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レストラン ミルティユ〜あなたのための一皿を〜  作者:


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11/14

第11話 それでも、ここで

神崎の問いは、

 その夜のミルティユに、重く残った。


「……続けるさ」

 蒼井は静かに言った。

「必要とされる限り」


「必要とされなくなったら?」


「それでも、料理は残ります」


 神崎はしばらく黙り込んだ。


「……俺はな」

 ぽつりとこぼす。

「店を潰した。

 客の“不幸”を背負いきれなかった」


 厨房の奥で、玲花がそっと手を止める。


「救えると思った。

 料理で、人を。

 ……でも現実は、そんなに甘くなかった」


 神崎は顔を上げ、蒼井を見る。


「お前は違うのか?」


 蒼井は、少し考えてから答えた。


「同じです」


「……え?」


「私も、全員は救えません。

 でも――」


 蒼井は、店内を見渡した。

 今夜も、静かに料理を待つ客たち。


「救えた“その一晩”が、

 誰かの次の日を支えるなら、それでいい」



 最後に出された料理は、

 かつて二人で考えた、未完成の一皿だった。


「……覚えてたのか」


「忘れられませんでした」


 神崎はゆっくりと食べ、深く息を吐いた。


「負けたよ、透。

 いや……負けでいい」


 立ち上がり、頭を下げる。


「この店、続けろ。

 俺が出来なかったやり方で」


 神崎は扉の前で振り返った。


「……いい仲間を持ったな」


 蒼井は、初めて少しだけ笑った。



 夜が終わり、厨房で全員が集まる。


「過去の人?」

 アレックスが聞く。


「はい。

 でも――」


 蒼井は皆を見る。


「今のこの店を、

 一番肯定してくれた人でもあります」


 ミルティユは今日も灯りを落とす。

 救えなかった過去も、

 迷い続ける未来も抱えながら。


 それでも――

 明日も、誰かのための一皿を作るために。


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