ネオン都市の影
現代の世界では、ダンジョンが都市のあちこちに出現し始めたことで、人々の生活は一変した。モンスターが現れ、混乱が広がり、人間はひとつのことに気づく――特殊な力を持つ者だけが生き残れるということだ。誰もがダンジョン探索時に発動できるユニークスキルを持つが、すべての力が役に立つわけではない。
アレン、普通の少年は、他人からは奇妙で役に立たない能力を持つと見なされていた。仲間からすれば、彼はダンジョンパーティの荷物に過ぎない。ある危険なダンジョンに挑むとき、アレンは仲間を守るための生贄として使われる。
だが、命が危うくなったその瞬間、彼の本当の力が目覚めた――シャドウ・アビス。全身を包む暗黒の力が、彼を恐るべき存在へと変える。弱者と見なされていた少年は、恐れられるハンターへの道を歩み始める。
東京、2117年。
最初のダンジョンが街の中心に出現してから、すでに100年が経っていた。空に開いた黒い裂け目から、未知のモンスターたちが現れ、古い文明を壊し、新しい世界を生み出した。摩天楼は今もそびえ立ち、ネオンで輝く道路も賑わっている。しかし、現代の華やかさの裏には、常に闇の影が潜んでいる。
ダンジョンはただの脅威ではない――それは力の源でもある。勇気を持って挑み、生き延びた者は、唯一無二のスキルを手に入れる。炎を操る者、肉体を強化する者、手のひらに光を灯す者――スキルには当たり外れがあり、祝福となるものもあれば、呪いになるものもある。
こうして、新しい職業が生まれた。探索者――ダンジョンを巡り、モンスターを討ち、貴重な資源を持ち帰る者たちだ。しかし、探索者になることは自由ではない。死亡率を抑えるため、政府は「探索者協会」という公式組織を設立。許可、訓練、ランク管理までを行っている。
探索者として認められるには、最低18歳で登録試験を受ける必要がある。そして、その後の強さや実績に応じてランクが与えられる。
Fランク:初心者、ほとんど実績なし
Eランク:低級ダンジョンを攻略した者
Dランク:一人で生き残れると認められた探索者
Cランク:プロフェッショナル扱い、パーティを率いることが可能
Bランク:エリート、ごく少数しか到達できない
Aランク:国家の英雄、高難度ダンジョンを制覇可能
Sランク:生ける伝説、世界中で数えられるほどしか存在しない
ランクが上がるにつれ、ダンジョン探索の記録も生まれる――最速攻略、最強モンスター討伐、誰も生還できなかったダンジョンの生存者など。名前は歴史に刻まれ、アイドル以上に称えられる。彼らは、人類の希望の象徴なのだ。
しかし、華やかな探索者の世界の裏には、厳しい現実がある。すべての人が強力なスキルを持って生まれるわけではない。多くはパーティの「つなぎ役」、他者を輝かせるための囮に過ぎない。
そして、眠らない東京の喧騒の中で、18歳になった少年アレンは、新たな一歩を踏み出す時を迎えていた。彼の年齢は、公式探索者になる条件を満たしている。そして、もちろん、彼にもスキルがあった。
しかし、そのスキルは――普通ではなかった。
その名も、人の背筋を凍らせるほど不気味な力――「シャドウ・アビス」。
その力の本当の意味を知る者はまだ誰もいない――アレン自身さえも。
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朝の街はいつも混雑している。無人車が行き交い、監視ドローンが空を旋回し、ホログラムの看板には最新のニュースが映し出される――あるAランク探索者、「日本の希望」と呼ばれる人物が、クラスBダンジョンをわずか2日で制覇したことを祝う群衆の映像だ。
アレンは磁気浮上列車の座席に座り、目の前の透明ディスプレイを見つめていた。
朝のニュースでは、探索者は戦士であると同時に、セレブでもあるのだ。
「Cランクになれれば、それだけで一生安泰だな…」隣の席の生徒がつぶやく。
「現実的だな。俺はSランク目指すぜ!」友人は自信満々に返す。
アレンは黙って、新しい身分証を握りしめた。表示された年齢は18歳――公式探索者登録の最小年齢だ。
しかし、頭を離れないのは一つのこと。
それは――彼のスキル。
15歳の頃から、彼の中には淡い力が宿っていた。しかし、他の者たちとは違った。仲間は手に炎を灯し、盾を生み出し、回復の光を呼び出す。だがアレンの力は――一瞬だけ現れ、すぐ消える冷たい闇だった。
だから彼は別の道を選んだ。
毎朝、古いアパートの裏手にある小さな訓練室に忍び込み、剣の稽古に励むのだ。ダンジョンのアーティファクトでも魔法の武器でもない、ただの鋼の剣。
「はぁっ…!」
振りは素早く、正確で、力強い。長年の剣道と戦闘技術の鍛錬で、体は決して弱くはない。
訓練の後、アレンは街の主要道路にあるホログラム掲示板を見つめた。
「探索者公式登録受付開始――18歳以上、試験は来週」
アレンは拳を握る。
「この力が使えなくても…剣でも、スキルなしでも、俺は戦う。」




