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3. 幻影は偉大なる軍人の……

 俺は今「キュウタントウ」なる建物の一階、吹き抜けになった部屋の中にあるソファに座っている。この部屋には美しい装飾は何一つとして施されてはいない。しかし、不思議なことに実用のためだけに配された全てのモノがこの部屋を無骨かつ神秘的な美しさで彩っている。


 例えば、天井には元々の用途の名残なのだろう四角錐型の構造物が突き出している。そしてその先端部からは傘電球が吊り下げてある。焦げ茶色をしたこの特異な形の天井は、SF映画の中に出てくる潜水艦の艦内を思い起こさせる造作である。


 今座って居る部分を含めて、一階は事務所のようになっている。木で出来た小気味良いデスクやパーソナルコンピュータ、木製の大きな棚、来客用の応接家具一式、なにやら良く分からない器具などが据え置かれている。飾らない部屋ではあるが、セピア色に統一された部屋の中は何とも言いがたい懐古感を俺に覚えさせた。


 俺の座るソファの真後ろには鉄骨の柱が配され、その上にはこれまた鋼鉄で出来た通路がある。黄色と黒色の警戒色に塗られた手すりが面白い。ここからは普段使っていると思しき外套やリュックなどが垂れ下がっており、それもまた賑やかである。


 ちょうどその通路を通って、誰かが一階に降りてきた。


「お。噂の水上少尉ってお前か。」

「そうだが。君は?」


 そこに居たのは、これも未だ二十歳に満たないようなミディアムショートの金髪の女性だった。つなぎを着ているが、それをワザワザ半脱ぎにして、上は黒のYシャツを胸まではだけているという奇妙な出で立ちをしている。


「オレは日野、日野アキラっていう。宜しく。」


 彼女はそういうと手を差し出して見せた。どうやら握手をしろという意味らしい。差し出された手を握ってみる。というのも、握手なんてしたことは余り無かった。アメリカではそういう事もあると聞いたのだが、果たして日本で「握手」という単語に触れる機会すら少ないというものだ。


「くすぐってえよ。お前、もっと握るときはこう強く握んだって。」


 そう言って、彼女は俺の手を目一杯強く握って見せた。


「いててててて」


 普段出さないような声を出してしまう。いや、本当に痛い。この女は相当力があるらしかった。俺がそういう風にうろたえている様子を見て、彼女は笑いながら


「すまんすまん、ついからかいたくなっちゃって。」


などと言いつつ、懐からラークの箱を取り出して、俺のほうに突き出した。「いるか?」とでも言うように首を傾げている。


「いや、良いよ。余り好んでは吸わないんでね。」


 俺はそうやって丁重に断った。すると、彼女はその箱から煙草を一本取り出して口に咥え、応接机の上にあったマッチを擦って火をつけた。


「ラークとは全く趣味が悪い乙女だ。」


 未成年喫煙に対する嫌味も込めて、彼女を暗に批判してみる。


「わかばの方がよかったかな?」

「そりゃ最高だな。」


 俺の批判は冗談のうちに上手く受け流されてしまったようだった。彼女は笑いつつ、向かい側にあるソファに腰掛けた。煙草を口から離して、煙を吐く。中々どうしてこれが絵になるから困りものである。身のこなしからして、長く煙草を吸っているようだった。まぁ、最近はそういうことも多いのである。治安が悪化すれば、そういった片々の法律まで遵守されなくなるのは当たり前のことだ。


