新しい街(1)
ベアトリーチェ様のお屋敷から抜け出てから、私たちは王都で寄り合い馬車に乗り、シンシアさんの故郷に向かっていた。
「大丈夫ですか、ニナ様」
「・・・はい・・・っぷ・・・!」
そして私はしっかり馬車酔いしていた。
おかしいなぁ、こんなに酔う体質じゃなかったんだけど・・・。
「緊張されておいででしたから・・・」
背中をさすられ慰められる。
「もうすぐ。この坂をのぼれば着きますから」
その言葉に、やっと終わりを見て少し楽になった。
やがて長い坂道が終わり、家々がちらほら見え始め、ついに街の入口の門が見えてきた。
シンシアさんの実家はこの町を拠点に貿易商をしているそうだ。
この町はちょうど、王都と海の中間地点にあり、また隣国へ抜ける街道にも近いことからなかなか賑わってる、ということを道々聞いた。
街の入口の門をくぐり抜け、馬車を降りると嘘みたいに気持ち悪いのが治った。
冷や汗がひいて、ほっと一息つく。
「大丈夫ですか?一休みしていきますか?」
「もう大丈夫です。・・・降りたらすごく楽になりました」
そして私たちはシンシアさんの実家に向かった。
シンシアさんの実家は大きかった。敷地にはいると荷の積み卸しをしている馬車が数台停まっている。
「あちらが御者などが休む小屋です。家はあちらです」
ご実家そのものは、敷地に対しては小さかった。
でも私の生家より手入れもされて立派だったけど。
「ちょっとお待ちくださいね。・・・父さーん!母さーん!いないのー?」
普段落ち着いた様子のシンシアさんの、のびやかな大声に思わず微笑む。
いいな、帰る場所があるのって。
振り返ったシンシアさんも、少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「いないようですので、上がっちゃいましょう」
「え、いいんですか?」
「はい。鍵もかかってないしすぐに戻るでしょうから」
シンシアさんは言うが早いか上がり込むと、私を手招きした。




