明けない夜(2)
運命が変わったあの晩からはや3ヶ月。殿下はほぼ毎晩といっていいほど、私をベッドにひきずりこんだ。
殿下が夜会などで遅くなり今夜の呼び出しはなかろうと、ほくほくと一人寝を堪能していても寝込みを襲われた。
おかげで毎日昼頃まで起きることもできず、元女官仲間には白い目で見られた。
まぁ早起きしたところで、やる仕事もないんだけど。
「ニナ様、ベアトリーチェ様がおみえです」
取り次ぎの女官が告げる。
あぁ、先輩、口調がかたい。後輩の私なんかを「様」付けで呼びたくないよね。
気さくな優しかった先輩へ、気落ちしながら返答する。
「お通ししてください」
ほどなくして相変わらず美しいベアトリーチェ様が、優美な礼を取りながら入室してきた。
「ごきげんよう、ニナ様。お加減はいかが?」
ほがらかなベアトリーチェ様にこちらは苦笑しか返せない。
「ごきげんよう、ベアトリーチェ様。私のことはおいておいて・・・今日はどうなさいました?」
ベアトリーチェ様にソファを勧めると、ベアトリーチェ様は私に横に座るよう促した。
「殿下がご無理をしいてると、風に聞きましてお見舞いですわ。それから、これからのことについて」
これから、というワードにどきりとする。
ついに身の振り方が決まったのだろうか。
私としては、この関係は一時のこととして女官にもどれればベストなんだけど、やっぱり無理だよなぁ。
で、あればいい奉公先を紹介してくれるか、殿下からの下賜ってことで受け入れてくれる心の広い男性をみつけたか。とにかく、王宮をさっても生きてかなきゃいけないからね!
ドキドキしてベアトリーチェ様の言葉を待つ。
「殿下より、ニナ様にしかるべきお妃教育をとのことです。忙しくなりますわね」
「・・・えっ?・・・えぇ~!?」