傷~裏切られた友情~
なぜ、人は比べ合い、争うのでしょう。
人と人は平等。上下関係などないはずです。なのに人は簡単に争い、上下関係ができてしまいます。
いずれはエスカレートし、いじめなどに変わっていくのでしょう。
自分が何をした?嫌われるようなことをした?と思いながらもいじめられる人はなすすべなどありません。
単に、好きじゃないから。といじめていた人は簡単に言います。そのような事があってはいいのでしょうか…。
おや、こんなところに少し残酷な、現実じみたいじめの物語がありました。さぁ…。今日はこの物語をお話しましょうか…。
人を信用する。難しいことだ。昔、人にいじめられたことなど、人の良い印象などあまり見たことのない人にとってはそれはあまりにも難しい。過去の傷は深く、まだかさぶたにもならない人は多い。
そんな中で、一人は信用できる人ができる可能性がある。しかし、その人から裏切られたら人はどうなるのか。
私はその中の1人だ。
小学生の頃、人に散々いじめられてきた私は人を信用する気持ちがわからない。人に話しかけられてはパニック状態になり、少しからかわれれば過呼吸に襲われる。そんな私に優しく接してくれる人などいなかった。
中学生になっても、傷はまだ生々しい。人は単に怖く、近づくのにも私にはあまりにも難しすぎた。
そんな私を助けてくれた、中1で出来たたった一人の友達。名前は心優。
私のことをけして嫌な顔せず接してくれる。昔つけられたあだ名のような名前ではなく、ちゃんとした名前、楓華と。
心優のおかげでだいぶ人とも話せるようになった。やっと、私にも楽しい中学校生活が訪れるんだ…!と喜びながら楽しく、平和に中学校生活を送っていた。
先に不幸が待っているとも知らずに…。
心優と出会ってから半年が過ぎた。
もう、小学生の頃など振り返らなくなった。
「心優!一緒に移動教室いこ♪」「OK♪」「心優!楓華!一緒についてってもいい?」
「「もちろん!」」声を揃えて言う。
今はもう、クラスの人気者になっていた。
過去など見ない。現在だけを見よう。そう決心していた。
そんなある日。
私をいじめていた1人がクラスに度々来るようになった。いつもならすぐ気づくはずの楓華も、過去を思い出さないようにしていたため、気づくことはなかった。
そこが、悲劇の始まりだったのだ。
いつもの楽しい風景。優しい友達。温かく迎えてくれるクラス。
それを求めて私は学校に向かう。楽しみで楽しみで仕方がなかった。
クラスへつくと、何か、違和感がある。いつもならにぎやかなクラス。だけど今日は違う。妙に静かだ。
嫌な予感を胸に抱きながら、私はクラスに入る。
「みんなおはよう!」
いつもより明るく声をかけた。
みんなはいつも通りに返事を返してくれる。
何だ。気のせいだ。
心優が寄ってくる。
「楓華…。昼休み、空いてる?」
少し深刻そうな顔で聞いてきた。
「うん?空いてるよ?どうしたの?心優」
少し、不安になりながら私は聞いた。
「それが、聞きたくないかもだけど、楓華の小学生の頃クラスメイトだった子が…」
心優が喋り出す。
小学生。クラスメイト。
聞きたくない言葉が出てきた。過去を思い出したくない。また過去(あの時)と現在を重ねてしまう。
イヤだイヤだイヤだイヤだ…‼︎
「そっ…それで、その…クラス…メ…イトが呼び…出してる…の?」
苦し紛れに声を出す。
「そう…」