「居心地はどうだい、水上少尉。」

「ああ、最高だよ。」

「それはよかった。」


 そう言いつつ彼女はニヒルな笑みを浮かべていた。話のタネも無くなってしまったので、俺はかねてより気になっていたことを、彼女に聞いてみることにした。


「この建物は一体なんなんだ?」


 少し電圧が下がったのか、白熱球の明るさが暗くなった。いや、よくよく考えても見ればここに来て以来、白熱球は常に明るくなったり暗くなったりを繰り返している気もする。


「この辺りが稲沢機関区だったという話は知っているか?」

「ああ。」


 彼女は、「なら話が早い」と付け加えて、煙草を一吸いすると話の続きを始めた。


「こいつは蒸気機関車の時代に石炭を積んでた建物なんだ。」

「するとキュウタントウってのは――」

「石“炭”を供“給”する塔と書いてそう読むんだとよ。」


 この建物はかつてこの辺りが交通の要衝だった時代の名残という訳だ。彼女は「まぁこれも全部あの美少女様の受け売りなんだけどな」と自嘲する様に話していた。


「おっと、何やらキミたちだけ楽しげにやっているじゃないか。」


 噂をすればといったところだろうか。少女がトレイに何かを載せて持ってきた。


「ああ、少尉殿とは気が合いそうだ。その持ってるのは酒か?」

「お出迎えにウイスキーをとね。」


 少女は手に持っていたトレイを丁寧に机の上に置いて、載せてあったデキャンタとリキュールグラスを適当な位置に置いた。


「中々洒落てるじゃないか。」


 俺がそういうと、少女はいつもの不敵な笑みを浮かべている。


「バランタインだよ。」

「スコッチか。全くどこで手に入れるんだか。」


 グラスにストレートで注がれた液体を天井の電燈にかざして見た。現代日本において富の象徴といえる薄茶色のそれは燈色の光に照らされて黄金色に輝いていた。


「時にキミは、陸軍で爆破工作の計画立案などを担当する専門職にあったようだね。」


 少女は俺のほうに向き直り、真面目なまなざしで俺を見つめながら、そう問いかけてきた。


「君が俺をあの場所から救出したのはそういう関係なのか。」


 少女はちいさく「ああ、」と頷いて、少し遠くを見るような仕草をした。改めてこちらを向き直ると、彼女は静かに話し始めた。


「君は『恐怖主義』という言葉を知っているかね?」

「判る。いわゆるテロリズムだな。」


 俺は予測していた。いつか恐怖主義かそれに類似した言葉を類推させる思想を含有する言葉を少女の口から聞くことになるであろうと。


 少女はより真剣な目で俺を睨みつけるように見つめた。


「お察しかとは思うが、我々はテロ組織という奴だ。日本帝国政府を打倒し、民意に沿った新政権を樹立する事が我々の使命なのだ。」

「……そうか。」


 俺はその言葉を淡々と、しかし受け流すように聞いていた。それは彼女の言うような思想がくだらないという思いからでもあったが、何より俺が陸軍省を実際に爆破したところで何も変わらなかったという事実のせいもあった。

「そこでキミに協力して欲しいことがあってね。」

「断る。」


 俺がすぐに断るのを見て、彼女はいかにもといった作り笑いを見せた。いや、俺がこう言う事は予測していたのだろう。少女は大きな模造紙のようなものを取り出しながら、俺に構うことなく更に話を続けた。


「まぁまぁ、そう言わずに聞いてほしいんだ。……ちょっと良いかい。」


 そう少女が言いつつ、煙草を吹かしていた例の金髪女性――確か日野アキラと言った――にアイコンタクトをすると、彼女は静かに席を外した。


「あらかじめ断っておくが、俺は爆弾の入手とか、製造とか、起爆装置製造とか、そういうものを頼まれても出来んぞ。」


 俺がそうやっていうと、少女は「そんなコト頼む訳ないじゃないか」と笑った。いや、性格には笑ったとは言わないかもしれない。彼女の顔は笑っていたが、目は真剣そのものだったからである。


「数は多くないが、爆弾もあるし、起爆装置も十分に持っている。」


 少女はソファに浅く掛けなおし、俺との距離を詰めながらそう言った。俺は大体次に彼女が何を言うか予想が付いていた。大方、俺に本職である爆破工作の計画策定や構造計算などをさせる気だろうというのは想像に容易いものだった。


