買い出しという名の冒険
「ユウ」
「嫌な予感がするから先に言っとくけど、却下な」
リンカは玄関で靴を履きながら、キラキラした目で振り返った。
「今日は一緒に買い出しに行くのだ」
「ほら来た」
「冒険なのだぞ!?街に出るのだ!」
「スーパーな。ダンジョンじゃなくて」
リンカはマント(ただのパーカー)を着た。
「ふふふ…….元魔王が街に降臨するのだ」
「不審者として通報されるからやめろ」
二人は並んで歩きながらスーパーへ向かった。
リンカはカートを押しながら、やたらテンションが高い。
「ユウ、見よ!この野菜コーナー!森より平和なのだ!」
「比較対象が物騒すぎる」
リンカはトマトを手に取った。
「これは……魔力を感じる!」
「これはただの特売シールだ」
リンカは驚きながら喋る。
「なに!?赤い札は危険の印ではないのか!?」
「むしろお得の印だ」
リンカは目を開いた
「人間の世界、怖すぎるのだ……」
次にリンカが向かったのはお菓子コーナー。
目が完全に宝箱を見つけた冒険者のそれだった。
「ユウ!!ダンジョンの最深部だ」
「お菓子売り場な」
「このチョコ……このポテチ……全部、私の配下にするのだ!」
「予算って言葉知ってる?」
リンカはカゴに山盛りでお菓子を入れた。
山。完全に山。
ユウは無言で一つずつ戻していく。
「なにをするのだあああ!!」
「家計を守ってるんだよ!」
レジ前。
カゴの中身は、野菜と肉と、何故か一袋だけのポテチ。
リンカは震えていた。
「私の軍勢が……」
「その一袋に感謝しろ」
帰り道。
リンカはそのポテチを抱きしめて言った。
「ユウは……鬼だ」
「元魔王に言われたくない」
こうして、
元魔王の買い出し冒険は、
勇者による予算管理という名の結界によって、
無事(?)終了したのであった。




