魔法の杖
初めての投稿。
小学校の頃、よく意味不明な物語を書いていたんですが、大きくなった今、あの頃と同じ気持ちを取り戻したいという衝動に駆られまして…
思い浮かんだことをつなげて書きました。
ボクはギン、10歳で男だ。
今、夏休みで学校が休み。今回、ネットで"魔法の杖"とかいう、「どんな魔法も使えるらしい杖」というのが売りの、いかにもインチキそうな道具を買ったので、宿題の自由研究は、それの解明にしようと思う。今は、お届け時間待ちだ。今日のお昼に届くはずだ。
「…それまで、暇なのでテレビでも見に行こう」
ボクはテレビに近づきスイッチをオンした。すると、丁度、ニュースがやっていた。
『今入ったニュースをお伝えします。○○会社のトラックが何者かに襲われました。落ちていた伝票によれば、このトラックは"魔法の杖"というおもちゃ?を運んでおり、警察が駆けつけた頃には、強奪され、空っぽだったそうです。 通報した通りすがりの少年Gによりますと「なんか、危なそうだったから通報しました」ということです。そして、そのトラックの運転手も未だ行方不明のままです。――――』
これって、ボクが買った"魔法の杖"が積まれたトラック? もしこれが、本当ならかなりまずいぞ。自由研究ができないではないか!今から、話題を変えるにも今日は8月31日…明日は学校だ。間に合うわけがない。
その時、ボクはとってもいいことを思いついた。
「そうだ、魔法の杖を自分で取り返しにいこう。どうせ、犯人は近くにいるだろうし…」
すると、それを聞いたママが台所から"銀の短剣"と"まな板の盾"を取り出しボクに持たせた。
パパもボクに近づいてきて秘伝の薬"虫刺されのムイ"というキズぐすりをもたせてくれた。
今日は日曜日なので、ママとパパが家にいる。
「ギン、今のあなたは立派よ」
ママがこういった。
「ギン、とうとう父の意思を受け継ぎ、悪を撲滅する決意をしたんだな」
パパもボクを応援してくれる。おかげで最高のではじめが迎えられそうだ。
でも、ボクは「ちがう」というよ。
「ボクはボクの宿題のためにやるんだ」
ママとパパはボクを抱きしめてくれた。よく考えると、これがママとパパとの始めてのハグだったかもしれない。
すると、インターホンがなる。
ボクはそっと、トビラをあけた。
そこには、傷だらけの宅配便の格好をしたおじさんが腰に何かが包まれてるだろう包を抱えて立っていた。
「君がギンくんだね」
「はい」
おじさんは抱えていた包をボクに差し出した。
「これが、例の"魔法の杖"です。ハンコをお願いします」
「たしか、トラックは襲われて、コレは奪われたんじゃ…」
「ふふ、あいつら、見事、偽物にひかかってくれたよ」
ボクにはわかった、このおじさんはただものではないと。
でも、どうでもよかった、ボクは早速、包を破り捨て、"魔法の杖"をとりだした。感想は思ったより小さかった。
すると、おじさんは胸ポケットから、一枚の写真を取り出して微笑んだ。
「きみこ…、おじさんは…おとうさんは……頑張っただろ」
そう呟くと、おじさんは倒れた。
「おじさん」
ボクは理解した。このおじさんは襲われながらも、必死にボクにこの杖を届けようとしてくれたんだ。でも一体なぜ…なぜ、この人は…
その時、おじさんが力強く握り締めている写真が目に入った。そこには、若い男性と若い女性が写っていた。この男性はおじさんだとすぐに分かった。なにより、たおれる前に見せたあのスマイルと、その印象が一致したからだ。きっと、この女性はこのおじさんの彼女なんだ。そして、ボクは気づいた。おじさんは死んでいる。それも、全力を出して、今まで生きて。そして、もう後悔がないかのように…
ママとパパがボクに寄ってきた。
「この人はきっと、彼女のためにギンにそれを届けたのよ」
ママはいう
「大切な人との約束とはそういうものなんだよ」
パパが言った。
その時、ボクの中で何かが吹き飛んだ。ボクの中で、今まで眠っていた、気持ち。…そう、
「おじさん、待ってて…ボク………俺は絶対にあんたのかたきをうってやる」
俺は走り出した。
きっと、トラックを襲った奴らは、偽物に気づくはず。そうしたら、俺を…俺の持つ"魔法の杖"を狙ってやってくるはずだ。
だから、必ず、俺と一戦を交えることになる相手との戦いのために走る。被害を最小限に抑えるために走る。○○区、ここの区はある理由で人が住んでいない。その理由については深く分からないが、今の俺にとって好都合だ。
俺は広い空き地を発見して立ち止まった。何故なら、家をでたあの時から、付けられてる感じがしていたからだ。そして、その通りだった。