「キミにとある建物の図面を渡すから、それを最小の爆弾で効果的に爆破するような計画を考えて欲しいんだ。」

「厭だ。」


 俺は食い気味に即答した。あの陸軍省爆破の件で爆破工作という物が如何に無駄な犠牲を出すかということを俺は痛感させられたからである。


 それを見て、彼女は指で唇を触るような仕草をしつつ、難しそうな顔をしていた。しかし、しばらくして彼女は何やら決めたように軽く頷くような仕草をし、再び口を開いた。


「時に、――」


 俺は少女の目線が鋭くなるのを見た。彼女はいつも通り不敵な笑みを浮かべていたが、今回のそれはいつもに増して不気味な物だった。


「――キミはお兄さんを亡くしているね。」

「君に関係したことではないだろう。」


 俺は彼女にその事について話したくはなかった。というのも、この件について彼女に知れれば俺はこの無益なテロリズムに巻き込まれることになるだろう事は分かっていた。いや、ここまで生き延びてしまったのに傲慢とも言えるが、それでも無益な犠牲者を大量に出すであろう爆破工作には加担したくなかった。


「いや、関係あるね。キミの家族は陸軍に“殺された”。そうだろう?」

「なぜお前がそのことを知っている?」


 俺は余りの興奮に半ば叫ぶように語気を強めて言った。それは俺にとって衝撃でしかなかった。この少女はそこまで情報を把握した上で俺を仲間に入れようと考えていた訳である。


「ふふ、教えられないな。機密は保持する姿勢なのでね。」


 少女はいつもの不敵な笑顔を見せた。そして、ショックのあまり黙り込む俺を尻目に「彼女の知る俺の過去」を語りだしたのである。


「キミの血筋は第二次世界大戦……おっと、政府は大東亜戦争と言っているか。……まぁいいが、それ以来の軍人家系らしいね。キミのお父さんは――」


****


――俺の父親は一九七八年の中東事変で軍功を立てて、中将にまで上り詰めた。父は「考えの豊かな」人だったと母は繰り返し言っていた。父は青年期に日本と同じく第二次世界大戦の戦勝国であったドイツやイタリアに留学し、近代的な軍政を学んだ。しかし、父の精神に最も強い影響を与えたのは第二次大戦やその後の戦争で我々の陣営に敗戦した諸国での暮らしだった。イギリス、フランス、そしてアメリカ。自由を重んじ、個人の尊厳を重要視するこれらの国に父は大いに影響された。


 父は中将になってから軍政の改革を始めた。それは主に軍の開放化と効率主義、規律重視からなっていた。しかし、十年くらい前だっただろうか。大将に就任した今の陸軍大臣兼任参謀総長、畠山久伍はその思想を危険として陸軍を追放したのだ。


 勘違いしないで欲しいが、私の父はその程度で腐るような人間ではなかった。陸軍を追放されても今までの給与は沢山残っていたので生活には困らなかったし、父を支持する軍人は陸軍内にも多かったので我々に危害が加わることもなかった。だから父は陸軍を退官した後も政治家などとのパイプを利用して軍制改革を進めようとしていた。


 ちょうど父が陸軍を追放された頃に、俺の兄が陸軍へ入隊した。彼は陸軍士官学校(現在は改組されて陸軍大学校になっているが)を主席卒業し、将来有望と言われた自慢の兄だった。俺は普段から彼と比べられてしまうことに不満も持っていたが、それを以っても彼は自慢すべき偉大な兄だったのだ。


 勿論、兄は順調に陸軍のエリート街道を登っていった。俺が横浜にある国立大を卒業して、陸軍に入隊したときには既に佐官になっていたと思う。とにかく彼は多くの人から期待を掛けられていた。特に父からの期待はとても強いものだったと思う。


