恋かるた~男の子視点~
あ:あの子が教室に入ってくる時の前髪を押さえる仕草が見たくて今日も早起きする
い:いちごミルク、今日も飲んでる、ピンクのパッケージと君の唇。いつの間にか定時観測……キモいだろうか?
う:後ろの席の君から感じる視線、嘘です、そんなの感じたことない。願望込みの僕の妄想
え:笑顔を見られたら10円、話ができたら50円。貯まっていくお金と好きな気持ち
お:「俺じゃなく僕って言うんだね」……ヤバい、ガキっぽいって思われたかな、一人称
か:帰り道、偶然見かけた背中に向かって思い切って誘う。「一緒に帰ろう」声には出せず、心の中で
き:君の名前を教科書の隅にそっと書いて、ぐるぐると塗りつぶす、誰かに見られたら大変だ
く:「クラスの可愛い子言い合おうぜ」そんな提案には絶対に乗らない、彼女のことは絶対に内緒だ
け:喧嘩したわけじゃないのにいつの間にか疎遠になった元カノとばったり再会、隣のクラスだったんだ、知らなかった
こ:恋人らしくない友達の延長みたいな感覚で付き合った。他の男と遊んでも何も感じなかった、本当に好きだったのかも疑問
さ:最悪だ。見たくなかった。……彼女の隣にいるのは、サッカー部で一番人気の先輩だ。後ろ姿を見つめたまま立ち尽くす。だんだん遠くなっていく距離に絶望
し:知らなかった、こんな気持ち。どうして一緒にいるのか、なんでそうなったのか気になる。でも聞きたくない。聞くのが怖い
す:好きだって男らしく告げることができていたら、なんか違っていたのかな。今更考えても仕方のないことをぐるぐると考える
せ:先週まではそんな気配ちっともなかった。先輩と彼女に接点なんてなかったはずなのに
そ:そもそも二人はまだ付き合ってない? 希望を込めて考えて、でも一緒に帰ってたしなと絶望して、感情がジェットコースターみたいだ
た:確かめたい、知るのは怖い、アンビバレント 自習の時間、近くの席のやつと話しながら、後ろの席の彼女の会話に全集中。「えー、勿体無い、断っちゃったの?」驚いて振り返った拍子にプリントの端で指を切る。ちょっと痛い。でも嬉しいが勝つ
ち:「血が出てるよっ!」大袈裟だよ、こんなの別に傷ってほどの傷じゃない、ちょっと引っかけただけ。君が貼ってくれたピンク色の絆創膏を見ていると指先のズキズキと心臓のドキドキがリンクしていく
つ:『月が綺麗ですね』夏目漱石が訳した『 I love you』この言葉なら恥ずかしくなく言えそうな気がするけど、言うタイミングがねぇよ、二人で月を見上げられる関係ならきっと言えるのに
て:「テスト憂鬱だね」君の言葉に頷いて、「一緒に勉強しない?」勇気を出して誘ってみる
と:時々盗み見る、君の真剣な表情とシャーペンを持つピンク色の爪先。ドキドキして、勉強に集中できない、16時半の図書室の静寂
な:なんでもないよ、不思議そうに見上げた君に言う、まだ気付かれたくない。この胸の鼓動
に:苦手だって言っていた数学。僕だって得意じゃないけれど、君に渡すためにノートをまとめる。なるべくきれいな字で、なるべく分かりやすく。こんなに真剣に試験勉強したの初めてかもしれない
ぬ:脱ぎ捨てた制服のポケットからスマホが滑り落ちる、危ねぇ、落としたら画面割れる。ホーム画面に表示された新着メッセージの通知。差出人は彼女。このドキドキはスマホを落としそうになったからじゃない
ね:「ねぇ、これ見たことある?」可愛いパンダ動画に癒される。と言いつつ、君の気持ちを深読みする。わざわざ教えてくれるって……もしかして、なんてな
の:「飲み物コレでしょ?」ってボタンを押した。いちごミルク、君の好きなやつだろ?
は:反則だ、その笑顔。僕が押し付けられた文化祭実行委員、もう一人に立候補した君が、よろしくね、って笑ってる
ひ:惹かれてく、抗いようもないくらいはっきりと。忙しくても笑顔を絶やさない君を見て嬉しくなっている僕は、間違いなく、君に惹かれている
ふ:文化祭準備で遅くなった日、さりげなさを装って言った。「送るよ」って。なんでもないように言ったのに心臓がこんなにバクついているなんて、バレてないよな?
へ:変かな、変だよな、偶然触れただけの手なのに、もう一度触れないかって、大きく揺らしている
ほ:僕はあの時思ったはずだ、一緒に月を見上げられたら口に出して言えるのにって。言えないよな、『月が綺麗ですね』だなんて
ま:マジで勘弁してほしい。悪友たちが僕と元カノの復活を応援したがっている。マジで違うから、まだ好きとかないから。それは僕だけじゃなくて元カノだってきっとそう
み:「みんな言ってるぜ。頭脳明晰、容姿端麗、明朗快活、最強じゃん」そうだね、最強だよ、でも、それとこれは話が別だろ。僕が今、好きなのは……
む:無視されてる? もしかして嫌われた? なんで、いつ、なんかした? 心の中で繰り返す、それでも帰り際、小さな声で言ってくれた、「バイバイ」の言葉に一縷の望みをかける
め:迷惑だっただろうか、数学のあのノート。それとも付き合ってもいないくせに、送るよなんて言ったからキモかったんだろうか
も:「持つよそれ」「いいよ重いよ」「だから僕が持つんだろ」「ありがとう」そんな文化祭準備期間中の会話を脳内で反芻している。あんな風にはもうなれないのか。なんで彼女は怒っているんだろう
や:止めようと思って止められるならとっくに止めている。止められないから、止めないんだ。この気持ちは無くせない
ゆ:指先の傷、ずっと残ったら良かったのに。当然そんなことは全然なくて、もうすっかり傷跡すら残っていない。僕の血小板や白血球は優秀だ。でもあの傷だけは残してくれてても良かったのに
よ:よし決めた。ありったけの勇気を出そう。僕は彼女に告白をする
ら:LINEで告白するのはありか、なしか、そんな記事をじっくり読む。概ね『なし』との知識を得た。と言うことはやっぱり……直接?
り:理想の告白シチュエーション、そんな記事もじっくりと読む。そんなの人による、身も蓋もない意見に凹まされる。どんな言葉で伝えたら彼女に伝わるんだろう。
る:ルーズリーフに100回書く。君が好きです。僕と付き合ってください。恋人になりたい。どの言葉もピンと来ない
れ:恋愛成就そんなの神様に頼むことじゃない、自分の努力と情熱だ、そんな風に思いながら、それでもそこをなんとか一つ頼んます、と手を合わせる
ろ:ロマンチックな方がいいよなやっぱ、女の子はそういうのが好きだよな、でもロマンチックってなんだ、どうすりゃいいんだ。そんなことを考え続け、今日もまた白々と夜が明ける
わ:わたしのこと?……そんなの決まってる、実は僕も前からずっと……
を:女の子から先に言わせてしまった。ごめん、今度は僕の気持ち「を」はっきり言うよ、君が好きだ
ん:んっ……!抱きしめた瞬間、君が泣いていることに気付いた。絶対にもう泣かせないから
この間の恋かるたは女の子視点で書いたのですが、その裏で男の子もあれこれ考えていた、って感じのお話です。
いちごミルクは女子高生の象徴みたいなモチーフだなぁ、って思ってるんですけど、どうでしょう?




