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1話

いつものようにネットゲームをプレイして、いつものように寝るはずだった。


それがなぜ、私は非現実世界(ゲームの世界)にいるのでしょうか!!??


**************


始まりはゲームのサイトトップに掲載されたイベント告知。

タイトルは確か”腕に自信のあるチームのみ参加せよ!”だったはず。


チームの構成は6人でLVは最高値の者のみ受付とのことだったので

高レベルのダンジョンに向かう際には大抵一緒にいた人達と組んでそのイベントに参加申し込みしたところ

なぜかゲームの世界にも入ってしまったという

意味がわからない状態になっている。



私の格好は頭がすっぽり隠れる厳つい兜に、上着は皮で出来た動きやすい服、下はズボンに膝まである皮で出来たブーツを履いている。

グローブもはめているため肌が出ている部分はどこにもないし、体の線が出ない服を着ているから外見からは分からないけど

黒髪黒目の平凡な顔立ちの女のキャラだ。


このキャラクターを作ったときのコンセプトは”厳ついものを着ているが実は女!”だ。


声は女の声なので実はも何もなくバレてしまうのだが、時たま、声は女で体は男というネタキャラをつくっている人もいるので、完璧にばれているわけではないと思いたい。

まあ女性が厳ついものを着ているのいいよね!って軽いのりで作っただけなので女であるということを隠したかったわけじゃないから別にいいんですけどね。


因みにこのキャラクターの職業は弓使い。

上から下まで鎧を着たかった私としては剣士や重剣士になればよかったのだけど

ギルドにも入らずクエストも基本一人で終わらせるスタイルが出来るようにと考えていたので、職業が限られてくる。

剣士や重剣士では探索スキルやそれに変わるスキルがなく一人で行動するには操作するもの自身のスキルが高くないと難しい。

限られた中で一番厳つい格好が出来るものとなったら弓使いだったのだ。


それでも高レベルになると一人の力では進めない難しいダンジョンがあり

その時は一緒に連れて行ってもらうパーティーが今回事件?に巻き込まれた仲間だったりする。



突然の異世界トリップに私たち6人はパニックに陥っていたのだけど

空が夕焼け色に変わり、お腹がすいた頃には表面上では落ち着きを取り戻していた。


「・・・ここで野宿は不味いから、いったん町へ行かないか?」

このパーティーを組んだとき何時もリーダーの役目を担う剣士が提案する。


この剣士の人は基本ソロプレイの私としては珍しく、よく話していた人でゲーム中では一番仲が良い。

まだ呆けた状態が続いているので、知り合いで、なおかつ誘導してくれる人がいることはとても有難かった。


「よっしゃ。じゃあサッサといくべ?でも、この荷物どうするよ。」

それに軽く答えたのは暗殺士の人。

この人は他のみんなと違い、この世界に来たことを素直に喜んだただ一人の人だ。

因みに剣士の人と暗殺士の人は同じギルドで、2人はかなり仲が良く、以前聞いた話ではリアルでの友達らしい。

先ほども仲良く2人だけで話し合いをしていた。

いや、話し合いというか、暗殺士の人が興奮して騒ぎ立てるのに剣士の人が突っ込みを入れたり怒ったりしていただけだが。


「えーと、金は絶対に持っていくとして、クエスト用のアイテムとかは置いていこう。

手に持ちきれないけど、絶対に持って行きたいものがある人は言ってくれ。」


ゲームの中では30種類の荷物をかばんに入れて持ち運ぶことができたけど

現実ではそうもいかないらしく、辺りにはゲームのキャラクターに持たせていた荷物が散らばっている。


ここから町に行くとなると、多少はモンスターに出会うことになる。

そうなると、弓使いである私は両手が開いていて身軽でないと戦えない。

つまり、お金と飲み物・食べ物・武器以外は置いていかないといけないのだ。


私はゆっくり立ち上がると、目の前に落ちていた弓と弓矢を一番に背負った。

弓を手に持った瞬間、不思議な感覚が広がる。

続けて右側に落ちていた1本の短剣を腰に挿し、人差し指ほどの針を30本拾って右のポケットに入れる。

お金を左のポケットに入れて、HP回復用の飲み物2本と食べ物2つを腰に下げた袋に入れた。


さて、私は準備万端だ。


剣士と暗殺士の人は持っていく物の重要度でもめているようだ。


この2人のほかには、重剣士(男)と魔法使い(女)、僧侶(女)がいて

重剣士の人はすでに荷物をまとめたらしく、大きな袋を横に置き、太い剣と重そうな盾を木に立てかけ、その前に座り込んでいる。


