血も凍りつく氷の大公様に嫁ぐことになりました。炎魔法が得意な私が、凍れる彼を溶かしちゃおうと思います。
外は白一面の猛吹雪の中、室内では暖炉の明かりが揺れ、時折パチパチと薪を燃やす音を立てていた。王弟が住むとは思えないほど質素な応接室では、二人の男女が向かい合いソファーに腰を掛けていた。
一人はこの館の主であえるクーラー大公。見ているだけで凍てつくような鋭い眼光の美丈夫だ。その視線の先にちょこんと腰をかけているのが、王都から嫁いできた侯爵令嬢のフレア。クーラー大公とは対照的な、燃え盛る炎を思わせる髪をしていた。が、しかし、残念ながら、こちらの令嬢は愛嬌はあるが、お世辞にも美貌の持ち主とはいえない、十人並みの容姿だった。
「これは王家が勝手に決めた結婚だ。俺は何ら了承をしていない。悪いがあなたを愛することはない」
今、まさにノースランド王国の北の果て、ホワイトアウト領にあるクーラー大公の屋敷では、当のクーラーが、彼の元に嫁いできた侯爵家の令嬢、フレアに”白い結婚”を宣告していた。
ノースランド王国の北の要、魔王軍と睨みあうような立地にあるホワイトアウト領を治めるのは、現国王の弟クーラー大公であった。
約8年前、この地は魔王軍の四天王として知られるツンドラー冬将軍の侵攻を受けることとなった。激闘の末、若干20歳だったクーラーがツンドラーを北の大氷壁に封印して以来、彼はこの地に居を構え、再び訪れるかもしれない魔王軍の進軍に備えていた。
クーラー大公は王弟でありながら、その領地であるホワイトアウト領が王都から見ると辺境にあったことや、数年に及ぶ激烈な戦いの結果、ツンドラー将軍を封印したことから”冷血大公”の二つ名で知られていた。
そのクーラーも今年で28歳になるが、二つ名と領地の場所柄もあって、なかなか結婚相手を見つけられずにいた。といっても、本人も真剣に相手を探していたわけではないのだが。
王国の英雄である大公がいつまでも独身でいるのは体裁が悪い。王はついに、18歳以上で婚約者がいない貴族の令嬢たちの中から、クーラーの嫁探しを行うと発表した。
いくら英雄であり、王弟であったとしても相手はあの冷血大公である。しかも、嫁ぐからには辺境の地にして極寒の地、ホワイトアウト領での生活が待ち構えているのだ。快適な王都で暮らすご令嬢は、誰も嫁ぎたいとは思わない。しかし、王命に逆らうこともできない。令嬢たちの多くは多少妥協してでも急いで婚約者を探した。
そして、その流れに完全に乗り遅れてしまったのがホッティ侯爵家の三女フレアだった。王家は侯爵家に莫大な支度金を積み、フレアは辺境へと送られることになったのだった。
この結婚には、クーラー大公の意志は何一つ反映されていなかった。王命に従い、クーラーの妻となるべくここまで来たフレアは、クーラーに会うなり、この結婚は白い結婚となることを告げられたのだ。
「とはいっても、あなたも立場があるだろう。しばらくここに滞在したのち、俺が原因で離婚したことにするので、侯爵家へ戻るがいい。あるいは、離婚という傷を負いたくないならば、今すぐにここを立ち去ってくれ」
これがクーラーにできる最大限の譲歩である。
侯爵家の令嬢には、国王である兄が多額の支度金を払ったという。つまり、目の前にいる女――あるいはホッティ侯爵家――は、金目当てでノコノコ辺境の地までやってきたのだろう。クーラーにとっては、実に迷惑極まりない話でしかなかった。
フレアと名乗った令嬢は、思いがけないクーラーの言葉にきょとんとしている。白い結婚を選ぶのか、それともすぐに王都へ戻るのか考えているのだろうか。
フレアは、しばらくすると何かが合点がいったかのようにポンと手を打った。
「はっ、もしや、氷に閉ざされた、ホワイトアウト領なだけに、あいする(愛する)こともなく、白い結婚ということですか!? 合点しました!」
フレアは貴族の結婚市場で売れ残っていただけあって、炎魔法の使い手であるという事実以上に、かなり……いや、めちゃくちゃ暑苦しいご令嬢だった……。
「大公閣下、白い結婚のことは承知しました! ですが、こちらの結婚証明書にサインはしていただいてもよろしいでしょうか? クーラー様なだけにくうらん(空欄)ってわけにもいかないでしょう!」
フレアは持参した結婚証明書をヒラヒラと、クーラーの前にかざした。
「あっ、離婚はいちねん(一年)後ぐらいでいいですか? いちねん(一念)発起して、離婚に至ったってことにしましょう」
クーラー大公は、想像を超えた彼女の寒すぎるジョークの連打に、思わず身震いをしてしまう。
「あらっ、大公閣下、震えてらっしゃいますね。寒いですか? きた(北)の大地できた(鍛)えていらっしゃるでしょうに……。私、体温高め、つまりはHOTなので、温めて差し上げましょうか? 風邪を引いたら大変です。大公閣下をほっとけません! こうして手を握るだけでもほっとしませんか?」
(なんなんだ、この女は……!)
