表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王城の前で立ち憚る父親になりたくて   作者: 玉名 くじら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

16 迷惑な話


     *     *     *


 「ちょっと待ってくれ」

 「何だ」

 魔王はありえないといった表情でアレックスを見る。

 「もしかしてそれしか伝えていないのか?」

 「十分だろう? 俺が魔王城の前にいる。それで伝わるはずだ。王に呼び出され、世界を旅して、最終的に魔王を斃す。それくらい常識だろう?」

 「常識なもんか。大体、魔法が使えるから魔族なんだ。なんなんだ君は。我々魔族を世界の敵みたいな言い方をして」

 「違うのか?」

 「当たり前だ。大体うちの国はいろんな国と貿易しているんだぞ。世界の敵みたいな国だったらありえないだろう?」

 「いや、同じ敵同士なら取引出来るだろ?」

 「それ本気で言ってるんか?」

 魔王はアレックスの目を見る。どうやら本当に嘘や酔狂で言っているわけではないと気づいて愕然とした。

 「ま…まぁいい。というかだね、そんな漠然とした言い方で、何を目的としているのか分からないのに、旅立つ理由がないだろう?」

 「それだけで分からないのか?」

 「君みたいに態々他国に喧嘩を売ったりするような気の違ってる奴なんていないよ」

 「おかしい。普通こういった世界では嬉々として人を殺したり人に殺されたりするのが普通だろう?」

 「物騒だな君は。確かに何十年も前はそうだったが、今は違う。辛うじて均衡を保っていたんだぞ? 何でそれを壊す必要がある?」

 「なぜってRPGなら当然の事だろう?」

 「あ、あーる…何だって? まぁ君がおかしいのは今に始まった事ではないか…。ところで、十五年も経って君の息子とやらもその代理の者も来ないのはおかしいと思わないのか?」

 呆れ顔の魔王がアレックスに一番の疑問をぶつけた。

 「確かに遅いな。…恐らくアイテムの入手に手こずっているのかもしれんな。ヒントもないし、攻略本もないしな」

 「………」

 突っ込むのを止めて、残った酒を一気に呷る魔王。

 「橋を作るのに三つのアイテムを合成しないと出来ないようにしたのがマズかっただろうか」

 「待ってくれ。あそこの海峡を変な風にしたのは君か! お陰で別の港の整備やらで大変だったんだぞ? 漁船もあの辺では漁が出来なくなくなるし」

 驚いてそのまま立ち上がり、声を荒げる魔王。自分の国で起こる異変に薄々感づいてはいたが、ついに抑えることが出来なくなってしまった。

 「そうだ。他にもどこかの塔や洞窟に隠したりと…」

 「もしかして他の国でもやらかしてるのか君は……」

 「バカを言うな。アレクサンダーの成長の為に心を鬼にしてやっているんだ」

 「………」

 鬼や悪魔の方が、どれだけ優しいだろうかと魔王は思った。

 そして、ただ魔王城の前を占拠するだけならまだしも、こうも躊躇なく問題を起こしているアレックスに殺意を覚えた魔王だったが、結局勝ち目がないなと、諦めて座りなおしたのだった。

 「はぁ…。ところで、本当に君の息子は来るのかい?」

 「あぁ。少し遅れてはいるがな」

 「少し…。……こう言っちゃなんだけど、もしかしたらどこかでのたれ死んでる可能性もあるんじゃないのかい?」

 一瞬アレックスの目に怒りの炎が見えたが、すぐに元に戻った。

 「それはない。アレクサンダーが死んだら分かるようになっているからな」

 「それは魔法か何かで?」

 「そうだ。あまり触らせてくれないものだから、生きているかどうかの判別魔法しか刻めなかったがな」

 他の家族の助けがなければ、とんだモンスターに変えられていたのかもしれないと魔王は思うのだった。

 「どこにいるのかも分からないのか?」

 「残念ながらな」

 それを聞いて魔王は一つ思いついた事を口にした。

 「一回、君の住んでいた街に戻ったらどうなんだ? もしかしたら何か分かるんじゃないか?」

 あわよくばこれでアレックスがあそこからいなくなるだろうと考えてもいた。

 「そうだな。確かにそうすべきではあったな。お前頭いいな」

 「はは…」

 自分に力があったら消し炭にしてやるところだと、不躾な物言いに内心非常に苛立っていた。

 だが、もう少しでお別れだ。いなくなったら、二度と戻ってこないようアレックスのいた国に抗議を出し、不法占拠された場所をいつけないようにしてやろうと考えていた。

 「よし。じゃあ行くぞ」

 「へ?」

 「なに間抜けな声を出しているんだ。お前も来るんだ」

 「どうして?」

 頭が理解に追いつかないと魔王は不審そうな顔で立ち上がったアレックスを見て、素直に疑問の声を漏らした。

 「ここまで話したんだ。もはや無関係ではないだろう? それに俺が話すよりお前が話をした方がスムーズにことが運ぶだろう?」

 「………」

 少しは周りが見えていることと、自分の立場を理解していることに魔王は驚いていた。

 そしてアレックスは、そんな魔王を気にするそぶりもなく、さっさと店を出ていってしまった。

 魔王は猫獣人の方を見ると、いつの間にか眠っていたので、代金をカウンターの上へ置き、そのまま猫獣人を放置してアレックスの後を追ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