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女神キャンペーン〜異世界への招待〜  作者: 燁。
第1章 異世界への招待
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第1話




汐音(しおね)!そっち行ったぞ!」


「任せとけって」





声が届く前に、俺はもうゴールに向かって走っている。パスカットは難しいであろうスピードでこちらに飛んでくるボールをゴールの手前で見事キャッチ、そのまま流れるように投げ入れる。



カチッ、電光掲示板に表示されている数字が変わる。27対56。ダブルスコアの圧倒的な優勢。



仲間の喜ぶ声や、歓声が聞こえてくる───。











「おつかれちゃん!いやぁ、汐音ちゃんはかっこいいねえ!」


「おつかれ。その汐音ちゃんってのやめろって、名前だけに笑えないわ。」


「そんな釣れないこと言うなよ!俺とお前の仲だろ?」





どんな仲だよ。ついそう突っ込んでしまいそうになるのをぐっと堪え、肩を組んできたこいつから逃げながら首に伝う汗をタオルで拭った。




このふざけた呼び名で俺を呼んでくるこいつは俺の幼稚園の頃からの幼馴染である菅原健太(すがわらけんた)。昔は汐音くん汐音くんっていつも俺の後ろに隠れていたくせに、中学に上がった頃からは気づけばこんな調子である。



もう高校に入って2年目。そろそろ落ち着いてほしい。うるさい、とても。




そして、健太の愛しい幼馴染で名前だけだと女とも取られてしまいがちな俺が、桐谷汐音(きりたにしおね)である。立派な男だ。



俺達2人は中学から続けているバスケ部に所属している。さっきも次の大会の予選で試合をしていたところだ。結果は見事こちらの勝利。余裕のよっちゃんだ。





「途中逆転されたときは焦ったよな!ま、こっちには汐音ちゃんがいるから、負けるわけねえか!」


「俺だって焦ったよ。ていうか途中マジで負けると思ったし。」





………少し盛った。余裕、ではない。




試合も無事終わり、健太と2人で帰路につく。健太は口を開けば女子の話ばかりだ。隣のクラスの美咲ちゃんが可愛いだの、俺らのクラスには可愛げのある女子がいないだの。これを聞いたら女子達怒るだろうなぁ、なんて他人事のように思う。



だが、正直に言って健太はムカつくが顔は良いのだ。とてもムカつくが。そのため、女子の顔の良し悪しをつけても、なんとも言えない気分になる。





「……俺ももっとかっこよく生まれたかったぜ。」


「それは喧嘩を売られてると捉えて良いか?」


「いてっ!ちょ、おま、殴んなよ、意外と痛いぞ。」





切実な俺の願望はどうやら聞き入れてもらえなかったようだ。俺だって男なわけで、女子にモテたいとか思うわけよ。彼女だって、中2の頃に一度出来ただけでそれからは女っ気ゼロ。俺の生活にはバスケと健太しかいない。



しかしそれを言うとこいつは何故かいつも殴ってくる。ジト目で「罪深い奴」と呟いて、また殴ってくる。理不尽な扱いである。




それぞれの家へと続く分かれ道で、いつものように俺達は別れた。






俺は今一人暮らしをしている。両親は3年前に事故で死んでしまった。しかもその日は両親の結婚記念日。2人で記念日を祝ってデートしたその帰りに、乗ったタクシーが事故に遭ってしまったのだ。



反抗期もなく、比較的仲の良かった両親を一度に失った俺はしばらくやけを起こしてやんちゃ(・・・・)もしていた。



しかしそんな時でもずっと側にいてくれたのも、実は健太である。絶対口にはしないけどなんだかんだ感謝してるんだぞこの野郎。




借りているアパートのドアを開ける。しんと静まった部屋のもの寂しさが今日は痛い。両親の事を思い出したからだろうか。



部活道具の入ったエナメルバッグをどさっと雑に置き、そのままベッドになだれ込む。明日も試合だ。本戦進出を決める最終戦。



一層気合を入れなければとそう決意して俺は目を閉じた。




────その日は久々に、両親の夢を見た。











走って、パスを繋げて、時にはフェイクを入れて、シュートに向かう。ロングシュートを打つと見せかけて、ジャンプしたままノーマークの味方にパスをする。



もうすっかり体に馴染んだこのスポーツ。俺はこのチームの副キャプテンを務めさせてもらっている。どんな相手が来ても、負けるつもりはない。今回だってそうだ。





────今回だって、そのつもりでいたんだ。







「危ねえっ!!」




ここで絶対に取らなければならないボールではなかったような気がする。しかし何故か俺の身体は意識とは裏腹にコート外に飛んでいくボールを追いかけ、そして。



そんな声が聞こえたと思えば、次の瞬間には酷い痛みが俺を襲った。



金属のぶつかる音が会場に響き渡る。そして一瞬にして静まり返ったその場では、





「し、汐音っ!!!!」





珍しくまともに呼びかけてくる幼馴染の声だけが響いていた。







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