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6話

少しの間の後、落ち着いたサラディアさんを確認すると私は下の食堂へ誘った。

サラディアさんは少し赤くなった目で微笑む。

「うん。ありがとう。」


2人で下の食堂へ降りてみると、なんと皆が揃っていた。


皆が座っている4人用の席の隣にある2人用の机をくっつけて、そこへ私たちは座った。


暗殺士のサイさんは皆を見渡す。

「ようやく揃ったな。」


私の左側にキラさんが座っていたので手にずっと持っていた衣服を渡した。

「お。ありがと。胸の辺りがさ、きつかったんだよな。」

そう言うとその場で着替えようとしたので慌ててとめる。

「着替えるのなら部屋に戻って着てください!」


周りを見るよう手振りで促す。

夕飯時で混みだした食堂にはそこそこの人がいて、見目麗しい方々が揃った私たちの席をチラチラと盗み見ていた。


「あんた、女になったんだから色々気をつけなさいよ。襲われてもしらないから。」

サラディアさんははっきりものを言う人なので、こういった発言ができるようになったと思うと嬉しい。

徐々に調子を取り戻しているようだ。



「煩い。確かにお前より俺のほうが美人で襲われやすいからって言ってもだな」

「はぁ!?あんたはただ胸がでかいだけでしょ!」

サラディアさんはキラさんの豊満な胸を指差しながら怒鳴る。


「胸だけじゃない!この完璧な姿が目に入らないのか!?お前の目は節穴か!」

「金髪碧眼っていう色にだまされてるだけじゃない。あと胸のでかさでごまかしてるだけ。」

睨み合う二人。

私から見るとどちらも美人だ。

魔法使いのサラディアさんは腰まである長く青い髪に同色の青い大きな瞳。厚い唇ときらきらした瞳で可愛らしさを兼ね備えた美人さん。

対して僧侶のキラさんは色気漂う威圧感ある美人だ。

私の知らないところで何かきっかけがあったのか、誰かと話してすっきりしたのかキラさんもいつもの調子に近づいていた。


「すみませーん。このお勧めA定食1つ。」

「じゃあ俺は、B定食で。」

いつまでも続きそうな会話を無視して暗殺士のサイさんが注文すると、アリさんも便乗していた。


「あ、私は野菜炒めでお願いします。」

同じく便乗してみる。


「皆さんまだ注文してなかったんですね。」

先に座っていたので注文済みかと思ってた。


「ガードンが食べてるところに俺たちが座り込んで話してただけだから。」

微笑んで答えてくれたアリさんの言葉どおりガードンさんの目の前には肉料理が置いてあった。


「私達の報告はもう終わりましたか?」

「ああ。あとこいつの調査結果だけど。」


「獣人どこさがしてもいなくてさ~。つまんねぇの。」

サイさんは本当に羨ましい性格をしていらっしゃる。


「俺がこいつの動きを止めるから、ディディアは弓矢で息の根を止めてくれ。」

「分かりました。」


「おいおい。料理が運ばれてくるんだから席立つなって。あーもう、悪かった。ごめん。」

アリさんが剣を抜こうとしたところで、サイさんは素直に誤る。

料理も運ばれてきたので、私たちはおとなしく席へついた。


「でもさ、見回ってたおかげで色々発見できたんだぜ?」

例えば?とアリさんが促す。

「例えば、エロい店とか。こっちにもやっぱちゃんとあるんだなー。あと、風呂屋もあった。」

私とアリさんの視線が痛かったのか、最後はまともな情報を教えてくれた。


「いいですね!ご飯食べ終わったら皆でいきましょう!」

女だけでなく男も風呂に入りたいと思っていた様で、すぐに皆賛成の意を表した。


「俺、女風呂入っていいんだよな!?」

興奮した声を出すキラさんを見て私たちは沈黙する。


「男湯入れないなら女湯はいるしかないしな!おい、サラディアこんどは体で勝負しようぜ!」

指名されたサラディアさんは呆れて半眼でキラさんを見る。


「馬鹿いわないでよ。

ディディア、交代で見張りしましょ。一緒に入れないのは残念だけど男どもは信用できないからね。

ガードン悪いけど、ご飯食べたらこいつ部屋まで担いでくれない?」


ご飯を食べている間中、キラさんはサラディアさんを怒鳴ったり、説得しようとしたようだけど

すべて無視していた。


ガードンさんに担がれて部屋に運ばれるときなんか

女になった意味が無くなるだろ。頼む頼む。

と泣き落としに入っていた。


無事キラさんを部屋に閉じ込めたサラディアさんは腕をくんでキラさんをさらに絶望へと落とす言葉を吐く。

「私が先に行って、風呂屋の人に巨乳金髪碧眼の女が来たら入れないようにお金を渡して頼んでおくから。」


部屋の中から

鬼!悪魔!と叫ぶ声が聞こえる。


サラディアさんが行ってからも部屋の中からはすすり泣く声が聞こえた。