「そこまでだ」
「貴様がトラックを襲った奴だな」
「そのとおり」
身長が高く、声は低いだが仮面をつけているので性別は判断できない。
「狙いは"魔法の杖"か」
「出来れば、手荒な真似はしたくない」
「トラックの件で手荒な事したくせに……だから、お前は俺に手荒な真似をする!」
仮面は笑った。
「確かに、僕としたことが」
「お前は自分のやったことを認めるんだな」
「ああ、僕だけじゃないが、認めよう」
俺は、こいつが強いのがオーラで分かった。なんだろうか、おじさんの死を前にした時から、こういうのに感づきやすくなったかもしれない。まだ、初体験だが…
すると、やつは仮面に手をかけてゆっくりと取り外す。
その下の素顔に俺は後ずさった。
「相変わらず、僕の言葉の矛盾を発見するのが得意だなギン」
「お前は…藤原先生」
そう、仮面の下は、1年の頃の俺の担任だった藤原先生だった。確か、俺がやつの矛盾を発見し、俺の友達がそれをからかうという、遊びをして、それに耐えられずに心が折れて学校に来なくなった先生だ。まさか、こんなところで会おうとは…
「ギンくん………先生はね。先生は大学の頃、"早口言葉と英会話のジョーカー"と言うあだ名が付けられ、ろれつ回りが1000年に一度の天才とまで言われたチャンプだったのだよ」
「それが、一体どうしたんだ。俺は、たとえ先生であろうとも、倒す」
「あの時は世界が僕を軸にして回ってるような気がしてね、最高だった。優越感に浸っていたんだ」
こいつ、すっかり、過去に入り込んでやがる。今がやつを倒すチャンスか…
俺は距離を狭めていった。奴が俺の"銀の短剣"の間合いに入ったら仕留める。
「勿論、優秀な僕にはそれを妬む者がいたのさ。それは、僕の小学校時代からの友達だった…」
あと、20センチで奴を倒すことができる。そうすると、あとは警察に突き出して終わりだ。俺はまだガキだから銃刀法で何年も牢屋に入らなくてもいいだろう。もう少しで、敵が打てるぜ、おじさん。
「やつは僕を誘い出し毒を盛りやがった……気が付けば、この舌は凡人レベル…もう誰もついてこなかった…」
あと5ミリ
「僕はショックだったんだ。君に滑舌を…発音を指摘されるのは…例え6歳の子供でもな」
先生。これで終わりだーー。
俺は"銀の短剣"を振った。このスピードは並みの凡人の瞬発力では避けられない。グッバイ藤原先生。
「だから、僕は君に負けられないのだよ」
藤原先生は"銀の短剣"を握って受け止めた。しかも、すべてが、見えていたかのように瞬時の反応で。
「なんで」
俺は藤原先生の蹴りを腹に食らった。さすが大人の蹴りはガキの俺には耐えられないみたいだ。3メートルほど吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。その蹴りは圧倒的に俺のさっきの攻撃より早かった。
「ギン、君を殺してから、"魔法の杖"を奪うよ」
「勝てない、俺の持つ力、武器、薬をもってしても、到底及ばない。現状況では、どんなにパターンを計算しても、必ず俺は死ぬ…」
俺は死にたくない。おじさんの敵とか言ったけど、自分が死ぬならやめる。俺はまだ子供だ…勿論許されるよな?…ママとパパなら、許してくれる。そうだ、ニートになろう、一生ママとパパと一緒にいるんだ。そうすれば、ママとパパも喜ぶだろうし…。このまま、"魔法の杖"を早いところ渡して、そのまま、逃げてしまえばいいんだ。確か、藤原先生は走りが苦手だったはず。
「逃げようと考えるなよ。僕は、僕を落としめた全員に仕返しすることだけを誓って、ずっと鍛えてきたんだ、血反吐を吐いたよ………そして、今、その努力が実ろうとしている」
藤原先生が俺に近づいてくる。ゆっくりと歩いて迫ってるのに、俺には早く感じる。このままでは、手遅れになってしまう。なのに、俺の体は藤原先生のオーラで締め付けられてる感じがする。つまり、俺の体は恐怖を感じている。………いや、考え方を変えれば、藤原先生に味方しているのかもしれない。俺の心の中、どこかで、本当は藤原先生と仲良くなりたかったのかもしれない。
そして、俺は突然俺らの前から姿を消した藤原先生に対して思っていた気持ちが蘇った。これは、紛れもない友達になりたかったんだ。このまま、先生に殺されるのも、自分がそうさせたんだ。これは、自殺になるんだ。"魔法の杖"なんて、買った自分が悪かった。
「おじけづいたか………覚悟ができたんだな」
「ああ………」
先生は俺の"銀の短剣"を拾って俺に差し掛かってきた。
先生は、俺を殺したらどうするんだろう………次の標的を殺すのかな?