心優の言葉を聞いた後、私はまた過呼吸になった。みんなが不安げにこっちにやって来る。心優が心配げな表情で何かを言っている。
あぁ…。しっかりしなくちゃ。私はもう変わった。もう、過去なんて怖くない。
落ち着いた私は心優に言う。
「わかった。昼休み会いに行って来る」
すると、
「私もついていく」
心優が言った。
「心優…」
「だから、怖くないよ」
力強い言葉。心優が友達になってくれて良かった。心から心優に感謝する。心優は私のたった一人の大親友だ。
昼休み。
「よしっ!」
気合を入れて、元クラスメイトのもとへ。
もちろん心優も一緒だ。
もう、怖くなんてない。現在の私には仲間がいる。
約束の場所には、もう元クラスメイトはそこにいた。私をいじめていた首謀者までも。
それでも私はめげずに進む。
近くへ来ると、首謀者が喋り出す。
「あんた、友達ができたんだってね」
冷ややかな声。冷たい視線。
私は勇気をふりしぼって声を出す。
「うん。それで、何の用で呼び出してきたの?」
返ってきた言葉に私は耳を疑う。この言葉は、
「あんたみたいな奴に友達ができたんなら、面白いからあんたをまた地獄の底に落としてあげようかな。って」
という言葉だった。
「どういうこと?」
震えまじりの声で聞く。
「だから、最近暇になってきたから、あんたをまたいじめてあげようかな〜って♪」
楽しそうな声。しかしその目は笑っていない。
「っ…」
驚きのあまり声が出ない。そこに追い打ちをかけるように首謀者達は喋り出す。
「あんたに拒否権なんかないわよ?ね♪ゴミムシちゃん」
昔つけられたあだ名。ゴミムシ。ゴキブリ。ゴミ。細菌。
過去がよみがえってくる。まるで、今にも襲いかかろうとせんばかりに。
「断ってもいいけど。そしたら…」
ちらりと視線を心優に向ける。
心優は視線を向けられたとたん、びくっと体を震わせた。
「あんたの隣にいる子が大変な目にあうかもねぇw」
首謀者達はいかにも楽しくてしょうがないような感じで笑い出す。
心優を巻き込みたくない。
今の気持ちはそれだけだった。
「わかった。だけど、私の友達には手を出さないで。出したら許さない。約束して」
「楓華…!」
心配そうな心優の声
「大丈夫」
私は心優に笑顔で言った。
「約束は守ってあげるよ。でも、あんたに友達がいつまで居続けてくれるか楽しみだなw」
首謀者は面白そうに言う。
「心優。ありがとう。あなたは私のとても大事な友達だよ。だから、あなたを大変な目にあわせたくない。今までありがとう。もう、大丈夫。私はちゃんと耐えて見せるから」
とびきりの笑顔で心優に言う。
しかし、心優はまだ心配そうな顔をしている。
そんな私達の会話に飽きてきた首謀者達は私の事を引っ張ってさらに人の少ない場所に連れて行く。
「バイバイ…。心優…」
その言葉が大好きな心優に言った最後の言葉であった。
それからというもの私は毎日いじめに耐えてきた。徐々に私のもとに寄ってくる人は少なくなっていく。心優を除いて。心優は首謀者達の目を盗み、私の喋り相手となってくれた。
過去とは明らかな違いだった。
しかし、心優とずっと居れるわけではなかった。何よりもそれが辛かった。
悲しかった。何もできない自分に腹が立った。時は過ぎていく。
二年生になった。クラス替えで不幸にも首謀者達と一緒になった。
しかし、心優も一緒で唯一私はそれだけでだいぶ救われた。
いじめはエスカレートしていく。