そこまで悲しむことなのだろうか・・。


そこでふと、私の横にぼーっと立ったままのガードンさんの存在に気づいた。


「ここはもう大丈夫なので、ガードンさんはお風呂に行ってください。」


と、私がそういっても動く気配はない。


「もしかして、アリさんとサイさん待ちですか?」

2人はお酒を飲んでいるため、まだ食堂だ。

でも、長くは飲みそうになかったしすぐにお風呂へ向かいそうな雰囲気だったかな。


それでも反応のないガードンさん。

下を向き固まったままだ。


不信に思ってガードンさんから少し離れて廊下に座り込む。


どのくらい時間がたったのか分からないけど、沈黙していたガードンさんがキョロキョロと周りを見回す。

この階には6つの部屋があり、私たちが占領している形になっている。

サラディアさんはお風呂に行ったし、アリさんとサイさんは下でお酒を飲んでいる。

残りのキラさんは衝立をしている部屋の中。

つまり、誰も通ることのない静かな廊下だった。



ガードンさんは私の目の前に来ると目線を合わせるようにしゃがみこんできた。

「なんでしょうか。」

まさか、ここで兜の中が見たいとか言い出すのだろうか。

そういえば昼食でサンドイッチを食べてるときに視線を感じていたな。

笑いものにしようという雰囲気がない今なら別にとってもかまわないけど。


「・・・兜を取ったほうがいいですか?」

私のほうからそう聞くと、少しの間の後、頷くガードンさん。

やっぱり見たかったのか!!


留め具をはずしてゆっくりと兜を取る。

朝からずっとかぶりっぱなしだったので久しぶりの直の空気は美味しかった。

ガードンさんのほうを向くと、こっちを凝視していたので

きめ顔を作ろうかどうしようか迷いながら結果ボケーっとした顔で向き合うこととなった。


まじまじと顔を見つめたガードンさんは大きくため息をつく。


うん。その反応になるだろうと分かってたけど。分かってたけどちょっと失礼じゃありませんかねガードンさん!?

肩までそろえた黒い髪に切れ長の黒い瞳。キャリアウーマンぽい女性をイメージして作ったのでがっかりするほど不細工とかネタ的な顔を

作ってないし、今は自分の顔でもあるのでため息はショックだ。


「女だ・・。」

え、そっち!?

ネタでキャラクターを作成する人は外見は男、声は女で作る人がいたからその可能性を考えていたのか。


「声も体も女性です。」

「そうか・・・。」

でもそうじゃないからって何故残念がるのだろう。


「もしかして、ガードンさん男が好きなんですか・・。」

おおっと。思っていたことがつい口から出てしまった。

ん?でも、色男ならサイさんもいるしアリさんもいる。


何も自分に標準を合わせなくても。

サイさんとアリさんにはなく自分にあるものといったら女性ぐらいの身長?

だとしたら、ガードンさんはショ・・。


「うん。男は好きだけど。」

やっぱり!!!


「ごめんなさい。男じゃなくて。」

「うん。って、きっとディディアさんは誤解してる。」

誤解?

「俺、じゃなく・・私、実は中身女なんだ。」


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


2人目の性転換者!


「ディディアさんが皆の前で兜を取らないのは、声だけ女で体は男で作ったからかと思ったんだ。

だとしたら、私と同じになるから気持ちを共有できるかと考えたんだけど。違ったか。」


「ご、ごめんなさい。気づいてあげられなくて。」

ガードンさんはゆっくり手を振る。

「言わないと分からないし、私も男として振舞ってたから仕方ない。」


「・・どうしましょうか。」

突然の告白に頭が混乱してうまく回らない。


「本当にどうしようかと困ってるんだ。

ゲーム中はこの力とスキルが手に入るならこのままここにいてもいいな、そうならないかなって思ってたんだけど。

本当に現実になってしまうとちょっと参るね。


男としての基本的なトイレとかの動作は大分なれたけど、

食べても食べてもお腹がすいて、どこまで制限すればいいのか分からないし。

いつもの調子で物を掴むとすぐに壊れそうになる。

まあ、どうしようもないから頑張るしかないけど。」


悲しみにくれていると思っていたらガードンさんは一人で戦っていたのか。

今まで気づかなくてごめんねという意味と生きる気力をなくしてなくてよかったありがとうという

意味を込めて両手でガードンさんの手を握る。ガードンさんも握り返してくれた。

私は装備を身につけていたままなのでグローブのまま握ってしまったけど

その上からでも分かるガードンさんの握力・・防具つけたままでよかったかも。

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