表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

7話

「うわ!」


ガードンさんと二人でしゃがみ込み、しんみりしていたところに第3者の声がした。

この声は暗殺士のサイさんだ。


ガードンさんの肩越しにアリさんとサイさんが見えた。

お酒を飲み終えたのが分かる赤い顔の2人。

サイさんは興味津々の顔、そしてなぜだかアリさんは眉をよせて眉間にしわをつくっていた。


すごい速さで私達のそばへ来たサイさんは興奮して嬉しそうにしゃべる。


「何々!これ何!告白か、告白したのか!ってことは三角関係始まっちゃうか~。

パーティー内でドロドロの昼ドラとか展開されたらどうすっか。うわ、超楽しみ!」


ああ、この人酔っ払ってるよ。


気づけばアリさんも傍まできていた。

私の顔をじっと見つめる。

「ディディア?」

あ、そういえば兜とったんだった。


確認をされなくても身につけている防具と胸元に抱えた兜から察してください。


私が頷くと、改めて状況を見直したアリさんは当然の疑問を口にする。


「二人して、何をしてるんだ。」


先ほどまでのことを説明しようと口を開いて固まる。

言ってもいいのだろうか。性転換したことを。


ガードンさんを見つめると、ゆっくり立ち上がり

私たちを見回すと、先ほど私に告白した内容と同じことを言う。


これにはさすがのサイさんもびっくりしたようで

何も言葉を発しなかった。



その後しばらく、私たちは意味のないことをぽつぽつとしゃべっていたが

サラディアさんが戻ってきたのでお風呂へ行こうという話になった。


もちろん、キラさんは駄目。

ガードンさんは遠慮する、と言った。


そんなガードンさんをサイさんは引っ張って、もう一度食堂に戻り、お酒をがんがん注文して

今夜は祭りじゃー!と叫んでいた。

なぜだか、サラディアさんとキラさんも巻き込まれ、その場にいた食堂のおっちゃんたちも

一緒になって酒盛りが始まってしまった。


お風呂に行くと言い切った私とアリさんは着替えを持って外に出る。

昼間に戦闘したのでお風呂には絶対に行きたかったのだ。

「アリさんもお酒よりお風呂をとりましたか。」

「さっき飲んだしな。体流したいし。」

ふと、アリさんが足を止める。


「あと、ディディア一人で夜道を歩かせるのは気分的に落ち着かないし。」

心配性だなあ。


こちらをじっと見たアリさんは不意にポツリと呟いた。

「俺ね。こっちに来て良かったって思ってる。・・・ゲームの時から来る事が出来たらって考えてたんだ。」



宿屋から数mしか進んでいなかったからか、中の騒ぎが外までもれ聞こえていた。

特にサイさんの歌うような楽しさいっぱいの声はよく聞こえる。



暗殺士のサイさんはこの世界に入りたいとゲーム中によく言ってたし

重剣士のガードンさんは先ほどこの世界に来て力が欲しかった、戦闘する技が欲しかったと言ってたし

魔法使いのサラディアさんもキャラクターの美貌が欲しかったと言っていた。

僧侶のキラさん本人からはこの世界に入りたかったとは直接聞いてはないけど

この分だとキラさんもこの世界に来たいと思っていたのではないかと勝手に推測している。


だって、私もここに来たかった。そう考えると全員このゲームの世界に来たい!って気持ちは同じでそれが今回この世界に来た原因のひとつではないかと考えたから。



キラさんの理由は分からないけど、アリさんの理由も分からない。


世界感?力?美貌?

・・・もしかして私と同じ理由?まさかそんな奇跡があるわけない。


私はゲーム中では基本ソロプレイという他人とあまりかかわることのないスタイルで遊んでいた。

人見知りで臆病だったからだ。

レベルを上げればパーティー用の難しいクエストでも一人で行けるだろうと無謀にも挑戦したところ

案の定、周りを敵に囲まれ手詰まりとなっていた所をヒーローのように助けてくれたのがアリさん。

それから、色々と手助けしてくれるようになり、少しずつ心を開くようになり

最終的には、会いたい。もっと話がしたい。と思うようになってしまった。


私の理由はアリさん、あなたに会いたかったからです。


「理由は・・。」


アリさんが私に一歩近づく。

この世界に来るという奇跡は1度起こったのだ。

だから、2度目もあっていいんじゃないでしょうか。神様お願いします!

そう心で祈りながら、アリさんが話し出す言葉を逃さないように私は耳を傾けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