二年生ではクラス全員が私をいじめてくるようになった。しかし、心優はいじめているふりをしていてくれていた。しかし、もう私の居場所はどこにもなかった。
ある日。
私は1人でいられる場所を求めて歩いていた。
すると。
声が聞こえてきた。不審に思い、私は声のする方へ向かう。
話して居たのは、首謀者達と心優だった。
「心優って芝居上手だよね〜w」
「そんなことないって!ゴミムシが信じやすいだけwバカみたいについてきてw」
「心優って悪〜wただ単に自分よりあいつが人気者になったからあいつをいじめて!なんてw」
「私が助けたのにあいつが人気者なるなんてありえないからwまた突き落としてあげようと思ってw」
「もう十分に突き落としたんじゃね?w」
「そんなことないって〜w小学生の時よりひどいのを味わせてあげないとw」
信じられなかった。信じていたのに。裏切られた。
信じたくなかった。心優が本当は今回の首謀者だなんて。
私は急激に衰弱していった。もう、誰も信用できなかった。人と喋ることはできても、人を信用することはなくなった。
いじめはどんどんエスカレートし始めた。
まるで、私にとどめを刺そうかというように。
心優がやって来る。
「あとで、校舎裏のトイレで待ってる」
その言葉を残して、去っていった。
休み時間になると、私は校舎裏のトイレへと向かった。最後の望みをかけて。
そこには、首謀者達と心優がいる。
いじわるそうな笑みを浮かべながら。
心優が喋り出す。
「簡単に騙されちゃって」
その言葉を聞いて、私は全てを受け入れた。信じたくなかった事実も受け入れた。
もう、どうにでもなれと思っていた。
「やっちゃって」
と心優が言う。
合図により、首謀者達が寄ってきた。
いとも簡単に私は縛り上げられる。
そして、トイレの個室に入れられ、身動きができぬよう手足を縛り付けられた。
今更助けを呼ぶ気もない。
冷ややかなな声が聞こえてきた。
「一日中ここにいなさい。明日になったら出してあげるwまぁ生きてればだけどwあんたのことだからすぐ自殺したりしてw」
「心優それほんとだったらマジ笑える〜w」
と言って心優達は帰っていった。
今はまだ3時間目に入ったばかりだ。何もすることもなく。動くことすらままならない。
「このまま心優が言った通り自殺してしまおうか」
死ねる方法はいくらでもあった。
そして、何より私に生きて欲しいと思ってくれている人がもういない。
生きている意味など私にはもうなかった。
死にたい…。生きている価値などなかったのだ。
最初から生きていて欲しいと思っている人などいなかったのだ。
私など必要なかったのだ。
「無様だなぁ…」
まるで吹っ切れたように微笑む。
これで最期だ。じゃあ少しだけスッキリしてから死のうかな。
私は大声で叫ぶ。
「心優!いじめってのはね‼︎いつか自分に返ってくんだよ‼︎‼︎私はあんたに心も体も!ボロボロにされて!もう生きる気持ちもないけど!死んでもあんたを一生許しはしない‼︎私の心の傷をどんどんえぐってきたあんたを!一生呪ってあげるよ!
もう‼︎生きる意味もないから私はここでサヨナラするから!あんたが死ぬまで楽しみにあの世で待ってるよ」
すごくスッキリした。もうやり残すことはない。さぁ、この世界にサヨナラしようか。
サヨナラ。私の人生。過去も現在も全部消えちゃえ。
全てに今終わりを告げるのだ。
思い切り、頭を地面に打ちつけようとしたその時…!