俺は目を瞑った。
鋒が俺の胸を貫こうとした瞬間、冷たさを感じた。
それ以上、何も感じない。きっと、俺は死んだのだ。
しかし、地獄ってところは本当に暗いところだなぁ。
「目を瞑ってるからかな」
俺は静かに目を開けた。
俺は尻餅をついてた。
俺の胸部に銀の短剣はない。しかし、そこには強い光を放っているあるものがあった。
俺は信じ難かった。それは、おじさんが命を張って、俺に届けてくれた物だ。
そこにあるのは"魔法の杖"
先生は目の前にいた。しかし、杖と同じく強い光を放っていた。
「先生。一体これはどういうことだ」
先生は微笑んだ。光は先生を削っている。どちらかというと、水が蒸発して水蒸気になっていくように、消えてゆく。
「僕の負けのようだ」
俺が勝ったのか…
「いや、こんなの勝ちじゃない」
「僕が君を殺したいという気持ちよりも遥かに、君の生き残りたいと思う気持ちが強かったんだ…」
そんな、馬鹿な…俺は、死を覚悟していた。
「ありえないとでもいうか?」
「当たり前だ、俺は先生に負けていた。俺は死を覚悟した」
「その道具"魔法の杖"はな、その杖に所有者であると認められると、どんな願いでも叶えることができるそうだ。ただし、同時に何個も叶えることができない。人間はな………心の奥底の考え、本能や外部からの洗脳も合わせると、数え切れないくらい考えてるんだ…9割以上忘れるが、その杖は全てを読み取る」
「それってつまり…」
「君の考えも本能も、全て同じことを考えた。だから、絶望してたなんてありえないんだ」
なぜだ?
「ああ、僕は貶めた者を全て殺したかった…っていったが、心の底では、何もできない自分が滅びればいいと、思ってたのかもな………いや、そうだからこそ、この魔法は発動した。僕のこの気持ちが、君を洗脳したんだ」
そう言うと、藤原先生は俺の前から、完全に消失した。おじさん、敵は打ったよ。でも、どうして、先生はこの杖を狙ったんだろう…
~自由研究~
『魔法の杖』
心の中にある全ての考えを一致させることによって、どんな願いも発動させます。
そして、杖は色んな人の思いで守られてきましたということを体験しました。
この杖のおかげで、懐かしい人に会うことができ、そして、自分が自分に慣れました。
そして、わかったことがあります。魔法の杖は同じ人に依存しないということです。
あの後、突如、僕の前から消えました。この研究のため、写真を撮ったすぐに光に包まれ、消失しました。きっと、何人もの人を回っているのだと思います。
それから、1年
あっ、消しゴム落ちてしまった。テスト中だから派手に動くとカンニングと思われるや…どうするか…
しょうがない、手を挙げるか。
「先生、消しゴム落ちた」
って言っても、先生の反応は無し…か。生徒にテストさせて、自分は居眠りかよ。どうする。
すると、誰かが俺の背後から消しゴムを拾って俺の机の上にのせてくれた。
「ありがとう」
「…」
その人は戻っていく。バレないように後ろを振り返ると何もなかったかのように静かだった。後ろ子はテストが終わって寝ていたので、そんなことができるはずがなかった。
でも、直ぐに誰が拾ってくれたのか直ぐにわかった。何故なら、消しゴムのかわりに、机の上に置かれていたものは………だったのだから。