 彼は頭脳明晰、身体健全だった。父の考えを引き継いで軍の体質改善にも取り組んでいた。彼の受け持つ大隊はその思想に基づいていて、内外からの評判も良かった。演習などで優秀な成果を残した時、兄が喜んで報告してきたのを俺は良く覚えている。しかし、そんな彼は既得権益を貪る軍の高官にとっては目障りでしかなかった。


 ある日のことだった。突然、彼は強姦の疑いで逮捕された。陸軍の高官が彼のガールフレンドを金で買収して、そう証言させたのだ。全く笑い話のようにしか思えないが、これは事実であった。


 即時、兄は裁判で懲役刑となった。それからは見る見るうちに全く聴いた事もないような罪状が彼に次々掛けられていった。業務上横領、暴行、国家転覆企画……中には窃盗なんてものもあったと思う。我が家の家計状況を鑑みれば本当にありえない話である。その度に裁判が行われることになった。


 家族は裁判があるたびに傍聴に呼ばれ、裁判の様子を傍聴席で見る事になった。今思えばあれは我々家族を破壊するために陸軍の高官達が仕組んだ罠だったのだと思う。


 我々家族は彼が裁判所で力なくその罪状を認める様子を見ていることしか出来なかった。証言台に立つ彼の身体には日に日に痣が増えていった。ある時は麻薬酔いの症状を呈していることもあった。とにかく彼への拷問は見るからに熾烈を極めていた。更に、それを見つづける我々家族の心境も想像し難い程に酷いものだった。


 彼が死んだのはそんな裁判が続いたある日のことだった。いつも通りそれを我々が傍聴しようと待っていると、軍服を着た裁判官が何か書簡を取り出して読み上げだした。


「被告人死亡のため、裁判を中止する。」


 その時こそ、家族が壊れた瞬間だったと思う。我々は何とか家までたどり着いた。しかし、父親はやっとの思いで家に到着した後、言葉を一言も発せず、動くこともしなくなった。母親はとにかく号泣することしか出来ないようで、狂乱の有様であった。俺はそんな二人を静かに見守ることしか出来なかったのである。


 それでも翌日から母親は気丈に振舞った。少しも動かず、話さず、ものも食べなくなった父親を必死で介護したのだ。しかし、何年経っても父が元に戻ることはついに無かった。


 それはある種俺の責任でもあった。母は「あなたが兄のかわりに立派な軍人になるのよ」と言ったが、俺はそんな器ではなかったのだ。俺は何時まで経っても爆破工作を担当する部署で少尉止まりであった。


 臆病な俺は成るべく目立たないように行動していた。出世せぬよう、目立たぬよう、今思えば最も愚かな類の努力を払ったのである。結果は勿論、今もそうであるように俺は立派な軍人になれなかった。


 近所でも次第に「水上さん家のお父さんが廃人になったらしい」という噂が立ち始めていた。それでも母親は何事も無いかの如く振舞っていたが、その精神はその頃既に限界に達していたのだ。


 ある日俺が家に帰ると、人の気配が全くしなかった。不思議に思いつつ居間へ行くと父がナイフで刺されて死んでいた。母親を探したところ、母も自室で首吊り自殺を図って死んでいた。俺はどうしていいか判らず、母親の首を吊っている縄を切ったのだが、母親の身体を2mくらい落下させる結末になった。ただ、その時に一枚の紙が落ちたのだ。それは一行だけの遺書のようなものだった。


「パパを殺そうとナイフを振り上げたとき、『ハタヤマ、ハタヤマ』って喋ったの。」


 それだけが書かれた遺書を見て、俺はこれが心中であることを悟った。そして俺はいつかその畠山を殺してやると思った。


 それから俺は実家は俺には広すぎるので引き払って、あの二宮のアパートメントを借りた。その後はずっと爆破に関する知識を全て動員して彼を殺すことに執心した。まぁ、結果はあの通りだった訳だが。