「ダメッ‼︎」
驚いた私は顔を上げる。
そこには、一人の女子が立っていた。
「あなたは?」
不審そうに私は聞く。
「あなたの声を聞いて走ってきたの。死んではダメよ。人生がもったいないわ」
「あなたに…っ何が…‼︎わかるのよっ‼︎ずっと一人で!存在すること自体を否定され続けた私の気持ちが…‼︎何も‼︎わからないくせに…っ!」
震えまじりに叫びだす。すると、女子はこう言った。
「わかるわ。私もそうだったもの」
悲しそうな顔でつぶやく。
しかし、今の私は人を信用などできなかった。
「うそよ。どうせ、また…」
「違うわ!私は嘘なんてつかない!つらかったでしょう?私もつらかった。二回も人に裏切られるなんて、本当死にたい気持ちもすごくわかる。
だけど、あなたは絶対に一人じゃないから。きっと、いや、絶対にあなたの味方はどこかにいるのよ。だから、死んではダメ。」
女子の言葉を聞いていると、少しずつ、力が抜けていった。しかし、まだその女子を本当に信用してはいなかった。
「あなたは…。私の、味方、なの?」
不審げに聞く。人を信用するのは怖かった。
「本当よ。私は嘘をつかない。つきたくないわ。もう、あなたや私のようなことを繰り返すのは嫌だから。」
その言葉を聞くと、私は大声で泣きはじめた。
「うわぁぁぁぁぁ‼︎怖かった…!もう、あんな目に遭いたくない‼︎‼︎やだよぉ‼︎‼︎ぁぁぁぁぁ…‼︎」
今まで耐えていた涙が全部流れ落ちてくる。つらかった。誰も一緒に居てくれようとはしてくれなかった日々がとてもつらかった。
まわりに人がいてくれなかったことが何よりもつらかった。
泣いている私を抱きしめて、女子は優しく私の背中を叩いてくれた。
「もう、我慢しなくて大丈夫。私がそばにいるから。」
しばらくして、泣き止んだ私は一緒にいてくれた女子と一緒に先生に全てを話した。
先生は少し驚いていたが私達の話を聞き、すぐに心優達から私を救ってくれた。
今日はもう帰りなさい。と言われ、帰りの支度をしていた私はふと、助けてくれた女子に聞いた。
「ところでさ。あなたは一体誰?」
ずっと気になっていた。助けてくれたこの人は一体何者なのだろうかと。
すると、女子はくすりと笑いながら答える。
「覚えていない?私はあなたが小学四年生の時、六年生で同じ部活をやっていたんだけれど。」
「あ…。もしかして、部活でいじめられていた…。水無月先輩ですか…?」
「当たりよ。そのいじめられていた水無月 華凛よ。」
思ってもいなかった事実に唖然とする。
「あの時、私はあなたのような日々を送っていたの。小学校で二回人に裏切られたわね。でも、中学校では私のことを理解してくれる人がいたのよ。それで、私は変われた」
先輩はすごく悲しそうな顔をしていたけれど、少しだけ懐かしむ顔でもあった。
「先輩にとって、それはもう、過去の嫌な思い出でしかないんですか?」
「そんなことはないわ。まだ、この傷はやっとかさぶたになってくれたぐらいね」
少し苦々しく先輩は言った。
その言葉を聞いて、私は不安げに聞く。
「私のこの傷も、治る日が来るでしょうか…?」
すると、先輩は励ますように言った。
「もちろん!絶対治る日が来る!まだ治らないかもしれないけど、いつか治る日が来るから!
そんな顔しないでまっすぐ前に進みな」
先輩のおかげで私は少し元気になれた。
「ありがとうございます。私も新しい友達を見つけて、ゆっくりとこの傷を治していきますね」
先輩は笑顔で、
「うん!頑張りな!あなたならきっと大丈夫!」
そう言ってくれた。
今、私は私の事をちゃんと理解してくれる友達を見つけ、楽しく毎日を過ごしている。
あそこで生きることを選んだのは間違えではなかったと、思えるようになった。
しかし、少し治ってきた傷はまだ生々しく、私を時々苦しめる。
また、次はこの人たちが私を裏切るのではないかと不安になる。
しかし、友達はいつも不安に思っている私を支えてくれる。
だから、もう平気なのだ。
治ってきた傷も、完全に治る日が来ると信じるようになった。
ここからが本当の私の人生のスタートだ。
これからの人生に何があろうとも友達と一緒ならば絶対に乗り越えられる。
もう、一人じゃないから。
こんないじめが現実あったら怖いですね。
しかし、この物語は現実に十分ありえます。もし、あなたがこんな目に遭ったら…。
考えるだけでも恐ろしいことです。
もしかしたら、案外近くにそんないじめは起こっているのかもしれません…。