殿下と私ー過去編ー(4)
シンシアさんの実家でたらふく美味しい料理を食べた夜。私はまた夢を見た。
今度も殿下との懐かしい思い出の夢。
夢の中で、私は十六歳、殿下は十三歳だった。
私は当時初めてできた恋人に浮かれていた。
相手は年上の近衛兵で、中位貴族の長男だった。際だった容姿ではないけれど、優しい目の優しい人だった。
「ニナ、キースと付き合ってるって本当?」
朝食後のお茶の時間、唐突に殿下に問われた。
あまりに唐突で目をぱちくりしてしまう。
「あぁ、やっぱり嘘だったんだね。ごめんね、噂で聞いて」
私の表情から勘違いだと思ったのだろう。殿下はにこにこしながら言った。
「いえ、キース・カルバン様とは、その、親しくさせていただいてます」
嘘はいけない。
私は慌てて殿下の勘違いを正した。
と、さっと殿下から表情が消えた。
「ふうん・・・いつからなの?」
「え?えっと・・・先週お気持ちをいただいて・・・」
私の話になんて興味あるのかしら?
不思議に思いながらも答える。
「キースが好きなの?」
直球で聞かれ、思わず赤面する。
「ま、まだお付き合いはじめたばかりで。正直よくわかりません。・・・でも、素敵な方だと思います。私なんかにも優しくしてくださって。きっともっと深く知れたらもっと好きになるかと」
「わかった、もういい!」
殿下にうっとうしそうに言われ、自分がのろけていたことに気づく。
「申し訳ありません。つまらないお話をお聞かせしてしまって・・・あの」
「今日はもういい、下がれ。浮かれているようだから頭を冷やせ」
ぴしゃりと言われ、私は返す言葉もなく退室した。




