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逃げ出した妃  作者: ひまわり
第一章
23/43

どうしたものか(2)

 決めれば話は早い。

 ちょうどよく動きやすい服も今日買ってきた。

 退職金のおかげで、手持ちの金も、一、二年働かなくてもどうにかなりそうなぐらいはある。

 問題はシンシアさんだ。

 どうやってシンシアさんをまくか。

 こうなってくると、ベアトリーチェ様のお屋敷からこちらに移ってたのも運が良かったのかも。

 ベアトリーチェ様のお屋敷じゃ、監視の目が多すぎて逃げきれるとは思えないもの。

 ここならシンシアさんさえどうにかすれば!

 そんな算段つけていると、扉がノックされシンシアさんが戻ってきた。

「ニナ様、スープ、お持ちしました」

 手のお盆には、美味しそうなスープが湯気をたて乗っている。

 見た途端、ぐーっとお腹が音を立てる。

 ここんとこやたらお腹が減ってたのも、妊娠してたからだったんだなぁ。

「食べれそうですね」

 シンシアさんは微笑むと、私をベッドに座らせたまま、食事の仕度を始めた。

「母によると、今が一番つわりの重い時期らしいです。大抵の人が、後一月もすれば楽になるそうですから。今無理するのはよくないそうですよ」

 その言葉に内心ギクリとする。

「体を冷やしたり、長い距離動いたり・・・。今日はすみませんでした」

 シンシアさんに急に頭を下げられ、焦る。

「そんな!」

「私が引っ張り回したりしたから・・・」

「シンシアさんは悪くないです!それを言うなら、自分の体のことなのにまったく気づかなかった私の方が、殿下やこの子に謝るべきです」

「ニナ様」

 お腹に手を当て話す私に、シンシアさんは瞳をうるませた。

 ?なんか泣くポイントあった?

「・・・私、失礼ながら、ニナ様は妊娠を望まれてないかと思ってました。でも、もうお顔が母親の顔になってます」

 シンシアさんは微笑みながら言う。

 母親の顔。

 脳裏に幼い頃に死に別れた母さまの、おぼろな姿を思い浮かべる。顔はあいにくはっきりしない。だって肖像画でしか見たことないのだ。しかも、お金がなかったからあんまり上手い画家に頼めなかったらしく、父さまは絵を見る度「母さまはこの百倍はきれいだったぞ」ってこぼしてたもんな・・・。

「こうなったら、一刻も早くベアトリーチェ様のもとに戻るべきだと思うんです」

 シンシアさんの言うとうり、普通ならそうすべきだよね。

 そして王宮に連絡とってもらって。

「ただ、ベアトリーチェ様に使いを出そうと思ったのですが、手のあいてる家人が捕まらないんです」

 チャーンス!!

 申し訳なさそうにしているシンシアさんには悪いけど、私は内心ガッツポーズだ。

「そうなんですか・・・」

 そんなことおくびにも出さず、心底困ったような声を出す。

「私もご相談があったんですが。帰りの馬車なんですが、あの寄り合い馬車はキツイんです。振動も激しいですし・・・。ベアトリーチェ様に迎えの馬車を寄越してもらうことはできないですか?」

「それはお願いすれば!というかしなくても、お子のことを告げればご本人がいらっしゃいそうですが」

 たしかに。その事態は容易に想像できる。

「私もこうなっては我が儘を通していられませんから。早く殿下にお会いしたいのですが」

「…わかりました!」

 できるだけ心細そうに見えるように呟くと、シンシアさんは意を決したように頷いた。

「明日の朝一で、私が馬で王都に戻ります!そうすれば夕方にはこちらに馬車を寄越せるでしょうから」

「ありがとうございます!!」

 私は心の底から、感謝の言葉を告げた。

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