どうしたものか(2)
決めれば話は早い。
ちょうどよく動きやすい服も今日買ってきた。
退職金のおかげで、手持ちの金も、一、二年働かなくてもどうにかなりそうなぐらいはある。
問題はシンシアさんだ。
どうやってシンシアさんをまくか。
こうなってくると、ベアトリーチェ様のお屋敷からこちらに移ってたのも運が良かったのかも。
ベアトリーチェ様のお屋敷じゃ、監視の目が多すぎて逃げきれるとは思えないもの。
ここならシンシアさんさえどうにかすれば!
そんな算段つけていると、扉がノックされシンシアさんが戻ってきた。
「ニナ様、スープ、お持ちしました」
手のお盆には、美味しそうなスープが湯気をたて乗っている。
見た途端、ぐーっとお腹が音を立てる。
ここんとこやたらお腹が減ってたのも、妊娠してたからだったんだなぁ。
「食べれそうですね」
シンシアさんは微笑むと、私をベッドに座らせたまま、食事の仕度を始めた。
「母によると、今が一番つわりの重い時期らしいです。大抵の人が、後一月もすれば楽になるそうですから。今無理するのはよくないそうですよ」
その言葉に内心ギクリとする。
「体を冷やしたり、長い距離動いたり・・・。今日はすみませんでした」
シンシアさんに急に頭を下げられ、焦る。
「そんな!」
「私が引っ張り回したりしたから・・・」
「シンシアさんは悪くないです!それを言うなら、自分の体のことなのにまったく気づかなかった私の方が、殿下やこの子に謝るべきです」
「ニナ様」
お腹に手を当て話す私に、シンシアさんは瞳をうるませた。
?なんか泣くポイントあった?
「・・・私、失礼ながら、ニナ様は妊娠を望まれてないかと思ってました。でも、もうお顔が母親の顔になってます」
シンシアさんは微笑みながら言う。
母親の顔。
脳裏に幼い頃に死に別れた母さまの、おぼろな姿を思い浮かべる。顔はあいにくはっきりしない。だって肖像画でしか見たことないのだ。しかも、お金がなかったからあんまり上手い画家に頼めなかったらしく、父さまは絵を見る度「母さまはこの百倍はきれいだったぞ」ってこぼしてたもんな・・・。
「こうなったら、一刻も早くベアトリーチェ様のもとに戻るべきだと思うんです」
シンシアさんの言うとうり、普通ならそうすべきだよね。
そして王宮に連絡とってもらって。
「ただ、ベアトリーチェ様に使いを出そうと思ったのですが、手のあいてる家人が捕まらないんです」
チャーンス!!
申し訳なさそうにしているシンシアさんには悪いけど、私は内心ガッツポーズだ。
「そうなんですか・・・」
そんなことおくびにも出さず、心底困ったような声を出す。
「私もご相談があったんですが。帰りの馬車なんですが、あの寄り合い馬車はキツイんです。振動も激しいですし・・・。ベアトリーチェ様に迎えの馬車を寄越してもらうことはできないですか?」
「それはお願いすれば!というかしなくても、お子のことを告げればご本人がいらっしゃいそうですが」
たしかに。その事態は容易に想像できる。
「私もこうなっては我が儘を通していられませんから。早く殿下にお会いしたいのですが」
「…わかりました!」
できるだけ心細そうに見えるように呟くと、シンシアさんは意を決したように頷いた。
「明日の朝一で、私が馬で王都に戻ります!そうすれば夕方にはこちらに馬車を寄越せるでしょうから」
「ありがとうございます!!」
私は心の底から、感謝の言葉を告げた。




