしな。



そう考えた俺はもう一度何も問題がないか周りをきょろきょろと確認し、そっと目を閉じた。




全身に少し力を込めるようにする。その瞬間身体の中からじわじわと不思議な何か(・・)が湧き出るような感覚がした。



試しに20mほど走ってみる。すると驚いたことにいつもより足が軽い、そして速い。世界最速を優に超えるようなスピードが決して本気の走りをしたわけではないのに簡単に出てしまい少々狼狽える。




次は右腕だけにそれを込めてみる。そして近くにあった岩へ一か八かで拳を勢いよく打ち込む。すると本当に岩だったのかと疑うほど簡単にそれは砕け散った。



しかしこれが限界ではない(・・・・・・)と感覚で分かる。おそらく俺のこれ……魔力(・・)はまだ1割程度しか込められていない。もっと多くの魔力を込めればとそう思うと何だか恐ろしくも感じてしまう。





「……よし。」





気を取り直して今度はその場で跳んでみた。想像通りいつもよりもその高さが桁違いだ。





「全く、凄いな。」





思わず"魔力"というものに感嘆する。軽く3mくらいは跳んでいるのではないだろうか。




そこでふと、思い立った。跳んで浮いている間にああすれば(・・・・・)、もしかしたら。すぐに行動に移す。



まず手から魔力の塊を放てるか試す。先ほどよりも少々集中して手を開いた状態で前に勢いよく突き出した。



ボフンッ



結果的に実験は成功した。が、威力操作を間違えたらしい。魔力塊のぶつかった場所がごっそりと更地と化してしまっている。木や岩が跡形もなく消え去った。



見なかったこととした。





「これは加減を覚えなければ……。」





次に今の魔力塊を足からでも同じように放てるか実験する。先ほどよりもずっと少ない魔力量で挑戦だ。片足を上げてやってみた結果、ちょうどいい感じに魔力を放つことができた。今のは手のときの魔力を1としたときの1/100ほどの量を込めた場合である。



ちなみに、手のときで自分の感覚ではまだ全体の1/100ほどのような気がする。



さて、理論はさておき、ここからが本題だ。両脚に魔力を込める。そして。





「ほっ!」





跳ぶ。浮いている間に自分の右足から先ほどと同じ量の魔力塊を放つ。するとまるでそれが踏場になったように一瞬だが足を乗せることができた。そして右足でジャンプ。今度は左足から魔力塊を放つ。そして左足でジャンプ………。





「よっしゃぁああ!」





俺はこの瞬間、空中に浮かぶことを覚えた。



魔力塊をコントロールしながら少しずつゆっくり地に降りる。これは面白い能力だ。地球にないなんて勿体ない。コントロール次第で空を歩くこともできるのだ。



もしかしたら、空間魔法を操ればほんとに空を飛ぶこともできるかもしれない。そう考えると無性にわくわくしてきたのが自分でも分かった。





さて、と。次は実際に魔法を…。と考えたが、そういえば街で宿に泊まるにしても金が必要になる。今の俺はもちろん一文無しだ。尤も、日本の通貨なら履いているジーパンのポケットに幾らか入っていたが。



さすがにそれは使えまい。ああ、我が友諭吉よ、さらばである。




ちなみに俺は直前まで着ていたであろうバスケのユニフォームや病衣ではなく、自分の私服である白のVネックTシャツに少しダメージの入ったジーパン、そして少し長めの丈の紺のカーディガンを羽織っていた。



どういうシステムなのかは知らないが、あの女神がコーディネートでもしてくれたのだろうか。まあ、ユニフォームや病衣でなかったのはありがたいが。




兎にも角にも、まずは金を稼がないとな。とりあえずリステリアを目指すことにしよう。入国に金を取られなければいいが…。



しかし、リステリアに行こうにも方向がいまいち分からない。周りは木と岩しかないのだ。方向感覚が掴めない。こんなときに探索魔法でも使えればいいんだけどなぁ。



…………探索、魔法?



うまくいくわけない、と駄目元で挑戦してみる。目を閉じて先ほどと同じように意識を集中させる。イメージは地図だ。スマホのマップアプリ。住所や名称を検索すると目的地と現在位置が表示される、位置情報を使ったあれだ。



イメージをはっきりとさせて、そっと目を開ける。





「…うおっ。」





目の前の空間にスクリーンのようなものが映し出され、左下には俺の今いるであろう林が広がっており、青い丸が1点に置かれている。おそらくそこが俺の立つ位置だ。



そしてその周りには幾つかの街が散らばっていたり、洞窟があったりと、まさしくこれは地図の機能を示している。上部にはスマホで見慣れた検索バーが設置されていた。俺のイメージ通りのマップアプリ(・・・・・・)の完成というわけだ。



その完成度に思わず頬が緩むのを感じながら、俺は心の中で"リステリア"と念じる。すると検索バーに自動でその文字が打ち込まれ、瞬時に今度は赤い丸が、地図中央付近の一際大きな街に現れた。



また俺の位置を示す青丸から矢印のような物が現れる。おそらく俺の向いている方向を示すものだろう。今その矢印は赤丸とは逆に向いている。





「…ということは、だ。」





矢印を意識しながら身体の向きを変えていくと、ちょうど反対を向いた辺りでリステリアへと向いた矢印を確認できた。



その方向に歩いていけばそれに伴い青丸も進んでいく。これはすげえ。まさかこんな簡単に地図が開けるなんて、まるでスマホじゃないか。



これで迷わずにリステリアに着けそうだ!






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