****


「――と言う訳で、キミは畠山しいては陸軍高官に復讐を果たそうとして、今に至る。……そういうわけだ。違うだろうか。多分ボクの言った事で大体合ってると思うのだが。」

「……ああ、すべて合ってるよ。」


 そう俺が言うと、彼女は得意げな顔をした。俺はその記憶を長年、すべて怒りとして変換して接してきた。しかし、今彼女はこの話をさも悲劇として俺に語ったのである。それは、この記憶を俺にとっての弱点に仕立て上げることに他ならなかった。俺は当時のつらい気持ちを思い出したか、もしくは曖昧な記憶の中に創作してしまったのである。底抜けの虚無感が俺を襲った。


「そうか、そうだな。キミのことは良く分かっているつもりだよ。今までよく頑張ったものだ。」


 そう語り掛ける彼女の顔は、優しげな表情に変わっていた。それは天使のように柔和で、また悪魔のように強欲にもみえた。


「さぞ辛かったことだろう。我々にもキミの復讐について協力できることがある。だから、キミにも我々に協力して欲しいんだ。いや、協力してくれないか。」


 少女はいかにも優しげな表情で俺に問いかけた。俺はその言葉に抗うことが出来なかった。この“寓話”を引き合いにだされ、それを解決してくれるという彼女は、俺にとっては女神であり、如来であり、英雄であり、天使であった。それは余りに俺にとって喜ばしいことだったのである。


「ああ、……協力するよ……。」


 そう俺が言うと、彼女は何時もの不敵な笑顔を見せた。


「これでおあいこだな。……さて、キミを暫くの寝床に案内するよ。着いてきたまえ。」


 彼女は俺を先導して、二階にある一室まで連れて行った。階段を朦朧とした意識の中で一段一段踏みしめながら登り、あとは例の空中通路をつたって暫く進むと、質素な木のドアが現れた。


 彼女がそのドアを開け、俺もそれに続いた。中は小奇麗に整えられた寝具とデスクがあって暮らすのに申し分ないといえる程のものだった。


「あ、そうそう。これが例の建物の図面だ。ここに置いておくからね。宜しく頼むよ。」


 少女は部屋の隅に例の模造紙を置いて、立ち去っていった。


 一方の俺は部屋に入ってから何をしたのか余り記憶が無い。


 というのも「あの記憶」は俺にとってとてもつらいものだったからだ。あの記憶が呼び覚まされるたびに俺は冷静な心を失った。思い返してみれば、爆破工作がばれたのもそのせいであった。俺は爆弾を設置している途中に急にあの記憶を詳細に思い出してしまい、爆弾を隠す作業でミスを犯してしまった。恐らく乱雑に隠した爆弾のうちの一つが誰かに見つかって、高官たちは避難する隙を得たのだろうと思っている。


 そして今も俺は重大なミスを犯してしまった。彼女に協力をすると約束をしてしまったのだ。これは愚鈍な選択としか言いようの無い事だった。しかし、そもそもは彼女に助けてもらっているから生き長らえているのである。だから、「ある意味でこれは仕方の無いことなのだ」と自分を何とか説得しようとした。


 俺に優しく「助けてあげよう」と語りかけた彼女を見たとき、これは天の救いであるとすら思った。ふだんは宗教などとまっぴら関わり合いの無い俺が、そうな突拍子も無い考えを思いついたのは、殆ど狂っているからだったのだろう。そして、俺は彼女の中に悪魔か死神か、もしくはその双方の影を同時に見たのである。彼女に従ってはならない、と何かが俺にそう告げているような気がしたが、俺はそれを思い違いだと信じ込むしかなかった。


 ベッドに入ってなお、俺の苦悩は続いた。あまりに寝返りをうつので階下に部屋のある金髪女……つまり日野が怒鳴り込んできたという事も有った。その後、何とか俺は眠りに就いたが、やはり寝返りの振動がうるさいという事で日野が怒鳴り込んできて、俺はまたもや起きる事になってしまった。


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