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逃げ出した妃  作者: ひまわり
第一章
20/43

まさかまさかの(1)

「おはようございます、ニナ様」

 カーテンをあけながらシンシアさんが言う。

 私はというと、夢に引きずられてか、目はあいたもののなんだかぼーっとしたまんま、動く気にならない。

 あの後、キースはなにやら仕事でミスしたとかで、辺境警備隊に異動になったのよね。

 殿下のおかげでふっきったとはいえ、やはり顔をあわせば気まずかったから、正直、異動と聞いて安堵した。

「ニナ様?」

 応えない私にシンシアさんはさらに声をかけてくる。

 私はやっと意識がはっきりしだした。

「おはようございます、シンシアさん」

 窓から見える庭の木々は朝日を受けて輝いていた。

「今日はもしよろしければ、朝食の後、市を見に行きませんか?ちょうど、月に一度の大市の日でとても賑わうんです」

「ぜひ!なんだか楽しそうです」


 おばさんのおいしい朝食を食べて、私たちはさっそく市にくり出した。

 シンシアさんの説明どおり、海の幸山の幸、この国の名産品から、周辺国の特産品、それに細々した生活用品が売られていた。

 こんな賑やかな場所は、お祭り以外ではじめてだ。

 色んな品々、それを商う多様な人々をみてると13歳で王宮にあがってから、とても狭い世界で生きてきたんだなぁと実感する。

「そうだ。前に頼まれていた動きやすい服!ここで買っていきましょうか?馴染みの店があるんです」

 そう言われ連れて行かれた店は、たしかにかわいくて手頃な服がいっぱいあった。

 以前シンシアさんに渡した二枚の銀貨で三着も買えた。

 他にも店を一通り見た頃には夕方になっていた。

 色々ほしくなってしまったけど、結局買ったのはベアトリーチェ様への心ばかりのお礼にと、日持ちのする、かわいらしい砂糖細工の菓子だけにした。

 体は疲れていたけど、久々に明るい気持ちで帰路を急ぐ。

 楽しくお喋りに興じていた私は、ふっと立ち眩みにみまわれた。

 体中の血が下がって、足元にたまってるみたい。

 ぐらんぐらん、世界が回る。

「あ・・・あら・・・?」

「ニナ様?」

「ごめんなさい、なんだか・・・ちょっと・・・」 

「ニナ様!」

 そして、悲鳴のようなシンシアさんの声を最後に私は意識を手放した。

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