表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

最終章 俺が世界のツッコミ役

 戦場はカオスだった。


 魔王軍の祝賀式典に、勇者の雷魔法が割り込む。

 爆裂花火に風魔法が合わさり、炎の渦。

 水芸に土魔法をぶつけて、巨大な盆栽。


 「こっちだって負けねえぞ!!最高の雷魔法を受けてみろ!!」


 そう叫ぶ勇者カイは――青白い雷がほとばしる……のだが。


 

 その雷、どこかおかしい。


 空に浮かぶ電気の球が、なんと……



 ハゲ頭と口ヒゲを持った、お堅そうな中年男性の形に変化していく。


 


 「な、なんだあれは……?」


 


 「……まさか……っ、伝説の召喚スキル《父なる雷霊・ナ●ヘイ=サンダー》……!」


 


 空に浮かぶ“それ”は、雷鳴と共に口を開いた。


 


 \\ バッカモーーーーーン!!!! //


 ズガアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!


 だが、その瞬間。


「――いいかげんにせぇやァァァァァァァアアア!!!!」


「そのネタはアウトだボケェェェェェ!!!!!!」



 ――バシィィィィィン!!!!!!



 雷より鋭いハリセンの一撃が、勇者カイの頭をぶっ叩く!


 「なに召喚しとんじゃボケ! サ●エさん家の父ちゃんを雷魔法で呼ぶなァ!!

  放送事故かと思ったわッ!!!!」


 ――バシィィィン!!!

 「お前らもお前らだァ!! なんで進撃じゃなくて新劇祝いしに来てんだよ!!」


 


 ――バシィィィィィィン!!!


 


 「勇者と魔王軍、どっちもすれ違っとるわ!!!!!!」


 


 ――バシィィィン!!!



 「なにをどうやったら雷魔法が“父の怒号”に進化するんじゃボケェ!!」


 


 ――バシィィィィィン!!!


 


 「説教されんのは、こっちの世界やぞ!!」


 

 カイ「だ、だって自然に……!」


 アルト「自然に他の父出すな!!」


 


 魔王軍も王国軍も、もはや誰も戦う気などなかった。


 ツッコミだけが鳴り響く。雷よりも強く、父よりも厳しく。


 

 「……だから言ったろ。お前一人じゃ、止まらねえって」


 アルトはそう言って、ハリセンを杖のように地面に突き立てた。


 「いいか、カイ。お前なァ……! 真面目に戦ってるつもりでもな、

  ボケはボケなんだよ!!!!!」


 「魔王軍も、お祝い気分で最前線来るんじゃねぇ!! お前らバカしかいねぇのか!!」


 皆が黙り込む中、アルトはふと、思い出す。


 そして、アルトは一歩前に出て――天を仰ぐ。


 

 「……ああもう、なんで俺がいねぇとこうなるかなぁ」


 さっきまで自分がいた――酒場。


 「……っていうかさ!!!」


 

 「なんで酒場で、麦茶しか出てこねぇんだよ!!!!!!」


 アルトのツッコミが戦場にこだまする。


 勇者は呟く。「やっぱアイツがいないとダメだわ……」


 魔王軍も頷く。「ツッコミ担当、国家公認にするか……」


 「で? これは麦酒か?」


 数日後。再び酒場にて。


 アルトがカウンターに座ると、出てきたのは――


 


 「麦……水ですね」


 


 (なんでグレードダウンしてんねん!!)


 


 ――バシィン!!


 


 世界はまた、今日も回っていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