表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

6話 タルローの森4



「これは、なかなか酷いな。」


タルローの森北部。辺りの中低木は焦げ落ち、冷たい空気には微かに灰の匂いが混じる。


「見ただけで4箇所、幸いなことに広がっちゃいないが…。」


困ったようにガイは水色の髪頭を掻く。


ここにくるまでにも、いくつか、足元の焦げ跡を見つけていた。


「…どこも同じような焼け方だわ。同一犯でしょうね。」



「人為的なものにしては頻発かつ小規模、何かの魔物かしら。」



「風が日に日に冷たくなってます。放っておけば大きな火災につながるかも。」



夢幻の巣を抜けてから、魔物との遭遇が増えている。森の中、静かに、しかし確実に生き物たちは動き、その時に備えているようだ。



「どこも火元は地面の方だ。魔物なら小型だろうな。」



地面を見やれば、不穏な風が足元を通り抜けた気がした。



―ガサガサッー



パッと音のした方に一同が注意を向ける。緊張感が走り、誰かの息をのむ声が聞こえた。





「――、すまない。邪魔をしたようだ。」



肩で切りそろえられた黒い髪、大渕の丸眼鏡の奥、ばつが悪そうに細められた瞳。音の先にいたのは、美青年だった。


「いや、こちらこそすまなかったな。別にアンタに敵意を向けたかったわけじゃないんだ。」

ガイがパッと空気を入れ替え、先方に謝罪する。六人の冒険者から、一斉に警戒されれば、普通の人であれば恐怖を感じても仕方がない。



「私はアペレス、学者をしている。」



しかし、美青年 アペレスは予想に反し、あっけからんと身分を明かす。質のよさそうな黒い衣服は、全て緻密な金の刺繡が施されている。高い身分なのかもしれない。



「アペレスさん、今この森でフィールドワークはやめておいた方がいいわ。いたるところで火災が起きているから。」



「む、私がここから南東の街から来た時は特に異常はなさそうだったが。」



アペレスは形の眉を寄せ、怪訝そうにする。彼がそうのも無理はない、



「俺たちと同じ方向からだな。あそこらへんは夢幻の巣があったんだ、そこにほとんどの魔物は引っかかったんだよ。」



「このあたりの森で夢幻の巣か、珍しいな。あの蜘蛛は大きいからな。もっと年中鬱蒼とした環境に多い。」



見開かれる黒曜の瞳。



「確かにこの辺りはの木は落葉が多いものね。でも今回の個体は縮小スキルを持っていたのよ。」



「なんだと?興味深いな。それならば、渡ってきたのか。この辺りで生態系として組み込まれているならなお面白いが。」



「スキルと血縁の相関関係の報告例もあるものね、あり得ない話ではないわ。特に人間より魔物に顕著みたいだから。」



「ああ、それは昔から言われているな。諸説あるが、私としては悪くない見立てだと考えている。」



ベラとアペレスの学者談議に花が咲く。ベラは俺たちのところに来る前は研究者であったようだから、どこか通ずるものがあるのだろう。



「おい、そろそろ行くぞ。あんま時間がねえ。」



レオが声を発する。確かにあまりもたもたしてもいられないのだ。この辺りの焼け跡はまだ新しい。




「あら残念ね、しょうがないわ。アペレスさん、そろそろ行くわね。」



「ああ、火災の件承知した。最近はフィールドワークが多いんだ。また会ったらよろしく頼む。


あなた方を、ティエラルボールの星屑が導くだろう。」




かつてアカデミーで耳にした、古い祈りが、美しい発音とともに俺たちに残された。











―あれから半刻ほど。



「いやあぁぁあああ!何よ、こいつう!」



俺たちは、火の雨に降られている。



「ベラっ、援護はとりあえず後回しで、周囲の水膜を広げろっ。」



レオの掛け声とともに、戦闘域の水膜が広がる。これがなきゃさらに火災区域は広がるだろう。



「テンッ、こんな単調な攻撃くらい、スキルで何とかして見せなさいよっ。」



「やってんだが、攻撃速度が速すぎるっ。」



―ぷるるんっー



俺たちの目の前、燃え盛る球体。「炎スライム」が火球と共に跳ね回っていた。



「いくら炎スライムと言えど、マジックスライムではないわ。こんなに無尽蔵では打てっこないっ。」



炎スライムは、耐火性と炎魔法が得意なだけのスライムのはずなのだ。



「俺もわかんねえよっ。」



話している間にも、焼け落ちた木々俺たちを襲う。



「速度と治癒に集中します!攻撃の前にはご指示をっ。」



「耐火の秘薬は持ってあと30分よ、急いで!」



フルフルと絶え間なく揺れる小さな体、マナが尽きる気配はない。




「……マジックスライムほどではないと言えど、スライムはマナ親和性が高い種族…。」


マナ親和性とは、外界のマナを体内に取り込む力だ。



「ーーおいテン、またかよ……。ボサッとすんな。」



レオが渋々、自身に降りかかる火の粉を剣で排したのが分かった。あと少しで、何かが分かる気がするのだ。




あたりを見渡せば焼け落ちる木々、むせかえるような熱気が渦巻き、秘薬がなければ、肺は焼き切れているだろう。





「……そうだ、ベラ。」





水膜を必死に維持する彼女が目に入る。彼女のスキルなら――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