魔法使いの人はぶつぶつ独り言を言いながら、未だ何を持っていくかで迷っているらしい。


僧侶の人は・・・なぜだか私の目の前にいる。


「何でしょうか。」


「服をくれ!」


えーと。僧侶の人の服装は豊かな胸と細い綺麗な足を際どい所まで外に出していて布の面積が小さく寒そうだ。

まあ、寒さ以上に恥ずかしいだろうけど。

でも。

「可愛い服装なら、サラディアさんに譲ってもらったほうがいいんじゃないですか?それともサラディアさん、手持ちでは持っていなかったとか?」

「そうじゃなくて・・・!おれは・・・こんな・・・なりたかったんじゃなくて・・・うあーーー!!」

僧侶の人が手を顔に当て、膝をつく。

なんだなんだ。

心配してくれたのか、好奇心なのか、剣士・暗殺士・魔法使いの3人が揃ってこっちに来てくれた。


「あ、サラディアさん。キラキラマジックさんが服が欲しいとのことなので、譲ってあげてくれませんか?」

キラキラマジックさんとは僧侶の人のことで、彼女は人一倍おしゃれにうるさい。

ゲームのアップデートで新衣装が出るとチェックをして気に入ったものがあれば速攻手に入れているほどで

そんな彼女が満足するような可愛い衣装を私は持ち合わせていない。


その言葉と、この状況にサラディアさんと剣士の人と暗殺士の人は納得したようだ。

「ディディアちゃん。こいつ男だから、よければディディアちゃんのやつ、ズボンとか体が隠れるやつだから貸したげて?」

暗殺士の人が笑いをこらえながら言う。

因みにディディアとは私のこのキャラクターでの名前だ。


「俺とこいつの装備じゃあ合わないだろうし、サラディアの女っぽい服も着たくないんじゃねえの?」

暗殺士の人の言葉にキラキラさんは悔しそうにうなずく。


基本的に私は手荷物の中に余分な服は入れていない。

何時も入れている人はお洒落用の服を持っている人だろう。

でも、こっちの世界に来る前に反復クエストをしてモンスターを狩りまくっていたので

品物のレベルは低いけど売ってお金にしようと思っていたから、何点か装備品を拾って持っていた。


「それでは、えーと。これなんかどうでしょうか。」

周りをきょろきょろ見渡して、お目当てのものを拾い上げる。

私が今来ているものより少し生地が薄く、装飾品も少なく地味な上下の装備品。


「ありがとう。」

そう言ったキラキラさんは今来ている服の上に私の渡した服を急いで着た。

まあ、下着みたいな衣装だったからね。


しかし、異世界に来ただけでもどうしようって感じなのに、さらに性別まで変わるって・・。

顔を青くして下を向いている巨乳金髪碧眼の美人の中身が実は男とか・・。


「キラキラさん。ファイトです。」

「キラキラって言うな。」

同情して勇気付けたところ、睨みつきで返されました。


「では、なんと呼べば?」

「・・・タケシ・・いや、キラで・・。」

うん。タケシが本名なんだろうけど、その姿では無理があるからね。


「で。皆準備はできたか?」

剣士の人が中央に立ちみんなを集める。


「なあ。まじでこれ持って行こうぜ。絶対金になるから!俺めっちゃがんばって集めたんだぜこれ!」

暗殺士の人がピョンピョン跳ねながらこちらにアピールしてくる。

足元には拳大の宝石がキラキラ輝いていた。


「30個あるから、一人5個ノルマでどうよ。」

暗殺士の人の言葉に魔法使いのサラディアさんが反論する。


「無理。これ以上持てないから。」

サラディアさんの右手には自身の身長ほどの杖、左手には短剣。腰にはMP回復用の薬がずらりと並んでいた。


「短剣を腰に挿して宝石を袋に入れて左手に持ったらいけるんじゃね?」

サラディアさんは首を振る。

「無理。これ以上持ったら私途中で座り込むよ。」


暗殺士の人とサラディアさんがにらみ合ってると、今まで黙っていた重剣士の人が声をかけてきた。

「じゃあ、俺が持つ。」

左手に重そうな盾を持って、後ろに剣を付け、その上に大きな荷物をかけている状態でさらに持とうというのだろうか。


「この体だとまだまだ持てる。」

なんと。もしかして、ゲームのステータスがすべてこの身に反映されているのだろうか。


暗殺士の人が調子に乗って、30個すべての宝石を袋につめ重剣士の人に渡すと

苦もなく、ひょいっと肩に担いだ。


暗殺士の人でさえ引きずっていたというのに、恐るべし重剣士!

いや、そもそも暗殺士もそこまで体力なかったか。


とにかく、移動の準備ができた私たちは町のほうへ足を進める。ゲームの世界の地図と同じであるよう願いながら。

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