どうしてこうなった?(2)
「わかったかい?」
はっとして意識を戻したときには殿下の話は終わっていた。
いけない。女官にあるまじき失態だ。しかたない、失礼極まりないことだが聞き直そう。そう思った矢先。
「あぁ、紹介が遅れたね。彼女は私の教師のベアトリーチェだ。今晩は彼女も同席するが我慢してくれ」
「はい?」
急にもう一人の女性を紹介され、慌てて礼を取る。ベアトリーチェ様も優雅に礼を返してくださる。
それにしても教師?殿下の専属教師にこんな方がいたなんて初耳だ。いったい何の教師だろう?
その優雅な振る舞いから明らかに高位の貴族とわかり、そしてなんていうか、とても色っぽい。
「はじめまして。あまり緊張なさらないで、楽になさってね。私のことは空気と思って、気になさらないで」
ベアトリーチェ様はそう言うと優しく微笑んでくださった。
「さて。夜は短い。さっそくはじめようか」
殿下はそう言うと、私の手を引き寝台にむかう。
ここでやっと私は声を出せた。
「あ、あの!殿下!大変失礼ながら、お話を聞き逃してしまいました!ご用はなんだったのでしょうか?」
なんだかいやな予感がどんどん強くなる。
殿下は私の言葉に一瞬押し黙ったが、やがて低い声で静かに宣言した。
「夜伽を命ずる」