表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/8

プロローグ



 夕日色に染まる道場。どこか現実味を帯びない輪郭線。それだというのに自身の心臓は激しく波打っている。


『――、――きまりなんだ』


 厳かな声。体の芯から冷えていって――










「――い、―おい、起きろって。」


 なじみのある声にはっとする。明るい方を反射的にむけば、宿屋の窓から朝日が差していた。


「おい、いい加減に起きろよ。もう朝市が始まっちまう。明日には街を発つんだから、早く買い出し行くぞ。」


 声の方を向けば幼馴染の声。その表情から、自身が結構な寝坊をしたことを察した。



「悪い、なんか変な夢見てたんだ。すぐ準備するから先行っててくれ。」



「おう、下の食堂で飯食ってるからな。」



 夢の内容に言及されることもなく、さっぱりとした返答が返ってくる。こいつのこういうところが居心地良い。



「それなら俺の分も頼む、食いながら行く。」




 全くと悪態をつきながら、幼馴染は部屋を出ていく。多分買っておいてくれるだろう。仕方がないからあとから何か奢ってやることにしよう。







 準備をするために宿屋に置かれた、小さな鏡の前に立つ。吊り上がった目、何の変哲もない中肉中背の男。




「――ったく、なんだって今更あんな夢。この顔も、変えといてくれれば思い出すこともなかったかもなのに。」




 俺は以前の姿のまま、この世界に転生した。無敵の能力も、最強の親族も、貴族という身分もない。平凡ないち人類として、今日も生きている。



「テンプレート、なんてものは好きじゃないけど、イケメンにされることに不満はないんだよなあ。」


 

 1人なのをいいことにぶつぶつと文句を言ってみる。それもこれも、今日の夢見が悪かったせいだ。









 宿屋を出れば、ひときわ目立つ金髪が目に入る。ちらちらと通行人は彼を伺っているが、当の人物はあくびをしながら、あたりの市場を物色していた。大方、うまそうなものでも探しているのだろう。



「おい、遅いぞ。ほら、テンの分。」


 全く違う方向を見ていたのに一瞬で気づかれる。声をかけられた瞬間、周囲の興味が自分に向いたのを感じた。




 鍛えられたしなやかな体躯、整った顔立ち、理由は決してそれだけではないだろう。




 ――こいつは、多くの人間を惹きつけてやまない。

 



「...... なんだレオ、お前まだ食べてなかったのかよ。」



「あ?買い出し中お前だけ食べてるのずりぃ。」




「なんだそれ、意味わからん。」




 随分前に食堂へ行ったはずの幼馴染は、どうやら人目を集めながらも俺を待っていてくれたらしい。意味不明なことを言っているが、恐らくそういうことだ。



 手渡されたパンには、俺が好きなレソンの葉と、カシの実ミルクのチーズが挟まっている。素直じゃない幼馴染に笑みがこぼれる。

 大きくかぶりつきながら、2人、賑わい始めた街に繰り出した。



「――ガイはどうせ武器屋として、リリス達は?」



 この世界には、魔王がいる。



「ああ、さっき食堂で会った。リリスとセイラは日用品の買い出し、ベラは薬草やらをそろえてくると。」



 しかし勇者はいない。



「じゃあ俺たちは食糧か。まあいつもの感じだな。」



 でも、俺の直感は告げる。幼馴染 レオは勇者だと。


 

「昼過ぎに集合だ、ガイにはベラに伝書蝶を送ってもらった。」


 

 これは俺だけの秘密で、決意だ。



「おお了解、朝の詫びに買い出し早く終わったらなんかおごってやるよ。」




 俺たちを邪魔するテンプレートは、何があってもぶっ壊す。


「わかってんじゃねえか。」




――何があっても、悪しききまりから守るんだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