自分の地位や金目当てにこのような辺境まで嫁いできた女かと思いきや、なんだかそれだけではなさそうだ。白い結婚と言われても、ショックの一つも受けず、ニコニコしながら満足げに極寒の地もびっくりな寒すぎるギャグを連発するフレア。彼女の目的は一体何なのだ?
今まで女性に全く興味のなかったクーラーだが、このフレア嬢には強い関心を抱いてしまった。
フレアは広い屋敷の中の東側に部屋を与えられた。屋敷全体が寒くはあったが、それを除けば、それなりに豪華で快適な部屋だった。
朝、メイドが朝食を部屋に運んできた。冷たいシチューと氷のように固いパンだった。当然、嫌がらせである。王都からやってきた”大公夫人”という地位目当ての悪女に、痛い目をみせてやろうというのがメイドたちの共通認識だった。
フレアは、冷たいシチューと半分凍っているようなパンをみて固まった。そして、うつむきがちにつぶやくように尋ねた。
「あの、みなさんはいつもこのような食事をされているのですか?」
「もちろんでございます、大公夫人。ここは暖かな陽の光も届かぬような、吹雪が吹き荒れる極寒の地。パンもシチューもすぐに凍ってしまうのですよ」
もちろん、噓である。わざと冷めたものを持ってきているのだ。この嫌がらせに耐えかねて、とっとと王都に帰るといいわとメイドたちは思っているのだ。
「しょくじ(食事)がこんなに冷たいだなんて、しょっくじゃよ……」
なんかすごく寒い台詞が聞こえてきた気がするメイドたちは、我が耳を疑い、硬直した。
一方のフレアはというと、意を決したかのようにゆっくりと立ち上がった。
「見ていてください」
「はい?」
フレアはゆっくりと呪文を詠唱しだした。
「炎の精霊、サラマンダーよ。我が呼びかけに答え、我にその力を与えたまえ、ミニマムファイヤー!」
するとフレアの手から小さな炎があがる。フレアはその手でシチューとパンを温めた。メイドたちはそれを唖然とした様子で眺めていた。
「いただきます」
フレアは手を合わせると、スプーンを手に取ってシチューを一口、口に運んだ。
「うーん、やっぱりシチューは温かいほうがいいわ! 冷たいシチューを食べるだなんて、最悪すぎるシチュエーションだものね」
カチコチだったパンもふんわり柔らかくなり、手で簡単にちぎれるようになった。今度はそれをシチューに少し浸して食べた。
「ほら、パンだって温め直せばフワフワよ! これでなんのふあん(不安)も、ふまん(不満)もないと」
フレアは食事をあっという間に平らげると、再び手を合わせた。
「ごちそうさまでした。さあ、案内してくれないかしら?」
「ど、どちらにでしょうか?」
メイドたちはビビっていた。彼女はどこにいくというのか。もしや、クーラー大公に「食事が冷たい!」と訴えに行くのではないか……!
