表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王城の前で立ち憚る父親になりたくて   作者: 玉名 くじら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/20

04 魔法


 アレックスは目を見開き、小さく呻きながら驚いた。

 まさかファンタジーのような魔法を目の当たりにしたからだ。

 「ちょ、か…母さん今のは?」

 「あんた本当にどうしちまったんだい? そんな不審なもんを見るような目をして」

 どうやら『母さん』呼びは間違っていなかったらしい。

 「あ、あぁ…。えっと、今のは?」

 「今のって魔法のことかい?」

 「そうそれ」

 「別に大したもんじゃないよ。ただ風を巻き起こして掃除する。それだけさ」

 アレックスの心はときめいた。まさかゲームや漫画で見た魔法が現実に存在するなんて。

 これは是非とも使ってみたいと思った。

 「それ、俺も使えるんか?」

 「使えるでしょう? なーに当たり前の事を聞いてるんだい! あ、もしかして部屋の掃除をサボったのはもしかして…」

 「え? あ、違うんだ。ちゃんとやるよ」

 「そうしておくれよ」

 慌てて取り繕う。下手に機嫌を損ねられて、根掘り葉掘り聞かれても面倒だと感じたからだ。

 「ところでさ、その魔法っての? もっと強いのってあるの?」

 「なんだい突然そんな事聞いて…。まぁ、そうだねぇ、小さい風を巻き起こす程度しか出来んよ」

 「え? そうなの」

 「そりゃあそうさ。大体そんな大きな風や火を起こしてどうするってんだい。危ないったらありゃしないじゃないか」

 それを聞いて愕然とした。

 どうやらゲームや漫画のような攻撃魔法みたいな派手なものは出来ないらしい。

 そもそも、それが自分みたいな平民だから出来ないのか、それとも母親があまり知らないのかによって今後の目標が変わる。

 「出せる人っていないの?」

 「…いないねぇ」

 「そんな便利なのに?」

 「これ以上必要かい?」

 「………そうだね」

 どうやら後者のようだった。返答に少し違和感があったが、恐らくあるのだろう。

 であれば、目標は出来た。少し生活の向上を目指しながら魔法を極めてやろうと。

 そう思うと、この世界も悪くないとアレックスは思ったのだった。


 さて、実際になんの魔法があるのかを、顔を引きつらせた母親から聞いた結果、四種類の魔法しか存在しない事が判明した。

 まず先ほどの『クリーン』、ただゴミをかき集める程度の風しか起こせず、体は綺麗に出来ないのだそうだ。それでなんで『クリーン』なのかは分からなかった。

 次に、『ライト』だ。これは光を灯すんじゃなくて、火を起こすものだ。指先にマッチ程度の火しか起こせないし、数秒程度しか持続できない。中途半端に不便だ。

 三つ目は、『カット』。文字通り切る事が出来るが、切れるのは髪の毛やヒゲ程度。肌に傷なんかつけられない。便利なんだか不便なんだかわかりゃしない。野菜すらきれず何が『カット』か。

 最後は期待もしなかった。『サイレント』。なんと、耳栓の代わりだそうだ。これで誰のいびきも聞かずに眠ることが出来る。……アホか! もっとマシなもんはないのかと。

 恐らく、母親の使えるものがこの四種類なのだろう。きっと他にもある。大体初級の水が出せるような魔法が無いのがおかしいのだ。

 もしかすると、魔法の名前も違う可能性がある。

 母親が使うときに頭に「えーっと」とつける事が多いからだ。

 であれば、当面の目標が出来た。他の魔法を調べる事とそれを習得する方法だ。


 早速街中に出て、そういう事を行ってる人がいないか見て回った。

 一応いるにはいたが、どれもこれも生活魔法というのすらおこがましい程しょぼかった。

 しかし他にも魔法はあるのだという事を知れたのは僥倖だった。

 早速人気の無い場所へ行き練習してみる。

 母親の出すのよりも威力が強かった。

 そんな時、人気の無い裏路地に入った事がよくなかったのだろう。

 いくつかの影が見えたので、振り返ると、いかにもといった顔つきの男が三人、ニタニタと汚い笑顔を浮かべていた。笑顔だけでなく全体的に汚かった。綺麗な部分を探す方が難しかった。

 「よぉ。こんな所でなにしてるんだぁ」

 「ひっひっひ。殺されたくなかったら金目のもん出しなぁ」

 「無いなら売り飛ばすだけだがよぉ」

 これは助かる。実験台にしても良心が咎めない絶好の悪漢だ。

 魔法とは想像力に依るところが多かったはずだ。

 だから、先ほどよりも強いイメージを持って魔法を使えばいい。

 頭の中に無数の鋭い刃を複数イメージして、両手を前に突き出し、声に出す。

 「カット」

 「なんだぁ…」

 「何をし…」

 「そんな事し…」

 男達が言い終わる前に魔法は発動し、気がつけばバラバラになった男達が目の前に散乱していた。

 「すごいなこれ」

 感慨に耽っていると、視界がぼやけ始めた。

 もしかしたら、『魔力』というものが枯渇しかけているのかもしれない。

 肉片には見向きもせずに、急ぎその場を立ち去り、家に戻りそのまま泥のように眠った。


 目がさめると、既に夜だった様だ。

 真っ暗な部屋では何もすることが出来ず、まだ身体に気だるさが残る為、そのまま再び眠りに落ちたのだった。


 翌日、目を覚まし、一階へ降りると、母親が深刻な表情でテーブルに肩肘を付き、頭を抑えていた。

 「おはよう。どうかした?」

 「あぁ、アレックス…。昨日はアンタ随分と早い時間から寝たんだね」

 「ちょっと疲れてね。ところで、どうしたの? そんな疲れた顔して」

 「あぁ、昨日ここいらで殺人があったらしくてね。いろいろと戸締りやらなんやらやっていてねぇ…。物騒だからアンタも気をつけなよ? 勝手にウロウロと裏路地に入ったりするんじゃないよ」

 その顔は心配する母親そのものだった。

 「分かってるよ。それにしても殺人なんて…。犯人捕まってないの?」

 「どうだろうねぇ。まぁ、素行のいい連中じゃないから…って、こんな話子供にするもんじゃないね」

 それ以降は何があったかは教えてくれなかった。

 それにしても殺人とは、異世界とはなんて物騒な世界なんだとアレックスは軽く憤った。

 そして、そんな世界でも強くあらねばならぬとある事を決意した。

 自分の思い描く未来の為にも…。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