新しい街(2)
シンシアさんは私を自室に案内してくれた。
普段帰らない娘の部屋は、それでも毎日掃除しているのだろう。埃一つなく、いつでも使えるようになっていた。
「どうぞ、おかけください」
勧められるままベッドに腰かける。
シンシアさんも並んで座った。
「では、確認ですが」
「はい」
「ニナ様は私のトリドでの同僚のということで。私の休暇に合わせ、こちらへ観光に来たということでよろしいですね?」
「ええ」
これは道々話し合った設定だ。
本当のことをシンシアさんの家族に話すわけにもいかないし。
「でも驚きましたね」
「え?」
「殿下ですよ」
その言葉に心臓がどきりと跳ねる。
「まさかご本人がいらっしゃるとは・・・。ベアトリーチェ様が陛下にお願いされて、陛下から殿下を説得していただくと約束をとりつけてくださったのに」
初耳だ。
ということは、私が妃にならないのは陛下も認めてるということなんだ!
ん?でも殿下が来たってことは?
「それだけ想われてらっしゃるんですよ。陛下の説得もきかないほどに」
いやいや、「想われてる」じゃなく「怒られてる」の間違いだから!
否定しかけたところで、玄関の方から声がかかった。
「誰かいるのー?・・・シンシア!?」
声とともに現れたのは恰幅のいい中年女性。おそらくシンシアさんのお母さんだ。
「あんた、帰るなら帰るって連絡でも」
そこでおばさんは私に気づいたようだ。
私は立ち上がり頭を下げる。
「ただいま、母さん。紹介するわ。こちら、私の同僚のニナ。トリドの方よ。初めてベアトリーチェ様にこちらに連れてこられて、色々見てみたいと言うから、帰省がてらご案内することになったの」
「はじめまして。ニナと申します。勝手にあがってしまって申し訳ありません」
「ああ、いえいえ、それはお気になさらず・・・シンシアの母のカーラです。遠いところをようこそ」
最初は呆気にとられていたようなおばさんだったが、気を取り直したのかはきはきした口調で挨拶を返してくれた。
「でね、たぶんそんなに長くいないけど、ニナもここに泊めてあげていい?」
「もちろん!あんたの同僚でしょう、大歓迎よ」
にこにこ笑うと胸を張った。
私もつられてにこにこしてしまう。
「ありがとうございます!ごやっかいになります」
「いいんだよ。自分の家のようにくつろいでくださいね。でもそんなに長くないって、休暇の期間はわかんないのかい?」
「ベアトリーチェ様がトリドに戻られる日が決まったら、それにあわせて私たちも戻ればいいの」
おばさんは納得すると、外から呼ばれて出て行った。なんだか忙しそうだなぁ。
「ニナ様、それで滞在中の部屋なんですが、ベアトリーチェ様からのお言いつけで私と同室に、ということなんです」
れいの3ヶ月経過するまで、という件のためだろう。
しっかり監視してもらわないと、潔白が証明されない。
「窮屈でしょうが・・・」
「いえ、こちらこそご迷惑おかけします。よろしくお願いします」
申し訳なさそうなシンシアさんに、私は頭を下げた。