「あなたたちの食事がある場所へよ! 私が温めてあげるわ。私、暑苦しい女なだけあって、ほっとけないのよ」
「あ、いえ、私たちは結構ですので……」
「遠慮しないで! これくらいの魔法、全然らくしょう(楽勝)だから! あ、らくしよう(楽しよう)と思って手加減したわけじゃないからね。燃えちゃわないように手加減しただけだから!」
メイドたちの嫌がらせは、完全に失敗に終わった。
ホワイトアウト領はとにかく寒かった。城で働くものたちは皆、廊下などの屋内においても厚手のコートを着ていた。だが、温かい場所、いや、どちらかというと暑い場所からきたフレアは、厚手の服はおろか、半袖、ノースリーブのような薄着しかもっていなかった。
フレアは今日もベアトップのドレスを着ていた。肩に羽織る薄手のケープは持ってはいる。が、あえてフレアはそれを身に纏っていなかった。この寒さに耐えうる忍耐力を身に着けるとともに、身体を鍛えるためである。
「”心頭滅却すれば火もまた涼し”ならぬ、”心頭滅却すれば雪もまた暑し”よ」
フレアは念仏のように何やら唱えながら、薄着で城内の廊下を歩いていた。
鼻水を垂らしながら、薄着で廊下をうろつく大公夫人の姿に、メイドたちは心の底から恐怖した。もしかして、彼女は私たちに仕返しをしているのかもしれないと。
「あの、奥様、コートをお召しになってください。お風邪を引いてしまいます」
メイドの一人が城から支給されているコートを差し出した。
「コートなだけにおことわりしますわ」
フレアは華やかな王都から来た令嬢である。メイドが着るような野暮ったいコートは着たくないのかもしれない。メイドたちは相談して、先手を打って大公に訴えることにした。
「奥様がお寒いと思い、私たちが着ているコートをお勧めしたのですが、メイドが着ているようなコートはお召しになりたくないようでして……。大公閣下、このままでは奥方様が体調を崩されてしまいます。いかがいたしましょうか」
これで、仮にフレアが病気になったとしても自分たちのせいではなくなる。メイドたちはほっと胸をなでおろした。
大公はため息をつくと、自らのコートを持ってフレアのもとを訪れた。サイズは合わないが、メイドたちが着ているものより上等なものだ。当面これでしのいでもらい、その間にフレア用のコートを注文しようと思ったのだ。
「メイドたちの親切心が理解できないのか、お前は」
「何のことでしょうか?」
「彼女たちが勧めたコートを着ることを断ったそうじゃないか」
「大公閣下、もう一度おっしゃってください!」
「な、なんでだ?」
「か、彼女たちが勧めたコートを断ったそうだな」
「大公閣下、もう一度!」
「何が言いたいのだ!」
「言えばわかります。はい、コートを断る。さあどうぞ」
「…………もしや、コートをことわるというジョークのために断ったのか!?」
「まさか! 普通に己の精神と身体を鍛えるためですわ。心頭滅却すれば雪もまた暑しと思いまして」
「はあ……」
クーラーは深くため息をつくと、頭を抱え込んだ。
「あなたは普段、暑い領地で厚着をしているのか?」
「……いいえ」
「暑い場所で薄着をしている時点であなたの負けだ」
「!! 言われてみると……これは、大公閣下に一本取られました! 私の完敗です」
「では、大人しくコートを着ろ」
そういうとクーラーは持参した自分のコートをフレアに投げつけるように渡した。
「うわっ」
コートを受け取ったフレアは目を輝かせた。
「わお! ふわふわですね! なんだか着るのがもったいないです。もっとずっとぎゅっとしていたいです」
「それは、俺のものだ。お前のコートは新しく注文してやる。新しいものが届くまではそれを使え」
「えっ、それだと大公閣下がお寒いのでは?」
「俺は他にも持っているから問題ない。とにかく、早く着ろ」
「あっ、はい。合点承知です」
