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百鬼夜行.8

「って事は、フルーラも魔王に会ったのかい?」


「あぁ、自分の軸を定めておけと言われたよ。そう言われると、自分の考えらしい考えを持っていなかったなと改めさせられたね」


 フルーラは苦笑した。僕達は合流し、事の始まりであろうダンジョンへと向かっている。のんびり話をしているのは、道中にいるオーガは全て死体になっており、その両腕は切断されていた。これはゾマが倒したオーガだね、とフルーラから告げられ、改めて彼の強さに驚いていた。


「フルーラは、僕から見ても騎士団としてしっかりしてると思うよ。副団長の推薦も受けたんだろう?」


 実力、礼節、どちらをとっても申し分ないフルーラは、ほぼ満場一致で騎士団副団長の推薦を受けていた。現状、副団長の座は空いているみたいだ。


「あぁ、ありがとう。推薦の件は保留しているけどね」


「そうなんだ? 他に務まりそうな人も居なそうだけどね」


「自分の軸……推薦を受けるにしろ、自分の中でちゃんと考えが纏まってからかな」


 なあなあに受けるのも良くないしね、とフルーラは告げた。謙虚な所も、騎士団として評価の高い所なんだろうなぁ。


 セバンタートの門から出て、ダンジョンを目指す。警戒を少し強めたけど、景色は変わらずだった。オーガがそこらに転がっていて、少し進みにくい位だ。


「……フルーラ、ゾマって強すぎない? 騎士団じゃ手に余りそうだけど」


「そこは団長が上手いことやってくれているみたいだよ。素行はどうあれ、私達に反抗心を示したことはないからね」


 話を聞くと、騎士団内では案外上手くやれているそうだ。戦闘好きの彼は主に警備や護衛を担当しているので、貴族ともそう会うことは無いそう。実力は騎士団トップクラスだが、騎士団員の言うことには素直に従っているみたいだった。言動も含みがなく扱いやすいとのこと。


「私には少し懐いてくれてるようで、よく組手を申し込まれるよ」


「それって、フルーラが強いからじゃないかな……」


「そう、なのかもしれない……まぁ、それはそれで嬉しいけどね」


 そのまま、転がっているオーガを避けながらダンジョンが見える所まで向かうと、ダンジョン前で事切れたオーガに座っているゾマを発見した。ゾマは、僕達を見つけると嬉しそうに手を振ってきた。


「フルーラさん! それに強そうな人! こっちこっち!」


 ……どうしよう、僕も認識されちゃってる。


「ゾマ、待たせてすまない。状況は?」


「気にしないで大丈夫ッスよ。始めこそ、わらわらとコイツら出てきましたけど、今はたまに一匹出てくるかどうかになりました」


 暇になったんで休憩してた所ッス、とゾマは明るく告げた。ゾマのおかげで侵攻は大分遅くなっている様だ。ダンジョン前まで来たし、今の内にこれからの事を話していく。


「フルーラ。魔王の言い分だと今回の件、変異種が絡んでるみたいだ」


「何だって!? 変異種!?」


「強い人、魔王に会ったんです!? どんな人でした!?」


 ゾマが身を乗り出し尋ねてきた。今はそこじゃないでしょうに……突っ込もうと思ったけど、長引きそうだから止めて話を進めていく。


「僕はリョウね、覚えなくて良いけど。……話を戻すよ。元を断たないと、オーガの侵攻は続くと思う」


「それは私も同感だね」


「リョーサン! 魔王ってどんな人だったんです!? 強そうでした!?」


 ……空気読まないなコイツ。


「なにその沢山生み出しそうな呼び方……まぁいいや。これからダンジョンへ向かおうと思う、目標の居場所は恐らく中層域」


「となると、誰が向かってここへは誰が残るか……それを決めないとだね」


「はい、はい! 自分行きたいッス!」


 元気よく手を上げるゾマ。無論、立候補するであろうゾマに行ってもらおうと思ってた僕だったが、フルーラから待ったが掛かった。


「待つんだゾマ。君は、ダンジョンに入った事があるのか?」


「無いッス。でも、順路でしたっけ? そこは灯りを付けてくれてあるんですよね、辿って行けば良いじゃないですか」


 ダンジョンの順路にはギルドの管理で灯りを設置してある。それでも上層のみに留まってるけど。それも怠慢って言われる一因なんだろうなぁ。僕は魔王に告げられた事を思い返す。


「それはそうだが……最悪の事態を想定するなら、私としてはリョウが行くのが良いと思ってる」


「え」


 フルーラの提案に、思わず変な声が出てしまった。


「リョウは上層の地形に詳しい。私も何回か入ったことはあるけど、全て把握できてる訳じゃない」


「そしたら自分とリョーサンが入れば良いですよね!」


「……声を大にして言うことじゃないが、私ではオーガを食い止める事は出来ても倒すことは難しいと思う。それこそ、多対一では尚更ね。ゾマは一人でも余裕がある、道中を見ればそれは明らかだしね」


「じゃあダンジョンには、自分とフルーラさんが入れば良いじゃないですか……リョーサンでも、オーガなんか余裕だと思いますけど」


「……無茶言わないでよ」


 多対一なんか勘弁して欲しい。万一と時はそうも言ってられないけど、僕は君と違って望んで戦闘したりはしないの。声には出さないけど、思わず愚痴ってしまった。


「地形に詳しい人が必要なんだ、この騒ぎを早急に鎮めないといけないからね。ゾマにはここに残ってもらい、継続してオーガを撃退して欲しい。リョウ一人だけを向かわせる訳にいかないから、私も同行する」


 フルーラが一緒か。それならまぁ、なんとかなるか。ゾマは不服そうにこちらを見つめているが、フルーラにそれ以上反論することはなかった。


「自分……もっと戦いたかったッス」


「すまないゾマ、私の力不足で。お詫びといってはなんだが、この騒ぎが落ち着いたら私に出来ることがあればさせてもらうよ」


 そう言うと、ゾマは嬉しそうに眼を輝かせこう告げた。


「ホントですか! そしたら自分、リョーサンと戦いたいです!」


「え」


「あの、ゾマ。私に出来る事でね?」


 戦いたいー! と地面に転がりジタバタし始めるゾマ。えぇ……おっきい子供じゃん。それを見ているフルーラも、困惑の表情を隠せないでいた。


【おぉ、喧嘩かぁ? コイツと戦うなら楽しそうだな】


 なんでフーさんまで乗り気なの……尚も動きを止めないゾマに、僕は溜息を吐きながらこう言った。


「じゃあ……中央都市を騒ぎの終わりまでオーガの侵攻から守る。戦うにしても、騒ぎが終わって次に出会ったら。この条件を飲んでくーーーー」


「飲みます! 分かりました!」


 シャキっと立ち上がり、眼を輝かせるゾマ。自分から条件を出しといてなんだけど、言わなきゃ良かった……。


 その場に笑顔のゾマを残し、僕達はダンジョン内へ進行した。

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