どうしてこうなった?(1)
青天の霹靂。まさにそうとしかいえない事態だった。
その日、私はもう入浴も終え、後は寝るばかりとゆったりとした時間を自室ですごしていた。
そこへ突然響くノックの音。めったにないことに驚いて扉を開ける。
「夜分に失礼いたします、ニナ・コルビッツ殿。シアン皇太子殿下がお呼びです」
厳つい甲冑を着た殿下付きの近衛兵が急を告げた。
急いで仕事着であるメイド服に着替え、近衛兵とともに主の元に向かう。
「殿下、ニナでございます。何がございましたか?」
扉を入りすぐに礼を取り室内を見やると、中には夜着に着替えくつろいだ様子のシアン殿下と、もう一人。やたら艶やかな女性がいた。
常にない時間での呼び出し。もちろん殿下付きの女官としておそばにいるのだから、いついかなる時もお呼びとあらば参上するのが仕事なのだけど・・・なんだかいやな予感がする。
不審に思って二人を見ていると、殿下がにこりと笑い私を手招きでそばへ呼ぶ。
「ニナ、こんな夜分に悪かったね。ちょっと頼みたいことがあって」
「いえ・・・殿下のご用とあれば・・・」
頼みというのはきっとこの女性に関わることなのだろう。
殿下ももう十六歳。きっとそういう仲のお相手なのだろうと勝手に想像する。
あぁ、あのお小さかった殿下が大人になったものね。私がお仕えしだした頃は、まだ幼さの残る少年だったのに・・・あれからもう六年たつのねぇ。私もいい加減いい人見つけなくちゃ。もう私も十九よ。本格的に嫁き遅れちゃう・・・
一瞬にして色々と感慨に耽ってしまった私は殿下の言葉を聞き逃した。