そういうと、フレアはクーラーの毛皮のコートに手を通した。随分とサイズが大きくぶかぶかだったものの、とても暖かかった。
「はあ、なんともあったかい(暖かい)です。まったかい(待った甲斐)がありました」
そうまでして駄洒落を言おうとするフレアの姿に、クーラーは思わずふっと笑ってしまった。笑った後で慌てて表情を引き締めた。
◇ ◇ ◇
ある時、大公は珍しくティータイムにフレアを招いた。城内では一番暖かい温室にテーブルをしつらえて、フレアのために甘味と軽食を並べた。
「本日はお誘いいただきありがとうございます」
フレアは珍しく丁寧にあいさつをした。
「まあ、かけてくれ。その後、生活面で支障はないか?」
「はい、おかげさまでつつがなく過ごしております」
今日は珍しくくだらない駄洒落を口にしない。貴族の令嬢が駄洒落を口にしないことが気になって仕方がないだなんて、俺もおかしくなったもんだと思うが、クーラーは表情を崩さなかった。
メイドが紅茶をティーカップに注ぎ、クーラーとフレアの前に差し出した。差し出された途端、フレアは慌てて紅茶を飲んだ。
「おいおい、熱いだろう? 大丈夫か?」
「はい、こうちゃ(紅茶)なだけにこおっちゃ(凍っちゃ)わないか心配で!」
「…………」
「クーラー様、おこうちゃ(お紅茶)を飲みながら、おこっちゃ(怒っちゃ)嫌ですわよ」
(もしかして、これを言うために最初は大人しくして、ずっと構えていたのか、この女は!?)
クーラーは呆れすぎて、すっかり肩の力が抜けてしまった。
その後も、フレアは顔を合わせるたびにくだらない駄洒落を口にしてきた。
「大公様、明後日のお天気、おわかりになりますか?」
「明後日?」
「はい、六日のお天気が気になるのです」
「まあ、雪だろうな」
「そうですか、となるとむいか(六日)もさむいか(寒いか)もしれないですね」
ある時は、フレアは厨房に顔をだす。昼の食事が終わった後の厨房は、使った後の調理道具などが雑然と置かれたままだった。
「お、奥方様、一体どのようなご用でしょうか?」
「キッチンはきちんと整理しませんと。いつもおいしいお食事を作ってもらっているお礼にお手伝いしますわ」
「そ、そのようなこと、奥方様にしていただかなくても」
「大丈夫よ! 私がこの水をお湯にするわ。お湯の方が油汚れも落ちやすいのよ」
ある雪の日、大公と城勤めの騎士たちは領地の巡回に行こうとしていた。すると大量の毛布を抱えたフレアがやってくる。
「もうふぶき(猛吹雪)の日にはもうふ(毛布)がぶき(武器)になりますので、皆さまぜひお持ちください」
こんな時にまで駄洒落を言わなくてもいいのにと思うクーラーと騎士たち。有難く毛布を持っていくことにした。しかも、フレアが持ってきた毛布は、彼女の情熱がこもっていたせいか、とても暖かかった。
このような感じで、気が付いたら、城の人間はみな、この夫人のくだらなすぎる駄洒落にHOTさせられ、篭絡されていた。
◇ ◇ ◇
ここのところホワイトアウト領の吹雪は落ち着き、久々に陽の光も差し込んでいた。子どもたちは街の広場で雪合戦をして遊んでいた。ここで楽しめる、数少ない娯楽の一つである。
大公夫人であるフレアも、今日は街にでて、人々で賑わう様子を見ながら歩いていた。すると、子どもの投げた雪玉がフレアに当たってしまう。
「た、大公夫人! ごめんなさい」
「奥様、おけが(お怪我)はありませんか?」
雪玉をぶつけてしまった子どもが謝ってきた。同行していたメイドも心配してくれる。
「ちょっとたまげたわ。あたま(頭)にかた(固)まったたま(球)が当たったら、たまったもんではないでしょうが、たまたま、かた(肩)というか、からだ(身体)だから大丈夫。おけ(桶)がなくても、大丈夫。OKよ。ちなみに、このジョークにくじょー(苦情)は受け付けません!」
