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逃げ出した妃  作者: ひまわり
第2章
25/43

新天地(1)

「かあさまー、かあさまー!」

 幼いかわいらしい声が私を呼ぶ。

 遠目にも金色の髪がキラキラしているのがわかる。

「ここよー、リアムー!」

 私は洗濯物を干す手を休め、声をかける。

 子犬のように一目散に駆け寄ってくるかわいらしい女の子。瞳は殿下と同じきれいなきれいな青。髪の色も殿下の金髪。口元も殿下。

 もう見事に殿下のコピーのような容姿の我が子だ。

 しいて言うなら…耳の形が私に似てる、かな?

 まぁ、顔の造作が殿下に似たおかげで、親ばかながら、末が楽しみである。ベアトリーチェ様にも劣らない美女に育つだろう。

 そう、産まれた子は女の子だった。

 男の子だったら、さすがに王位継承権を持つ子供を私の一存で隠匿することもできないので、ベアトリーチェ様に相談してお任せしようかとも思ったけど、幸運なことに女の子だった。

 なので、産後落ち着いた頃にベアトリーチェ様には手紙を書いた。内容は、逃げ出した詫びと、子供は流れてしまったと嘘を書いた。殿下にもベアトリーチェ様にも合わす顔がないので探さないでくれとも。

 罪悪感で胸が痛んだが、私は娘と二人、幸せになると決めていた。

 そんな掌中の珠は今、腕の中で楽しそうに笑っている。

「あのね、あのね、変な虫いたー」

 リアムは興奮した様子で私に抱き付きながら報告してくる。

「どこにいたの?」

「ここー」

 満面の笑みで差し出してくる手の中には、見たたこともない黒くうごめく虫。

「ぎゃーっ」

 眼前に突然差し出されたそれに私は悲鳴を上げた。それにリアムは興奮した笑い声をあげるとまた走って行ってしまった。

 うぅ、ただでさえ虫は苦手なのに…。一瞬で跳ね上がった心拍数に胸をおさえる。

 そんな私をなだめるように、心地いい風が頬を撫でる。

 洗濯物が風に翻り、私は満ち足りた気持ちでそれを眺めた。



 あの後、シンシアさんの家から逃げ出した私は、乗合馬車に乗りソリッカの街までいった。

 そしてそこからさらに海沿いに馬車をいくつか乗継ぎ、今住んでいるチレンの村にたどり着いた。

 ソリッカの街まですぐに追ってがかかることは考えられたからね。

 一応ない頭を絞ったのだ。

 なぜこの村を選んだかというと、ここは修道院があるのだ。

 修道院は国の権力が及ばないことになっている。おまけにここ、チレンの修道院は女性の保護に力をいれているのだ。

 ここには、配偶者に苦しめられていた女性や親に売られそうになって逃げ出した少女など、様々な事情を抱えた女性が暮らしている。

 最初は皆傷ついているが、穏やかな気候や修道院の人たちのおかげで、やがて皆笑顔になっていく。

 そして、傷が癒えると修道院からの支援を受けながら自立していく。

 皆が自立して旅立っていく中、私はもう四年近くここにとどまっている。

 リアムがもう少し大きくなるまで、おいてもらえることになっているのだ。

 もちろんただで置いてもらうわけにもいかないので、修道院の下働きをしている。

「ニナー!そっちは終わったー?」

「は-い!」

 毎日なんだかんだと忙しいし、子育ても大変だったりするけど、それでも私は充実していた。   

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