殿下と私ー過去編ー(6)
ひとしきり殿下の肩を濡らした後、私は今度は恥ずかしさで顔が上げれなくなってしまった。
だって、三つも年下の少年相手に、みっともなく泣きすがってしまったのだ。
その間殿下は優しく私の頭を撫でてくださってた。
「ニナ。俺だったら、君を悲しませるようなことはしないよ」
確かに。殿下は私の身分なんて気にせず、後ろ盾がないからと他の女官と差別することもなかった。
「真に愛し合っていれば、身分なんてものはどうにでもなるんだ」
その言葉に、現に身分差に負けたばかりの身としては素直に頷けないけど。が、殿下が一生懸命励ましてくださってるのはわかるので、大人しく聞いておく。
「俺はニナが好きだよ。身分なんて関係ない」
なんてありがたいお言葉だろう!
それにしても、殿下はきっといい王様になるだろうなぁ。一介の女官の恋愛問題にこんなに親身になって、慰めてくださるんだから。
もう結婚なんてあきらめて、一生王宮で殿下にお仕えしていこうかな。うん、それもいいかも。
私はようやく殿下の肩から顔を上げた。
「ありがとうございます、殿下。私も殿下を心よりお慕いしています」
「ニナ!」
こんなお優しい主に仕えれて私は運が良かった。
今度は自然に微笑めてるはず。
「殿下、私をずっと殿下のお側においてくださいね」
ずっと頑張ってお仕えしますからね!