回文まで入れた、駄洒落てんこ盛りのジョークはそうそう作れない。なかなか会心のできだったと自画自賛するフレア。子どもたちも尊敬のまなざしをフレアに向けた。こうしてフレアのくだらないがなんかすごいジョークに対する情熱は、領民の心もつかんでいった。
◇ ◇ ◇
その日の夕刻、急に吹雪がひどくなった中を、城まで尋ねてきた領民たちの姿があった。彼らの子どもたちが、昼間森に遊びに行ってからまだ戻っていないというのだ。この吹雪の中、森に足を踏み入れるのは、二次災害の危険もある自殺行為である。しかし、領民の子どもを見捨てるわけにもいかない。
フレアは領民たちに尋ねた。
「お子さんたちは森のどのあたりにいるのか、心あたり(当たり)はありますか?」
「このようなときにジョークを飛ばしている場合ではない!」
「ジョークではありません。場所が分かるのであれば、そこに迎えに行けばいいだけのこと。私はこう見えても炎の魔法が使えます。吹雪の中でも松明を灯せますし、炎で雪を解かすことも、凍える子どもたちを温めることもできます。どうか、私をお連れ下さい」
領民たちの話によると、子どもの遊び場になっている場所が森の中にあるようだった。大木が倒れて、内部が腐り空洞になり、まるで洞窟のようになっている場所があるのだ。子どもたちはそこにいるのではないかとのことだった。洞窟のような場所であれば、多少はこの吹雪もしのげるだろう。
クーラー大公とフレア、案内役の子どもたちの父親3名と、城の騎士5名の10人で、吹雪が荒れ狂う森へと向かった。ホワイトアウト領の名に相応しい、視界の利かない吹雪の中だったが、フレアの炎魔法のおかげで一行は思いのほか順調に進むことができた。
4人の子どもたちは案の定、洞窟状の切り株の中で、身を寄せ合って震えていた。親の顔を見て安心して泣き出す子どもたち。
「こどもどこ?」
「えっ、目の前にいるではないですか?」
フレアの妙な質問に一人の騎士が答えた後で、彼はハッとした。まさかの回文、つまりはお得意のジョークだ!
「まあ、無事に見つかって本当によかったわ!」
言いたいことを言ったフレアは、子どもたちの手足を炎魔法で温めながら続けた。
「ほらあな(洞穴)の中は怖かったでしょう。ホラーなだけに」
フレアのくだらない駄洒落に気が付いた子どもたちは、一斉に笑い出した。一番小さな子どもだけは訳が分からずにきょとんとしていたが。
「さあ、みんなで城に戻りましょう。あー寒いわ、アッサムティーが飲みたいわ」
こうして子どもたちは無事に救出されることとなった。
「お前のおかげで子どもたちを救い出すことができた、礼を言う。それから、最初にお前に言ったことだが、すまない。忘れてほしい」
「最初と言いますと?」
「お前を愛することはないから、しばらくしたら侯爵家へ戻れと言ったことだ」
「白い結婚のことでしょうか?」
「そうだ」
「つまり、白い結婚を白紙に戻すと?」
「……そうだ」
「クーラー様は私とくらく(苦楽)を共にしたいと?」
「そ、そうだ」
「私、フレアともっとふれあ(触れ合)いたいと?」
「……はあ、お前は何でも駄洒落にしてしまうんだな」
少し照れながら、クーラーはフレアを強く抱きしめた。フレアの身体は、彼女のお寒い駄洒落と真逆で、とても温かかった。
「不思議だな。お前の駄洒落は寒くて敵わんのに、お前とだったら、このごくかん(極寒)の地でも暖かく過ごせそうだ」
「そんなのしごくかんたん(至極簡単)なことですわ。なんせ私は雪をも解かす炎魔法が得意ですので!」
フレアの使う”炎魔法”とは、寒すぎて暑苦しいこの駄洒落そのものなのかもしれない。
読んでくださりありがとうございました。
お気に召してもらえましたら、評価などいただけると幸いです。
また、筆者は、他短編、長編執筆中です。
お時間ありましたら、そちらもよろしくお願いいたします。




